調査会社ブルームバーグNEF(BNEF)は12月11日、例年実施しているClimatescope調査で、発展途上国経済における再生可能エネルギー市場の成長見通しは明るかったが、新型コロナウイルス感染拡大後に減速しているという分析結果を発表した。
同社によると、太陽光発電プロジェクトなどの太陽光発電設備の発電容量は10年前の1ギガワット(GW)から 325GWまで向上。風力発電への投資額は年間で過去最高となり、 890億ドルが陸上風力と洋上風力双方を含む30の新興国市場のプロジェクトに配分された。
成長の背景には、化石燃料と比較してクリーンテクノロジーの根本的なコスト競争力の高さがあり、外国人投資家もこれを認識していた。 再生可能エネルギーを支援する海外直接投資(FDI)総額は、 これまでの最高だった18年の240億ドルから19年には320億ドルへと増加し記録を更新した。 19年投資額の大部分である84%は国際プロジェクト開発者、 公益事業、商業銀行、その他民間の資金源によって占められていた。
しかし今年、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生、世界経済に与えたダメージの中でも、新興国市場は特に深刻だった。経済活動を維持するため新興国市場の政府の多くは財政支出を加速させ、それに伴って借り入れが膨らんだため、各国の通貨は下落、ソブリン債は格付けの引き下げに直面することになった。「クリーンエネルギー投資に対する海外からの資金流入の勢いは一気に衰えたが、それは多くの投資家がより安全な投資機会を自国に近い市場に求めるようになったため」と同社は見ている。
Climatescopeは同社のアナリスト60人による調査の結集で、 世界108の新興国市場で123項目にわたる詳細なデータ指標を収集している。特に、19年に達成された主要マイルストーンは、新興国市場への投資熱を数値で裏付ける。例を挙げると、新興国経済は全世界の公益事業規模のクリーンエネルギー容量に投資されたアセットファイナンス総額2490億ドルの58%(1440億ドル)を占めた。太陽光発電も定着しつつある。新興国10市場のうち3市場では太陽光の発電容量が他のどの電源容量よりも多く設置された。約69の市場で新規にメガソーラーまたは小規模太陽光発電施設が建設され、480億ドル以上の資金が供給された。太陽光発電は新興国市場の発電容量の8%あるいは発電量の2%を占め、現在、95の市場に少なくとも10メガワット(MW)の太陽光発電容量が設置されているという。
中国本土とインドは、新興国市場で最大のクリーンエネルギー投資国だ。両国合わせて19年の風力発電および公益事業規模の太陽光発電の新規投資は940億ドル、設置された風力・太陽光発電容量は76GW(容量の数字はメガソーラーと小規模太陽光発電の両方を含む)に上った。再生可能エネルギー(水力を含む)も初めて他の新興国市場106カ国(中国本土とインドを除く)における新規設備容量の大部分を占めた。一方、ガス発電設備容量は2014年ぶりの最低水準まで低下し、 新規容量は17GWのみだった。
Climatescopeには20年の包括的なデータは含まれていないが、 初期の兆候として、 パンデミック関連の混乱により新興国クリーンエネルギー市場への資金流入が減速し、 投資家が一時的に様子見となっていることがうかがわれる。 16年以来、四半期としては初めて、先進国市場への資本流入が発展途上国市場への流入を上回ったことが記録された。
「新型コロナが唯一の要因とは決していえないが、 20年の3四半期にわたり一貫して急速な減少が見られたことから、通期の数値も19年から大幅な減少となることが示唆される」と同社。「新型コロナにより利用可能な民間の資本プールが縮小している現在、先進国金融機関による支援が今後1年で増加することを期待する」とコメントしている。
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HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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