欧州議会は7月6日、持続可能な経済活動を分類する「タクソノミー」で原子力と天然ガスを含める法案を支持した(*1)。2023年1月より欧州連合(EU)域内で適用される公算が高まった。持続可能なグリーンエネルギーとして認定されたことで、ESG(環境・社会・ガバナンス)マネーを呼び込みやすくなる。
EUタクソノミーは、欧州連合(EU)が定めた環境に配慮した持続可能な経済活動かを認定する基準のことである。対象とする経済活動が、気候変動の緩和や適応といった目標に合致しているか判断する材料となる。投資家や政策立案者、企業が参照とすることから、欧州地域で行われる気候変動対策プロジェクトの資金調達に影響を及ぼしうる。EUタクソノミーはグリーン投資の拡大に加え、「グリーンウォッシュ(#1)」の防止にもつながる、と欧州議会はみている。
米エネルギー情報局(EIA)によると、天然ガス発電は二酸化炭素(CO2)の排出量が石炭の半分ほどになるという。原子力は発電時にCO2を排出しない電源であり、天然ガスとともに気候変動対策に貢献すると期待される。
ただし、天然ガスと原子力が持続可能と認定されるには厳格な基準をクリアしなければならない。たとえば、原子力発電施設は2045年までに建設認可を受けている、もしくは40年までに運転期間延長のための修繕認可を受けていることを前提とし、ライフサイクル全体の温室効果ガス(GHG)排出量を一定未満に抑えなければならない。
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、欧州ではエネルギー面のロシアからの脱却が急務となっている。また、EUは30年までにGHG排出量を1990年比で少なくとも55%削減し、50年までに気候中立の実現を目指す。そのようななか、天然ガスと原子力を持続可能と分類し、民間の投資マネーを呼び込みやすくすることで、気候変動対策とエネルギーの安全保障の確保を図る狙いがあるようだ。
EUタクソノミーに天然ガスと原子力が追加されたことに対する市場の反応はマチマチだ(*2)。天然ガスの利用を継続することは、ロシア産エネルギーへの依存がつづくことを意味するとして反対する者がいる一方、最優先事項である石炭の段階的廃止を可能な限り早くすすめるうえで、ガスは有効であるとみる者もいる。
同法案は、欧州議会の過半数か、EU加盟27カ国のうち少なくとも20カ国の反対がなければ成立する。域内ではすでに新たな動きを見せる国が出てきている状況だ。フランス政府は電力公社EDFを100%国有化し、エネルギー安全保障を確保するとともに原発開発を推進する方針を示した。同国では発電電力量の70%を原子力が占めている。
(#1)グリーンウォッシュ…アセットマネジメント業界においては、自社が組成したファンドに「サステナビリティ」や「ESG」というキーワードを入れることで、あたかも環境に配慮したファンドであるかのように見せかけること。
【参照記事】*1 欧州議会「Taxonomy: MEPs do not object to inclusion of gas and nuclear activities」
【参照記事】*2 CNBC「Europe: natural gas, nuclear are green energy in some circumstances」
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