炭素クレジット格付機関スタートアップの英ビーゼロカーボン(BeZero Carbon)は11月6日、新たに炭素クレジットポートフォリオ構築ツールをリリースしたと発表した(*1)。同ツールを活用することで、炭素クレジットの購入者(バイヤー)は炭素クレジットポートフォリオ全体のリスクを把握し、信頼できるネットゼロ戦略を策定できるようになる。
新たにリリースしたツールは、炭素クレジットプロジェクトの立ち上げから撤退までを評価できるフルサービスのカーボンリスクツールキットだ。ビーゼロ初となるディスカウント手法を適用した。
同ツールを活用することで、顧客は炭素クレジットポートフォリオを調査し、どれだけのクレジットを購入または償却する必要があるかを計算できるようになる。
これは、ボランタリーカーボンマーケット(VCM)がその可能性を発揮し、規模を大きく拡大していくために不可欠なものだ。バイヤーにとっては、炭素クレジットの利用に対するより高い信頼性を提供し、定量的にクレーム(主張宣伝)を行うために必要な係数をより良く理解するのに役立つ。
ビーゼロは2020年4月に英国で創業した炭素クレジット格付のスタートアップだ(*2)。資本市場リサーチ、気候科学、公共政策、テクノロジーなどの専門性を融合させ、1トン当たりの炭素排出削減効果を達成できる可能性を8段階で格付する。これまでに世界中で360件以上のプロジェクトを評価してきた。
社員の6人に1人が博士号を持っており、格付けアナリストや地理空間関連の専門家などが作成したレポートは、査読付きの科学論文に10,000回以上引用されている。10月には、バイヤーが自らカーボンリスクを評価することができる業界初のツールScorecardをリリースした。
世界各国が50年ネットゼロ達成に向けて脱炭素の取り組みが加速するのに伴い、脱炭素化が困難な業種を中心に炭素クレジット売買の需要が拡大している状況だ。中でも、民間企業が実施するVCMの市場は23年から29年までに20.9%の年平均成長率(GAGR)で拡大する見通しである(*3)。
一方、クレジット創出プロジェクトの中には、森林保全などを通じた炭素削減効果を信頼できないものが含まれ、グリーンウォッシュに繋がりかねないと指摘する声も挙がっている。ビーゼロのようなツールを活用してVCMの品質に関する情報を得ることで、バイヤーにとっては購入先を検討する際の判断基準となる。より環境にポジティブインパクトをもたらすプロジェクトに投資してリスク軽減に繋げることが期待できる。
【参照記事】*1 ビーゼロカーボン「BeZero launches new tool to help buyers construct risk-adjusted and credible net zero strategies」
【参照記事】*2 ビーゼロカーボン「Scaling markets for environmental impact」
【参照記事】*3 グローバルインフォメーション「ボランタリーカーボンクレジット取引の世界市場:分析・実績・予測 (2018年~2029年)」
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