電気化学的リチウム抽出技術を開発するLithiosは10月8日、シード期(創業前または創業後間もない企業が行う資金調達)に1,000万ドル(約14億9,000万円)を調達したと発表した(*1)。世界的に電気自動車(EV)やエネルギー需要が高まる中、低コストで持続可能なリチウム供給源へのアクセスを確保すべく、リチウム抽出の先進技術の拡大を図る。
今回の投資ラウンドは、気候テックに投資するベンチャーキャピタルのクリーンエナジー・ベンチャーズが主導した。Lithiosは調達資金を活用して、研究開発、製造、業務を拡大し、年間数千トンの炭酸リチウムを生産する商業プロジェクトの開発を加速させる。Lithiosは、シリコンバレー銀行からベンチャーデット(#1)で200万ドルの追加資金も確保した。
Lithiosの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)であるモハメッド・アルカドラ博士は「世界を電化したいのであれば、リチウム抽出プロセスを電化することから始めなければならない。投資家からの支援は、電気による未来を実現するための、より持続可能で効果的なリチウム抽出技術の開発に向けた弊社の取り組みを後押しするものだ」と述べた(*1)。
エネルギー転換の最も重要な原材料の1つであるリチウムは、早ければ2025年に世界的な供給不足に陥ると予想されている。世界のEVおよびエネルギー市場の需要を満たすには、40年までに700万トンの炭酸リチウムが必要となるが、これは現在の供給量の8倍に相当する。
迫り来る供給不足を予測し、リチウム資源の所有者は、遠隔地におけるインフラの制約や、高濃度の汚染源に対するアフォーダブルな処理技術の不足など、ボトルネックを克服するソリューションを模索している。
Lithiosは、既存のソリューションでは対応できない未開発の塩水の鉱床から効率的にリチウムを抽出する、初の拡張可能な電気化学的リチウム抽出ソリューションであるAdvanced Lithium Extraction(ALE)を開発している。
同社のALE技術により、採掘業者、事業者、およびより広範なバッテリーサプライチェーンは、汚染や資源の制約により、これまで非経済的でアクセス不能と見なされていたリチウム資源を活用できるようになる。
クリーンエナジー・ベンチャーズの共同創業者兼マネージング・パートナーであるダニエル・ゴールドマン氏は「今日のリチウム抽出方法は環境に負担をかけるだけでなく、EV市場の需要増に対応できるほどの生産量を得られない。我々は数十もの新しいリチウム抽出技術を評価した結果、LithiosのALEアプローチがリチウムのバリューチェーン全体にわたって顧客の深刻な問題を解決し、汚染されて放置された鉱床からリチウムを抽出できる」と述べた(*1)。
現在、リチウム抽出にはエネルギーと資源を大量に消費する3つの一般的な方法がある。硬岩採掘と地表池での塩水の蒸発(いずれも高品位のリチウム鉱床に限られる)、塩水からの直接リチウム抽出(DLE)だ。
LithiosのALEは、資本効率に優れ、リソース消費が少ないように設計されており、低品位のリチウム資源から抽出する場合、DLEアプローチと比較してエネルギー消費は10分の1である。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)の科学者およびエンジニアによって開発されたLithiosのALE技術は、既知であるものの現在アクセス不可能なリチウムブラインの85%以上を抽出できる。
低品位ブラインのリチウム抽出プロセスは、DLE法と比較して最大2倍の費用対効果を実現する。ALEにより、加工が困難な低品位のリチウム資源が、希少な高品位のものと同等の価値を持つようになり、リチウム資源の所有者は電池メーカーへの供給量を増やせる。
(#1)ベンチャーデット…スタートアップが利用する資金調達の仕組みの1つであり、資本と負債の両方の側面をあわせ持つ方法。
【参照記事】*1 Lithios「Lithios Secures $12 Million to Expand Lithium Supply to Meet Global EV and Energy Demand」
フォルトゥナ
【業務窓口】
fortuna.rep2@gmail.com
最新記事 by フォルトゥナ (全て見る)
- アホールド、再エネBRUCとVPPA締結。太陽光発電で欧州事業の電力使用量の3割相当賄う - 2024年11月22日
- 英国、GHG排出を35年までに19年比81%減目指す。21年策定の目標よりペース加速 - 2024年11月22日
- テマセク傘下ジェンゼロとトラフィギュラ、コロンビアの炭素除去に150億円投資。CDRプロジェクト規模を倍増 - 2024年11月22日
- ネイチャーファイナンス、金融機関向けネイチャーポジティブ投資支援ツール「NatureAlign」を発表 - 2024年11月19日
- 2050年ネットゼロ達成見込みはG2000企業の16%、脱炭素化にAI活用中の企業もわずか14%。アクセンチュア最新調査 - 2024年11月19日