2021年度インパクト投資残高1.3兆円超、前年度比2.5倍に拡大。投資対象や投資主体が多様化

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一般財団法人社会変革推進財団(SIIF)は4月26日、2020年度末時点の日本におけるインパクト投資残高が1兆3204億円と発表した。前年度のインパクト投資残高の5126億円から2.5倍の成長。SIIFが事務局を務めるGSG国内諮問委員会が同日公開した「日本におけるインパクト投資の現状と課題2021年度調査報告書」のアンケート調査結果から算出した。

前年度からの急成長した要因として、 大手都市銀行や運用機関のインパクト投資の新規参入による取組機関総数の増加があげられる。20年度調査時点は20社、21年度では31社と1.5倍増。また、これまでインパクト投資に取り組んでいる既存取組機関でも、主に都市銀行や一部の大手アセットオーナーが取り扱うインパクト投資額を増加させている。20年度調査では投資額3226億円が、21年度には6563億円と倍増した。

ほか、運用額が大きくなりやすい企業への融資や、上場株式投資での取り組みが広がっていること、市場におけるインパクト測定・マネジメントのレポーティング体制が前年度に比べ整備され、インパクト投資の基準を満たす取り組みが増加したことも挙げられる。

インパクト投資については、インパクト評価・マネジメントの手法の未成熟さ、インパクトに関するデータの比較・大量処理の困難さ、実態を伴わない「インパクトウォッシュ」の懸念が日本を含むグローバルな共通課題とされている。中でも、日本特有の課題として、金融のもつ潜在力に対する個人投資家や年金・保険加入者の期待不足、アセットオーナーのインパクト投資に対する消極的な姿勢が、これまでの調査などで浮き彫りになった。

同調査報告書は、日本におけるインパクト投資の定点観測として、GSG国内諮問委員会の監督のもと、2016年度から毎年発行。21年度は、金融機関・機関投資家を対象に21年9月~22年1月にかけアンケート調査を実施。77組織から回答を得た(回収率13.2%)。インパクト評価の実施が確認された投資商品の総和をインパクト投資になりえるものと捉え、市場の最大推計値として5兆3300億円と算出しているほか、インパクト投資家・インパクト企業のケーススタディの紹介や、インパクト投資のエコシステムの中心的な役割を果たす3人の有識者からの寄稿を掲載している。

GSG国内諮問委員会は、G8社会的インパクト投資タスクフォース国内諮問委員会を前身として14年に設立。国内の各界有識者、実務者、研究者で構成され、調査研究・普及啓発・ネットワーキング活動を通じて、日本におけるインパクト投資市場やエコシステムの拡大を目的に活動する。SIIFは同委員会の設立や賛同メンバーの招集を契機に、インパクト投資における提言書や現状を記した報告書の発行、金融庁との共催で金融機関等との勉強会の開催などインパクト投資の推進のための活動を行っている。

【参照リリース】日本におけるインパクト投資の現状と課題 -2021年度調査 ダウンロードページ

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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