中国の中央銀行である中国人民銀行の易綱総裁は5月26日のインタビューで、「デジタル人民元の発行に関する明確なスケジュールは現在設けていない」とコメント。人民銀が取り組んでいる「現在の実証実験は研究開発におけるルーチンワークにすぎず、デジタル人民元の正式な発行を意味するものではない」と加えた。
易綱総裁は5月26日に開かれた「中国人民政治協商会議」と「全国人民代表大会」の合間に人民銀機関紙「金融時報」などのインタビューに応じており、発言内容が中国人民銀行のウェブサイトで同日に公開された。
市場で期待される早期の発行こそ否定したが、易総裁は「デジタル通貨電子決済(DC/EP)」のトップレベルの設計、標準のフォーマット化、機能の研究開発、共同デバッグテストが完了したことを認めた。「基本的に、2層運用、M0(現金)置換、制御可能な匿名性を前提としている」としている。
中国人民銀行は2020年4月から深圳、雄安新区、成都、蘇州の4都市で「デジタル通貨電子決済(DC/EP)」の実証実験を行っている。易綱総裁によると、現在のデジタル通貨の研究開発は安定、安全、制御可能、革新的、実用的という原則を遵守して進められている。
易総裁はまた、デジタル経済においてデジタル人民元の開発と適用が、「中国のデジタル経済の発展を加速させるのに役立つ」と認めている。法定通貨に対する人々の需要を効率的に満たし、小売決済の利便性やセキュリティ、偽造防止の水準を高めることができるとした。
易総裁はデジタル人民元の発行スケジュールを否定したが、業界関係者は中国が米国による潜在的脅威に対抗するために、DC/EPの発行計画を加速させる可能性があると5月26日付けのグローバルタイムズ紙で語っているという。香港への優遇措置廃止や世界保健機関(WHO)脱退方針など米中対立の中で、急激に人民元安が進んでおり、中国がじわりと脱ドル化を図る姿が浮かび上がる。
【参照記事】中国人民银行行长易纲在“两会”期间就金融保市场主体等问题接受《金融时报》《中国金融》记者采访
高橋奈夕
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