年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は8月24日、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関する取組みとその効果をまとめた「2021年度 ESG活動報告」を刊行、ホームページで公開した。ESG活動報告は今回で5回目の発行。21年度版は年度内のESGに関する取組みの紹介やポートフォリオのESG評価などに加え、「気候関連財務情報開示タスクフォース」(TCFD)の提言を受けた分析をさらに充実させている。
TCFDの提言については「TCFDへの賛同と気候関連財務情報開示」として「気候変動に伴うリスクは、全ての資産クラス・銘柄に同時に生じ、分散投資により完全に消すことは困難であり、長期的には顕在化する可能性が極めて高いリスクと考えられるため、GPIFはアセットオーナーとして主体的に取り組む課題である」としている。
具体的には①カーボンニュートラルの実現に向けた官民の政策動向の整理②中央銀行等が採用するシナリオに基づいた気候変動リスク・機会のシナリオ分析③国内インフラ投資の再生可能エネルギー案件における温室効果ガス排出量の削減量の分析などを新規に追加した。
主なコンテンツは、第一章の「ESGに関する取組み」では①ESG指数の採用とESG指数に基づく運用②株式・債券の委託運用におけるESG③スチュワードシップ活動とESG推進④指数会社・ESG評価会社へのエンゲージメント⑤オルタナティブ資産運用におけるESG⑥近年注目が集まる「人的資本」と情報開示について⑦ESG活動の振り返りと今後について。
第二章「ESG活動の効果測定」では①ESG指数のパフォーマンス②ポートフォリオのESG評価③ESG評価の国別ランキング④ESG評価間の相関⑤日本企業におけるジェンダーダイバーシティ⑥ESG情報開示とESG評価の関係を掲載。そして、第三章「気候変動リスク・機会の評価と分析」は①気候関連財務情報の開示・分析の構成と注目点②ポートフォリオの温室効果ガス排出量等の分析③カーボンニュートラルの実現に向けた官民の動向分析④脱炭素社会への移行を見据えた企業の動きとその評価⑤Climate Value-at-Riskを用いたリスクと機会の分析⑥Climate Value-at-Riskを用いた国債ポートフォリオの分析という構成。
Climate Value-at-Risk(気候バリューアットリスク、CVaR)は、気候変動に伴う政策の変化や災害による企業価値への影響を測定する手法。気候変動による企業価値への「リスク」だけでなく、「機会」についても統合して分析できるとされる。
宮園雅敬理事長は、コメントで「今回の報告書では気候変動リスク・機会に関連し、CVaRの更なるモデル改善により、分析をさらに高度化した。また、脱炭素社会への移行に向けた各国の政策動向や企業の取組み状況の分析など、多面的な分析を行っている。各国政府と企業が脱炭素社会への移行を目指すなか、GPIFなどの投資家側も投資先企業の気候変動リスクや収益機会を適切に把握し投資に反映することの重要性が高まっている」と、同報告書をアセットオーナーやアセットマネジャーの情報開示に生かして欲しい意向を述べた。
【参照レポート】GPIF「年金積立金管理運用独立行政法人『2021年度 ESG活動報告』」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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