ファーボ・エナジー、強化地熱システムの実証に成功。グーグルの24時間365日カーボンフリー後押し

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次世代地熱発電のスタートアップ企業ファーボ・エナジー(Fervo Energy)は7月18日、米国ネバダ州北部で実施した実証プログラム「Project Red」において、強化地熱システム(EGS)の坑井試験が成功裏に終了したと発表した(*1)。EGSを用いて提携先であるグーグル(親会社はアルファベット)の24時間365日カーボンフリーエネルギー(CFE)の実現を後押しする。

EGSは地下深くの地熱井を掘削し、そこへ地上から水を送り込み熱して蒸気タービンを回すことで発電する次世代型の地熱発電技術だ。

ファーボは30日間の坑井試験を実施した。同試験では7,700フィート(約2,310メートル)掘り下げ、水平方向に3,250フィート掘削した。内部の温度は華氏約375度に達し、1秒当たりの流量は63リットルに及んだ。これにより、5メガワット(MW)の電力を生成でき、2,625世帯の電力需要を賄えるという(*2)。

同社は400MW級のプラント建設を開始し、2028年までに稼働する計画だ。これにより、約30万世帯の電力を賄えるとしている(*3)。

現在、熱水や蒸気などの地熱資源の多くは構造プレート境界付近に存在する。一方、ファーボは地熱資源の場所に依存することなく、石油・ガス業界で培った掘削技術や水圧破砕法を活用し、地下深くの岩盤層に貯留層をつくって地熱発電を行える。

ファーボとグーグルは21年、次世代型の地熱発電システムの開発に向けた世界初の企業間契約を締結した。提携を通じ、グーグルクラウドのラスベガスリージョン向けに常時カーボンフリーエネルギーを供給することで化石燃料への依存低下を目指す。

米国エネルギー省(DOE)は、35年までにEGSの発電コストを90%削減し、MW時当たり45ドルにすることを目指す取り組み「強化地熱ショット(Enhanced Geothermal Shot)」を発表した(*4)。DOEは、EGSが米国の6,500万世帯超にクリーンエネルギーを供給できる可能性があると指摘する。

ファーボは、今回実施したProject Redを通じ、地熱エネルギーが米国の電力需要の20%超を賄えると共に、完全な脱炭素グリッド(電力網)の構築に向けて、出力が大きく変動する太陽光と風力発電を補完できるという画期的な成果を得られた。

グーグルは次世代型の地熱発電が巨大な潜在可能性を秘めると見ている。同分野のリーディングカンパニーであるファーボが、グーグルの24時間365日CFEの実現や米国のエネルギー・トランジション(#1)に向けた取り組みを加速させることに期待したい。

(#1)エネルギー・トランジション…石炭や石油などの化石燃料を中心とするエネルギー構成から、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを中心としたものに大きく転換していくこと。

【参照記事】*1 ファーボ・エナジー「Fervo Energy Announces Technology Breakthrough in Next-Generation Geothermal
【参照記事】*2 カリフォルニア独立系統運用機関「 California ISO – Understanding electricity
【参照記事】*3 CNBC「Fervo Energy hits milestone in using oil drilling technology to tap geothermal energy
【参照記事】*4 米国エネルギー省エネ再エネ局(EERE)「Enhanced Geothermal Shot

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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