株式会社日本取引所グループ(JPX)は1月20日、JPX日経インデックス400構成銘柄を対象に「TCFD提言に沿った情報開示の実態調査」を実施し、結果を公表した。
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は気候変動関連財務情報開示タスクフォース。気候変動が金融市場を不安定化させる要因になるという懸念から、金融安定理事会(FSB)が2015年にTCFDを立ち上げ、金融セクターへの影響や対応策に関する議論を進めてきた。17年6月に公表されたTCFD提言は広く受け入れられ、支持を表明する機関は全世界で4075に上る。
JPXでは、日本企業におけるTCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示の実態を把握し、上場会社が気候変動関連情報の開示に取り組むうえで参考となる情報を提供することを目的に、TCFD賛同上場会社259社(2021年3月末時点)を対象とした実態調査を実施、21年11月に結果を公表した。
2回目となる今回は対象をJPX日経インデックス400構成銘柄に拡大し、現時点の日本企業の気候変動情報開示の実態を示す。前回調査からの進捗を示す内容となっている。
調査では、JPX日経インデックス400構成銘柄を対象に、TCFD提言の開示推奨11項目の開示状況について、項目別、企業の属性(規模・業種)別に実態把握を試みた。項目別の開示状況では、開示割合が高い項目(「③リスクと機会」「①取締役会による監視体制」「⑩スコープ1、2の排出量」)と低い項目( 「⑤シナリオに基づく戦略のレジリエンスの説明」「⑧⑥⑦が総合的リスク管理に統合されているか」 )について、前回調査と同様の傾向が確認された。
なお、TCFD提言において全ての企業が開示することが望ましいとされている「ガバナンス」「リスク管理」、重要性評価を伴う「戦略」「指標と目標」(ただしTCFDはGHG排出量スコープ1、2については重要性評価とは無関係に開示すべきとしている)との間で、開示の割合に顕著な差はみられなかった。
また、前回調査の対象となった企業では、全ての項目について開示割合が増加しており、開示割合が低かった「⑤シナリオに基づく戦略のレジリエンスの説明」については開示割合の増加が最も大きいという結果から、株主などのステークホルダーとの対話に活用できる情報の増加が確認できる。同社は「企業の属性(規模・業種等)や取り巻く環境によって、重要性評価や着手しやすい項目が異なるなか、自社の状況を踏まえできるところから取り組みをはじめ、段階的に対応・情報開示を拡大させている様子がうかがえる」としている。
同社は続けて「サステナビリティ情報開示を取り巻く環境は変化の時を迎えている」と指摘。22年11月に金融庁が公表した「企業内容等の開示に関する内閣府令」などの改正案では、 気候変動対応を含む具体的なサステナビリティ情報について重要であると判断した場合には、有価証券報告書等に新設される「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄で開示が求められると示された。
また、IFRS財団のもとに新設された国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が、22年3月にサステナビリティに関する全般的な開示要求事項をまとめたS1基準案と気候変動に特化したS2基準案を公表、23年前半に最終化することを目指して議論を進めている。
こうした動きを挙げ、同社は「企業による自発的なTCFD提言に沿った開示の進展に加え、環境変化を踏まえた法定開示やそれを補完する情報発信を通じ、ステークホルダーとの対話が一層活発になり、開示情報の質と量の充実化が図られることで、持続的な成⾧と中⾧期的な企業価値の向上、ひいては日本市場の魅力向上につながることを期待したい」としめくくっている。
【関連サイト】TCFD提言に沿った情報開示の実態調査(2022年度)(PDF)
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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