GPIFが2021/22年スチュワードシップ活動報告を公表

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年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は「2021/22年スチュワードシップ活動報告」を公表した。スチュワードシップ活動は投資先企業との対話および議決権行使を意味し、GPIFは一部の資産を除き、運用受託機関を通じて日々の売買や株式議決権を行使している。このため、運用受託機関と投資先との間で、持続的な成長に資するESG(環境・社会・ガバナンス)も考慮に入れた「建設的な対話」(エンゲージメント)を促進。そのうえで「『長期的な企業価値向上』が『経済全体の成長』に繋がり、最終的に『長期的なリターン向上』というインベストメントチェーンにおける Win-Win 環境の構築を目指し、スチュワードシップ責任を果たしていく」という姿勢を示す。

同報告書は、1年間の主なトピックスとして①エンゲージメント強化型パッシブファンドの追加採用②22年度から債券のスチュワードシップ評価開始③GPIF の運用受託機関が選ぶ「優れた開示」シリーズの拡大を挙げる。

運用受託機関のスチュワードシップ活動の状況については、運用機関各社でスチュワードシップ活動を行うための組織・体制が引き続き強化されており、この1年では特に、若手や多様なバックグラウンドを持つ人材の採用を通じ、将来を見据えたチーム構築の動きが増えている。株式のスチュワードシップ活動は、環境変化に合わせながら、全体的にレベルが上がっており、体制の強化とともに取組内容も拡大している。

スチュワードシップを重視したパッシブ運用モデル「エンゲージメント強化型パッシブ」ファンドについては、18年に採用したアセットマネジメント One、フィデリティ投信の2ファンドとも、エンゲージメント活動が進んでおり、エンゲージメントのステージも課題着手、計画策定、施策実行など企業の具体的なアクションの段階に進んできた。また、21年秋に、三井住友トラスト・アセットマネジメント、りそなアセットマネジメントの2社をエンゲージメント強化型パッシブファンドの委託先として追加採用した。

スチュワードシップ活動原則では、重大なESG 課題について積極的なエンゲージメントを求めている。パッシブ運用機関においては、全運用受託機関が、「気候変動」「ダイバーシティ」「サプライチェーン」「情報開示」を重大な課題として挙げており、長期的な課題を特に重大なESG課題と認識していることが確認できたという。一方、アクティブ運用機関は、国内株式と外国株式で認識している重大な ESG 課題が分かれている。

外国株式では、全ての機関が「気候変動」を重大な課題と考えている一方、国内株式においては、「取締役会構成・評価」「少数株主保護(政策保有等)」「情報開示」を全機関が挙げており、ガバナンスの課題をより重大な ESG課題と認識している。また、内外株式パッシブ運用機関に共通して見られた変化として、「生物多様性」を重大な ESG 課題と捉えている機関の増加を挙げる。

今後は、双方向のコミュニケーションを重視した運用受託機関や指数会社とのエンゲージメントの強化、スチュワードシップを重視したパッシブ運用モデルの定着、債券投資におけるスチュワードシップ責任の評価手法の検討、ESGを含むエンゲージメントの成果や効果測定に関する外部との共同研究を進めていくとしている。

3月31日に発表した令和4年度計画では、「スチュワードシップ責任を果たすための活動」として、ESGの重要性を認識し、スチュワードシップ責任を果たすための活動の目的が長期的な投資収益の最大化を目指すものであることを運用受託機関に示すとともに、運用受託機関からは、スチュワードシップ活動に関する報告(議決権行使権限を有する場合は議決権行使に係るガイドラインの提出⦅変更がある場合に限る⦆、議決権行使状況の年2回の報告を含む)を求めると打ち出した。

また、スチュワードシップを重視した運用受託機関のビジネスモデルに対応した評価方法や手数料体系を検討する。

【参考記事】GPIF「「2021/22年スチュワードシップ活動報告」

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