EU、包装廃棄物新規則で世界の循環経済をリードへ 設計段階からの変革を義務化

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欧州連合(EU)は、包装および包装廃棄物に関する新たな包括的規則「(EU) 2025/40」を採択し、世界のサプライチェーンに大きな影響を与える循環経済への移行を加速させる。この画期的な法律は、製品設計の核心にリサイクル可能性、再利用可能性、化学的安全性を据えるもので、5月21日にその詳細が報じられた。

2024年12月19日に採択され、2025年から2030年にかけて段階的に施行される本規則は、EU加盟27カ国における包装の生産、使用、廃棄の方法を根本から書き換えるものだ。その目的は、包装廃棄物を発生源から最終処分まで管理し、持続可能性、循環性、材料の安全保障を欧州の包装市場に確立することにある。

規則の主な柱として、まず「設計段階からのリサイクル可能性」が挙げられる。2030年までに全ての包装材は最低Cグレード、2038年までにはBグレードのリサイクル可能性基準を満たすことが義務付けられる。これには、包装設計、分別プロセス、そして大規模なリサイクル能力に関する詳細な技術的評価が含まれる。

次に、「再生プラスチック利用義務」が導入される。プラスチック包装には、分野や包装タイプに応じた再生材の最低含有率目標が設定され、2040年にはさらに厳しい基準が適用される見込みだ。

化学物質の管理も強化され、PFAS(有機フッ素化合物群)、BPA(ビスフェノールA)、鉛、カドミウム、水銀、六価クロムといった特定の有害物質の使用が禁止または厳しく制限される。将来的には、EUの化学物質持続可能性戦略と連携し、これらの規制はさらに強化される可能性がある。

消費者への情報提供とトレーサビリティ向上のため、「スマートラベルとデジタル追跡」が導入される。QRコードやEUで統一されたシンボルにより、消費者への適切な廃棄ガイダンスが標準化され、廃棄物分別施設での高度な選別や規制遵守の確認が容易になる。

「再利用と詰め替えの促進」も重要な要素だ。特に食品、飲料、電子商取引の分野では、標準化された再利用可能な包装フォーマットの導入と、それらが実際に複数回使用されることを保証するための最低限のローテーションサイクルが義務付けられる。また、デポジットリターン制度についても、EU共通のシンボルを導入することで参加率の向上と収集システムの効率化を図る。

堆肥化可能な包装については、その使用が厳しく制限される。ティーバッグやコーヒーポッドのように、バイオ廃棄物の回収に明確に貢献すると実証される特定の用途に限定される。

さらに、全ての包装はその体積と重量において最適化される「最小化義務」が課される。二重壁や上げ底といった、製品保護や機能性に直接関係しない過剰な設計要素は、再利用やリサイクル可能性の向上に寄与すると正当化される場合を除き、明確に禁止される。

この新規則は、企業にとってはエコデザインへの即時投資、サプライチェーンの透明性確保、そしてコンプライアンス体制の構築を意味する。デジタル製品パスポートの導入、革新的な材料開発、包装廃棄物処理事業者との連携が不可欠となるだろう。政策機関や資金提供者にとっては、インセンティブの調整、グリーンイノベーションの促進、環境成果の追跡に関する強固な青写真を提供する。学術界やイノベーターにとっては、材料科学、工業デザイン、行動経済学、デジタルインフラといった分野での学際的な研究開発を促すものとなる。

世界が法的拘束力のある国連プラスチック汚染条約に関する議論を進める中で、このEUの包括的な包装廃棄物規則は、国際的な基準となり得るモデルとして注目される。本規則は単に包装廃棄物を規制するだけでなく、システム全体を再設計することを目指しており、包装が問題ではなく解決策の一部となる未来を実現するための重要な一歩となる。

参照記事:Circular by design: EU’s new packaging waste regulation sets the global standard

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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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