英蒸留酒大手ディアジオ(ティッカーシンボル:DGE)は8月、45万ポンド(約7,400億円)を投じ、アフリカの小規模農家むけの気候変動緩和・モニタリング技術を有する企業に投資するファンドを立ちあげたと発表した(*1)。水・炭素・生物多様性の課題解決をめざす。
小規模農家は気候変動による天候の変化や水不足に対して極めて脆弱である。ディアジオは、ESG(環境・社会・ガバナンス)アクションプラン「Society 2030: Spirit of Progress」の一環として、小規模農家のコミュニティの強じん性を構築するとともに、天然資源を保全するための農業プログラムをモニタリングする。
同ファンドを通じ、水・炭素・生物多様性という3つの注力分野において、イノベーター、スタートアップ企業、関連技術を有する企業、もしくは新たな技術の開発を試みる企業などに投資する。
課題のひとつである水に関しては、むこう50年間で、アフリカの降水量は10〜20%以上減少すると見込まれており、貧困削減、食糧安全保障、持続可能な開発の進展をおびやかす恐れがある。そのようななか、農家の生産性を最大化するためには、土壌の保水力とモニタリング技術の大幅な向上が不可欠であるという。関連ソリューションとして、保水用の土壌添加剤、ハイパーローカル(超地元密着)な天気予報、農地の土壌水分測定用プローブなどをあげている。
炭素は健全な土壌を保つうえで不可欠なものであるが、農作業によって大気中に放出されうるため、土壌中の炭素の測定、モニタリングを改善する必要がある。関連ソリューションとしては、リモートモニタリング、炭素隔離のモデル化などがあげられる。
生物多様性は気候と表裏一体で、気候変動の緩和と適応に不可欠である。生物多様性のモニタリング技術を向上させることも重要である。関連ソリューションとしては、カメラトラップや小規模農家との協働体制の構築などがあげられる。
ディアジオは2020年11月、「サステナブル・ソリューション・プログラム」を立ちあげた。これは、イノベーターから次世代のサステナブル技術に関するアイデアを募り、トライアルから生産までを支援するプログラムとなる。同プログラムを通じ、ディアジオは30年までにサステナビリティ目標の達成をめざす。
現在は、独コンサルティング会社エクサジー、仏最大級のITソフトウェア会社ダッソーシステムズ、ルクセンブルク容器メーカーのアルダー・グループと協働し、排出量と資源の削減に資するガラスびんの大幅な軽量化と強度を両立させるコーティング材の研究開発を行っている。
ディアジオのグローバル・サステナビリティ・ディレクターを務めるカースティー・マッキンタイル氏は「パリ協定の1.5度シナリオにおいても、南半球の農家が気候変動に適応するための支援が必要になる見込みだ。つぎのサステナブル・ソリューション・プログラムでは、最もリスクの高い国やコミュニティの生命や暮らしをたすけるイノベーター向けのアクションを起こせるはずだ」と述べた(*1)。
新たに立ちあげたファンドを通じ、まずは東アフリカでパイロットプログラムを開始する。成功した際には、カメルーン、ガーナ、インド、ケニア、メキシコ、タンザニア、セーシェル、南アフリカ、ウガンダといった、ディアジオの小規模農家ネットワークでもプログラムを展開する計画だ。
ディアジオは20年、環境分野で世界的に権威のある英NGOのCDPより、「気候変動」と「ウォーターセキュリティ(水)」部門で最高評価となる「Aリスト」企業に認定された(*2)。両部門でAリスト認定を取得するのは、世界の飲料メーカーでわずか9社、全対象企業9,617社のうち65社のみとなる。
CDPは世界中の機関投資家680機関強から企業の開示要請を受託しており、その運用資産総額は130兆ドル(約1京8,629兆円)を超える。企業にたいして質問書を送付し、その回答をもとにスコアリングする。ESG投資にもCDPの結果が活用されている。
【参照記事】*1 ディアジオ「Diageo launches innovation fund to help mitigate climate change in smallholder farms in Africa」
【参照記事】*2 ディアジオ「Diageo ESG Reporting Index 2022」
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