欧州中央銀行(ECB)は3月12日、ビットコインが従来の金融システムにもたらした示唆について述べながら、中央銀行発行のデジタル通貨(CBDC)発行の必要性について言及した。
ECBの役員会のメンバーであるBenoît Coeuré氏と国際決済銀行(BIS)の市場インフラ委員会(CPMI)のJacqueline Loh委員長は、「ビットコインは誰もが適正な値付けをできておらず、決済手段としても価値の保存手段としても機能していないギャンブル同然のものだ」と痛烈に批判をし、消費者が自分のお金を管理する方法を大きく変える中央銀行発行のデジタル通貨の潜在的可能性を強く訴えている。
一方で、「多くの欠点にもかかわらず、ビットコインは従来のシステムの失敗、すなわちクロスボーダーの小売決済にスポットライトを当てた。(中略)既存の支払いチャンネルは一般的に、遅く、不透明で、国内の支払いよりはるかに高額という現状がある」と、仮想通貨が現在の銀行システムではカバーしきれていないニーズにまで対処していることを認めた。
ECBによる一連の発言の背景には、BISによる調査でキャッシュレスによる支払いがおよそ倍になっていることが判明したことや北欧の数か国で現金削減の動きが進んでいることにある。彼らエスタブリッシュメントの危機感は、「生まれた時からインターネットが当たり前のように存在するデジタルネイティブ世代(iGeneration)がアプリでの支払いを好み、彼らの子ども世代に至る頃には現金は博物館の展示物扱いされる可能性すらある」という発言からも如実にうかがうことができる。
BISはCBDCはビットコインの基幹技術であるブロックチェーンをもとに構築することが望ましいだろうとしており、中央銀行によるデジタル通貨発行の現実味を示唆した。これは中国人民銀行の周小川総裁が先週発した「中国がいつの日か国家による独自の仮想通貨を持つことは必然」という発言にも同調するもので、今や世界各国で国家発行の仮想通貨に対して議論が進んでいる。
分散型元帳技術(DLT)をベースにピアツーピアの決済を可能としたことが特徴で、中央銀行が発行する法定通貨とは思想や役割まで大きく異なるのが仮想通貨だ。しかし、将来的にはCBDCと既存の仮想通貨が入り乱れ、現時点では将来有望と考えられている通貨であっても今後淘汰されていく可能性は否定できない。通貨発行権をもつ国家が国策として仮想通貨を一網打尽にする動きをとる可能性もある。来週開催予定のG20ではこうした仮想通貨に対する世界的な動きが一層明確になり、枠組みづくりが進んでいくことが期待される。
【参考記事】Bitcoin not the answer to a cashless society
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