世界の機関投資家の8割、向こう2年でサステナ投資残高増を見込む。モルスタ調査

米モルガン・スタンレーの最新調査によると、世界の機関投資家の約8割が、向こう2年でサステナブル運用資産残高(AUM)が増加すると見込んでいることが明らかになった(*1)。大半の投資家は、サステナブル投資関連商品の提供がマンデート(運用委託)の決定に影響を与えると見ている。

モルガンが公表した最新レポート「サステナブル・シグナルズ(Sustainable Signals)」は、モルガン・スタンレー・サステナブル投資研究所が主導し、同研究所の委託によりDynata LLCが実施したアセットオーナーおよびアセットマネージャーを対象としたオンライン調査の結果をまとめたものである。

2024年7月17日から8月7日にかけて、北米、欧州、アジア太平洋地域において、295人のアセットオーナーと606人のアセットマネージャーを対象に調査を実施し、世界全体で901人の機関投資家から回答を得た。

今回の調査では、今後2年間にサステナブルファンドの資産が拡大すると予想するアセットマネージャーは世界全体で78%、アセットオーナーでは80%に上り、AUMが減少すると予想する回答者は各グループで3%にとどまった。

約90%の投資家は「サステナブルテーマが提供する成長機会へのエクスポージャー」を資産拡大の利用として挙げた。「サステナブル投資戦略の成熟化、確立された実績」を挙げた投資家も8割ほどとなる。

機関投資家の75%以上は、サステナブル投資商品の提供がマンデートの決定に影響を与えることに同意しており、90%が顧客の需要がサステナブル投資の取り組み推進につながっていると回答した。

アセットオーナーのほぼ3分の2がネットゼロ目標を掲げているが、アセットマネージャーは8ポイント遅れをとっている。目標を掲げている回答者のほぼ全員が、目標達成のための計画があると回答しており、約2%がすでにネットゼロを達成したと回答した。

現在、アセットオーナーの約40%がポートフォリオの排出量を緩和するためにカーボンオフセットを利用しており、アセットマネージャーの31%が特定の製品または集計エミッションに関連するオフセットを顧客に提供していると回答している。

ただし、機関投資家の間ではカーボンオフセットの利用についてコンセンサスは得られていない。広範な脱炭素化の取り組みとしての妥当性がある、もしくは削減が難しい特定の排出源に絞って利用するなど、さまざまな意見がある。

世界全体ではヘルスケア(41%)と金融包摂(40%)が主要テーマとなっているが、地域によって優先事項は異なる。欧州では自然および生物多様性への投資機会を優先し、アジア太平洋地域では気候変動対策やヘルスケアソリューションにより重点を置いている。気候変動への適応策は、3つの地域すべてにおいて最も過小評価されている投資機会の1つと見なされている。

サステナブル投資を手掛ける世界の機関投資家は、データの利用可能性や一貫性(71%)、グリーンウォッシングのリスク(68%)といった課題にも直面している。メディアや社会全般における否定的な認識に対する懸念は、より低い順位となっている状況だ。アジア太平洋地域の機関投資家は、投資家に対する情報開示要件の負担を懸念している。

【参照記事】*1 モルガン・スタンレー「Sustainable Signals Institutional Investors

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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