超低炭素eフューエル(合成燃料)スタートアップInfiniumは11月25日、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)などを傘下に抱える英インターナショナル・エアラインズ・グループ(IAG)と、持続可能な航空燃料(SAF)の供給契約を締結した(*1)。2026年後半から10年間にわたり、IAG傘下の5つの航空会社に商業規模のeSAFを供給する。
eSAFは排出された二酸化炭素(CO2)、水、再生可能エネルギーを原料とするため、原料の制約を受けず、従来のジェット燃料よりも排出削減効果が高く、土地や水の利用による環境への影響も比較的少ない。既存の航空機エンジン設計に変更を加える必要のないドロップイン燃料でもある。
eSAFは、米国テキサス州西部にあるInfiniumのProject Roadrunner施設で生産される。同施設は本格稼働すればeSAFの世界最大の生産拠点となる予定だ。カナダの投資ファンドのブルックフィールド・アセット・マネジメントとブレイクスルー・エナジー・カタリスト(BEC、#1)より、すでにコミットメントを確保している。
Project Roadrunnerは、Infiniumのeフューエルプロジェクトとしては2番目のプロジェクトであり、テキサス州コーパスクリスティのProject Pathfinderに続いて開発されている。
Infiniumのロバート・シュッツル最高経営責任者(CEO)は「IAGとの契約のような長期的で信頼性の高いコミットメントこそが、eSAFの生産拡大を推進する原動力となる。eSAFは航空業界にとって、さらに化石燃料ベースの燃料と従来のSAFの両方の代替となるeフューエルにとって、重要なマイルストーンである」と述べた(*1)。
Infiniumは20年に設立され、米カリフォルニア州を拠点とするeSAFメーカーだ。同社が製造するeSAFやeディーゼルといったeフューエルは石油や食料と競合する資源とはならず、既存の航空機、トラック、船舶に補給することができる。従来のジェット燃料と比較して、ライフサイクルの温室効果ガス(GHG)排出量を約90%削減できると期待されている。
24年9月には、カナダの投資ファンドのブルックフィールド・アセット・マネジメントより、最大11億ドル(約1,650億円)のコミットメントを確保した。BECも7,500万ドルの資金を提供する。
(#1)BEC…米マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツ氏が設立した ブレイクスルー・エナジーが立ち上げたプログラム。脱炭素関連のうち、研究開発段階を終えて商用化を目指す事業に投資するファンドとなる。
【参照記事】*1 Infinium「IAG ANNOUNCES NEW E-SAF DEAL WITH INFINIUM AND REMAINS ON TRACK TO DELIVER 2030 TARGET」
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