欧州理事会と欧州議会は、建物のエネルギー性能に関する指令の改正案の暫定的な政治合意に達したと発表した(*1)。今後、欧州連合(EU)の加盟国は、最低エネルギー性能基準(MEPS)の設定や化石燃料ボイラーの段階的廃止などに取り組む。
同指令改正案は、EU域内の新築及び既存建築物に対し、新たにより野心的なエネルギー性能基準を設定し、加盟国に建築物の改修を促すものだ。建物は、EUにおける温室効果ガス(GHG)排出量の3分の1以上を占めている。今回の合意を受け、建物のエネルギー性能を高め、排出量を削減し、エネルギー貧困(#1)に取り組むことができる。
欧州委員会(EC)は2021年12月15日、欧州議会および欧州理事会に対し、建物のエネルギー性能に関する指令の改正案を提出した。同指令は、30年のGHG排出削減目標(1990年比で少なくとも55%削減)を達成するための政策パッケージ「Fit for 55」パッケージの一部を構成する。
改正の主な目的は、全ての新築建築物を30年までに、既存建築物を50年までにそれぞれゼロエミッション化することである。また、既存建物のエネルギー改修の拡大を図る「リノベーション・ウェーブ戦略」を実現するための必要な手段の一つであり、30年までに建物の年間エネルギー改修率を少なくとも2倍にすることを目指す。
具体的には、以下の3つの施策を講じる。
太陽光発電設備の設置:両立法機関は、建築物における太陽エネルギーに関する第9a条で合意した。これにより、新築の建築物、公共建築物、許可を必要とする改修工事を行う既存の非居住用建築物(商業建築物)において、適切な太陽エネルギー設備の導入を義務づける。
MEPSの設定:両立法機関はMEPSに関し、30年には全ての非居住用建築物がエネルギー性能最下層の16%を上回り、33年には26%を上回ることに合意した。
居住用建築物の改築目標については、加盟国は平均エネルギー消費量を2030年に16%、35年に20~22%の範囲で削減することを義務づける。また、エネルギー削減の55%は、最低エネルギー性能の建物改築によって達成されなければならない。
建物における化石燃料の段階的廃止:両立法機関は、化石燃料ボイラーを段階的に廃止する計画について、40年までに化石燃料ボイラーを段階的に廃止することを視野に入れたロードマップを「建築物改修計画(National Building Renovation Plans)」に盛り込むことで合意した。
(#1)エネルギー貧困…生活する上での基礎的なエネルギー需要を満たすことができない状態を指す。
【参照記事】*1 欧州理事会「‘Fit for 55’: Council and Parliament reach deal on proposal to revise energy performance of buildings directive」
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