サーキュラーエコノミースタートアップCircular、16億円調達。リサイクル素材調達プラットフォーム拡充へ

サーキュラーエコノミー(循環経済)スタートアップCircularは3月25日、1,050万ドル(約16億円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、使用後にリサイクルされた材料(PCR材)のプラットフォーム拡充や国際展開を推進していく方針だ。

食品・飲料から耐久消費財、自動車に至る世界の有力企業が、2025年と30年までにプラスチック削減とネット・ゼロ・エミッションの目標を達成するために、時間との戦いに挑んでいる。

現在、英エレン・マッカーサー財団が主導する「ニュー・プラスチック・エコノミー・グローバル・コミットメント」のような、プラスチック削減の誓約に署名した企業は、25年の目標を達成できない可能性が高い。

さらに、アクセンチュアによれば、50年までにネット・ゼロ・エミッションの目標を達成する見込みのある企業は、全体の僅か18%に過ぎない(*2)。

これらの目標を達成することを任務とするサステナビリティと調達チームは、PCR市場が断片化していることから、価格、品質、入手可能性、アクセスに関する継続的な問題を抱えている状況だ。

今回、Circularに出資したEclipseによると、世界の企業の売上高ランキングである「フォーチュン・グローバル500」のうちの多くの企業が、今後3〜5年のうちに再生樹脂を最大50%使用するという積極的な目標を掲げている。

また、世界全体では年間4億トン以上のプラスチック製品を製造している。しかしながら、これらの目標を達成するためには、気の遠くなるような量のPCRを調達するだけでなく、プラスチックを調達するためのサプライチェーンや製造工程を全面的に見直す必要があると指摘する。

そのような中、Circularはベンダーの特定、サプライヤーの認定、仕様の標準化、品質保証、ロジスティクスを合理化し、供給、価格、品質の一貫性を生み出すことで、PCRを実現する唯一の一面的なソリューションを提供する。

Circularは、人工知能(AI)を使ってコード化された50,000件以上のPCR技術データを持つ9,000社超のグローバルサプライヤーへのアクセスを提供している。ユーザーにとっては、価格、スペック、材料量、サプライヤー認証などの詳細を把握できる。

その広範なデータベースは、これまでバラバラで、不透明で、流動性の低かった業界に可視性と透明性をもたらす。Circularは、顧客のために検索、ソーシング、審査、オンボーディングのプロセスに対応し、アナログの方法では数か月、あるいは数年かかる結果を数日で出せる。

サーキュラーの創設者兼最高経営責任者(CEO)のイアン・アーサーズ氏は「バイヤーやサプライヤーは、弊社のデータを活用することで、より迅速でスマートなビジネス上の意思決定を行い、サステナブルな素材を生産するためのプロセスを簡素化することができる」と述べた(*1)。同氏はTaskRabbitとMediumの元最高執行責任者(COO)であり、グーグルとエアビーアンドビーでも要職を歴任した人物だ。

新たに強化されたプラットフォームには、 世界のどこでも、特定の仕様と価格で入手できるPCRを確認できる初のセルフサービス機能を搭載した。デジタルカスタム見積もりを通じ、バイヤーがサプライヤーと直接つながることもできる。さらに、測定テストから、オンボーディング、契約、カーボンフットプリント、輸送に至るまで、バイヤーを支援する。

Circularは今回の資金調達に先立ち、米小売り大手ウォルマートのグローバルeコマースのカスタマー・エクスペリエンス担当バイスプレジデントであったシャノン・ゴードン氏など、業界の重鎮を招聘した。6,000億ドル規模のプラスチック市場のサーキュラーエコノミーを実現するという目標の達成のため、チームの強化も図っている状況だ。

2023年第4四半期だけで、Circularのプラットフォームを通じて3万5,000トンのPCRが調達され、商品総額は4,300万ドルに達する。企業は市場価格に対して平均10%以上のコスト削減を実現した。

PCRの価格設定の大半は、バージン(新品の素材だけを使用して製造した)プラスチックの指標価格を下回っており、PCRには常にグリーン・プレミアム(#1)が存在するという通説を覆す結果となっている。

(#1)グリーンプレミアム…炭素を排出する製品と排出しない代替品のコスト差のこと。
【参照記事】*1 Circular「Circular Announces $10.5M in Funding to Scale First-of-its-Kind Platform for Sourcing Recycled Materials
【参照記事】*2 アクセンチュア「Only a Fifth of Companies on Track for Net Zero, with Heavy Industry Key to Breaking Decarbonization Stalemate, Accenture Reports Find

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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