世界最大級の人事・組織コンサルティング会社マーサーは12日、気候変動シナリオ投資モデルの最新の調査結果「気候変動の時代における投資-続編」を発表した。2009年以降、同社は投資家に向け、体系的なリスクとして気候変動に関する調査研究とアドバイスを公表しており、このうち好評だった「気候変動の時代における投資」(15年)の続編。
マーサーが公表している気候シナリオモデルは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の勧告と一致しており、何十年にもわたる「気候変動による収益への影響」を受ける将来予測を定量化し、すべての資産クラスと産業セクターにわたるポートフォリオ全体に対する気候関連の金融リスクを投資家が評価できる内容とした。
続編では、産業革命前からの世界の平均気温上昇を2℃、3℃、4℃とする3つの気候変動シナリオを基に、2030年、2050年、2100年の3つの期間の投資モデルパターンを示し、前回のレポートの50年までの投資モデルよりさらに長い期間で設定。気温が上昇するごとに、自然災害の可能性と資源の可用性から予想される影響をより明確に可視化している。今回のモデルに新たに加えられたストレステストは、投資家がそのシナリオが実際に起きる可能性や市場浸透度、環境破壊の進み具合を見る上で、より突発的な変化がどのような影響を与えるかを評価することを可能にしている。
責任投資(RI)・グローバル・ビジネスリーダーのヘルガ・ビルグデン氏は「2℃目標シナリオへの投資は必須であり、かつ投資機会でもある。ほぼすべての資産クラス、地域、時間軸において、2℃目標シナリオは3℃目標や4℃目標シナリオと比較しても予想収益率が向上し、投資家にとってより良いリターンが得られる」とコメントする。「2℃目標シナリオでは既存産業が損失を被る可能性もあるが、低炭素化(脱炭素化)への移行により注目される投資機会が数多く存在する。今回のモデルで示された結果は注目に値するものであり、前回の報告書で公表された内容をより強く支持し、気温上昇を2℃未満に抑える目標達成に向けた行動の緊急性を示している」とアピール。「2℃目標シナリオ、または4℃目標シナリオのそれぞれの確率を上昇させたテストを行ってみると、大きな価格変動イベントを起こす可能性があり、そのイベントは1年以内に+3%から-3%までのリターン格差を及ぼす」と付け加えている。
マーサーは組織・人事、福利厚生、年金、資産運用分野におけるサービスを提供するグローバル・コンサルティング・ファーム。世界約2万3000名のスタッフが44ヵ国約180都市を拠点に、130ヵ国以上でクライアント企業を持つ。日本では40年以上の豊富な実績とグローバル・ネットワークを活かし、多様な業種の企業・公共団体に対するサービス提供を行っている。
【参照記事】気候変動の時代における投資-続編(Sequel)
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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