航空スタートアップのゼロアビア(ZeroAvia)は7月2日、米アメリカン航空と水素エンジンを100基供給する条件付き売買契約を締結したと発表した(*1)。アメリカン航空は、ゼロアビアのシリーズC(資金調達ラウンド)にも参加しており、関係性の強化を図っている。
アメリカン航空は、水蒸気を除く機内排出ゼロを目指し、水素エンジンを調達する。ゼロアビアへの投資も拡大する。アメリカン航空は2022年に初めて同社に投資していた。
アメリカン航空にとっては、ゼロアビアの新型エンジンの購入に関する条件付きコミットメントと投資拡大は、2050年までにネットゼロを達成するというアメリカン航空の野心的な目標に貢献するものだ。
近年、アメリカン航空は民間航空史上で最も大規模な機材更新に取り組んでいる。現在、米国の主要ネットワーク航空会社の中で最新のメインライン機材を保有し、燃費効率を向上させている。
アメリカン航空は、持続可能な航空燃料(SAF)の原料となる合成燃料(e-fuel)を製造するインフィニウム(Infinium)とのオフテイク契約を締結した。炭素除去スタートアップのグラファイト(Graphyte)とは2025年初頭に1万トンの炭素を永久除去する契約を締結し、同社の初と顧客となった。アメリカン航空はこれらの取り組みを通じ、サステナビリティの分野で業界をリードする投資を行ってきている。
ゼロアビアは、民間航空機向けに水素燃料電池エンジンを開発するスタートアップだ。米カリフォルニア州で設立され、ワシントン州エバレットと英国にチームを持つ。
同社の水素燃料電池エンジンは、燃料電池で水素を活用して発電し、その電力で電気モーターを動かして航空機のプロペラを回す。機内で排出されるのは低温の水蒸気だけであり、電気システムの原単位が小さいため、大幅なコスト削減が期待できる。
米国連邦航空局(FAA)と英民間航空安全庁(CAA)より、3つのテストベッド機でエンジンをテストする実験証明書を取得し、飛行テストで合格した。20人乗りのプロトタイプ機の飛行試験を行っており、アメリカン航空が特定の地域路線で運航しているボンバルディアCRJ700のような大型機用のエンジンを設計している。
主要な航空機製造会社(OEM)とエンジニアリング・パートナーシップを締結しており、世界の主要航空会社から2,000近いエンジンの予約注文を受けている。
【参照記事】*1 ゼロアビア「American Airlines commits to conditional purchase of 100 ZeroAvia hydrogen-powered engines, increases investment in hydrogen-electric innovator」
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