ブロックチェーン技術の普及・発展に取り組む一般社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)は9月8日、ブロックチェーン技術を用いた分散型ソーシャルメディアプラットフォームを運営する株式会社ALISのCEO 安 昌浩 氏を招き「DeFiの全体像と現状、またその魅力について」と題した定例会を実施した。
DeFi(分散型金融)とは一般的にイーサリアム上の金融サービス群やそのエコシステムの総称で、従来の金融サービスをスマートコントラクトで実現したものと捉えることもできる。レンディングサービスや分散型取引所(DEX)サービス、ステーブルコインなどがその例で、誰でもアクセス可能で透明性が高い、DeFi間でレゴのように自由に接続可能、取引が無効になったりサービスが停止するリスクが低いなどの特性を有している。
現在、DeFiは急速に拡大を見せており、DeFiの盛り上がりを示すTVL(Total Value Locked ※全体及び各DeFiサービスにどれだけの額の資産がロックされているかを表す指標)は60億ドル以上に達している。その一方、DAU(Daily Active User ※1日あたりのアクティブユーザー)は8,000人にとどまっており、一部のユーザーの熱狂が目立つ状況だという。
安 氏はDeFiのもたらす価値として、金融サービスの低コスト化、権威や機関を必要としない個人による資産管理、金融サービスを活用できないアンダーバンクトの救済、従来の金融サービスでは経験できないユーザー体験、の4つを挙げている。スマートコントラクトによって金融サービスはオープンになり、サービス間の連携が実現されていくと、手数料が削減され、削減された手数料はユーザーに還元されるようになる。現在DeFi領域で注目をされるレンディングサービスでは、金利が数秒ごとに増えたり、利子だけを寄付に充てたりなど、新たな金融サービスの芽が生まれ、フィンテックを推し進める可能性も秘めていると同氏は指摘する。
定例会では、DeFiサービスの事例としてはDeFiブームの先駆けとなったレンディングサービス CompoundやDeFiサービスの中で上位に名を連ねるDeFiプロジェクト Maker、分散型取引所 Uniswapなど、デモ画面も利用しながらサービスの解説が行われた。
暗号資産・ブロックチェーン界隈で注目を集めるDeFiだが、その一方で安 氏は「バブルな雰囲気」について警鐘を鳴らしている。実際には価値がないトークンであっても利用者の期待だけで価格が高騰するプロジェクトや、スマートコントラクトが監査されずにバグを抱えていることが露見したプロジェクト、発行体がイグジットしてしまうプロジェクトなど、問題に繋がりかねない事例が散見され始めているという。
上記にとどまらず、手数料の高騰やセキュリティ、各国のレギュレーションとの折り合いなどDeFiにはまだまだ課題が山積している。こうした状況も考慮し、安 氏は余剰資金の一部で従来の金融サービスでは得られない金利やシステム連携を体験してみることを推奨している。詐欺的なプロジェクトか不安を感じる人はデモ取引が可能なテストネット下でDeFiを体験することも可能だ。
2020年に入り急速に知名度を上げてきたDeFi。ビットコインやイーサリアムを国内の暗号資産取引所で購入して保有するよりは難易度が高いものの、実際には暗号資産を取引するのと同様に直感的に行うことができる。中には年利8%程度の金利をもらえるサービスもあるため、資産運用としても優秀なパフォーマンスを期待できる点も魅力だ。
JBAでは、国内外のブロックチェーン業界の有識者を招き、毎月2回、ブロックチェーンに関する事例の勉強やディスカッションをする場として、定例会を開催している。9月の二回目となる定例会は、9月23日に「暗号資産とオークション設計」をテーマとして開催される予定だ。定例会はオンラインで行われ、JBA非会員でも参加できるため、暗号資産・ブロックチェーン領域の知見を深めたい方はこれを機に同定例会に参加してみてはいかがだろうか。
【申し込みURL】9/23(水) 定例会 ※オンライン
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