米調査会社ブルームバーグNEFは1月30日、世界のクリーンエネルギー投資動向に関するレポート「Energy Transition Investment Trends 2024」を公表した(*1)。2023年の世界の低炭素エネルギーへの転換に向けた投資は過去最水準となったものの、今世紀半ばまでに世界をネットゼロの軌道に乗せるには決して十分な水準ではないとの見解を示した。
23年の低炭素エネルギー転換への世界投資は、前年比17%増の1兆7,700億ドル(約262兆円)に達し、地政学的な混乱、高金利、コスト高の年におけるクリーンエネルギー転換の回復力を示した。
中でも、輸送部門の電動化は36%増の6,340億ドルと、エネルギー転換における最大の支出分野となった。これには、電気自動車(EV)、バス、二輪車、三輪車、商用車、そして関連インフラへの支出が含まれる。
再生可能エネルギー部門は8%増の6,230億ドルだった。これは、風力、太陽光、地熱発電所、バイオ燃料製造所など、再エネ生産施設の建設投資を反映している。送電網への投資は3,100億ドルで、3番目の支出分野であった。送電網はエネルギー転換を実現する重要な手段であり、今後数年間は送電網への投資を増やす必要がある。
水素(投資額は前年比3倍増)、炭素回収・貯蔵(ほぼ倍増)、エネルギー貯蔵(76%増)といった新興分野でも力強い成長が見られた。
最大の投資国は中国で、23年の投資額は6,760億ドルと、世界全体の38%を占めた。中国は依然として優勢だが、そのリードは縮小している。欧州連合(EU)、米国、英国を合わせた投資額は7,180億ドルと中国を上回っており、これは2022年には達成できなかったことである。米国ではインフレ抑制法(IRA)の効果が現れ始めたこともあり、投資額は22%増の3,030億ドルだった。
クリーンエネルギーへの現在の投資水準は、今世紀半ばまでに世界をネットゼロの軌道に乗せるには決して十分と言えるものでない。同レポートによれば、エネルギー転換への投資は24年から30年まで年平均4.8兆ドル必要であり、これは23年の投資額の約3倍に相当する。
エネルギー技術のための機器工場やバッテリーメタル生産を含む世界のクリーンエネルギー・サプライチェーンへの投資は、23年に1,350億ドルと新記録を達成し、今後2年間でさらに急増する見込みである。ブルームバーグNEFは、現在発表されている投資計画に基づき、この数字が25年までに2,590億ドルまで拡大すると予測する。
今後2年間で、ネットゼロの軌道に乗るためにサプライチェーンへの投資を増やす必要があるのは風力発電分野だけであり、他の分野は十分なペースで投資を行っている状況だ。
気候変動とエネルギー転換に注力する企業の株式発行による資金調達は23年に840億ドル、エネルギー転換のための企業や政府が発行した債券は8,240億ドルだった。
【参照記事】*1 ブルームバーグNEF「Global Clean Energy Investment Jumps 17%, Hits $1.8 Trillion in 2023, According to BloombergNEF Report」
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