新型コロナウイルスの世界的な感染拡大(パンデミック)に伴う経済活動の停止により、温室効果ガスの排出量が世界中で激減、その減少率は25%に達すると試算されている。結果として世界の二酸化炭素排出量は2019年にいったんピークに達したとみられ、20年には5%以上減少する可能性がある。アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社は機関投資家向けのレポート「新型コロナウイルス: グリーン・リカバリー(環境に配慮した復興)を目指して」で「今回のコロナ危機を、炭素排出量を最小限に抑えながら持続可能な景気回復を確実なものとする復興の道筋を築くきっかけにしなければならない」と主張、グリーン・リカバリー(環境に配慮した復興)のための施策を提示している。(※数字は4月28日時点のもの)
新型コロナウイルスの影響による都市封鎖(ロックダウン)や工場閉鎖、大規模集会の禁止、移動制限によって、粒子状物質やCO2(二酸化炭素)の排出量が減少した。英国の気候科学情報サイト「カーボン・ブリーフ」は、2020年2月に中国の炭素排出量が25%減少(CO2換算で2億トン減少)したと試算している。
2019年にすでに排出量が減少していたとみられる欧州では、欧州連合域内排出量取引制度(EU ETS)を通して測定される2020年の排出量が、2019年から25%の大幅減となる可能性がある。欧州の電力部門の排出量は12.7%減少する見通し。米国では、ウイルスの感染拡大時期にずれがあるため、新型コロナウイルスが炭素排出量に及ぼす影響を試算するのが欧州よりも難しいが、米国エネルギー情報局(EIA)は、20年に石油の総消費量が6.5%減少し、日量平均1910万バレルまで落ち込むと予測。これは過去40年間で最大の減少率となる。
しかし、同社は「現在進行中の景気後退には地球を覆う温室効果ガス層の濃度を下げる効果はほとんどみられず、地球温暖化対策になんら時間的猶予を与えていない。マクロレベルで見れば、コロナ禍に頼って経済の脱炭素化を図ろうとするべきではない」との見解を示す。「世界の気温上昇を産業革命前の水準から1.5℃以内に抑えるという気候変動目標の達成を目指すなら、ここ数カ月の結果を繰り返し再現する、あるいはさらに上回る必要がある」と提起する。
対応として、同社は「欧州グリーン・リカバリー・アライアンス」に対する支持を表明。同アライアンスは4月14日、EU(欧州連合)加盟国12ヶ国の大臣とグローバル企業39社のCEOが結成。コロナ後の経済回復に向け、住宅や建物の省エネ促進、電気自動車、運輸部門の低炭素化、再生可能エネルギーと低炭素電力などの拡大などを重点施策に掲げている。
アクサIMでは併せて、グリーンプロジェクトへの融資を目的とする、欧州安定メカニズム(ESM)をモデルにした「欧州気候変動緊急対策ファンド」など、具体的なソリューションも提案している。
グリーン・リカバリーの今後について、同社は「予想される復興は、エネルギーの転換を後押しする産業や社会の変化を根付かせるチャンス。感染拡大によって、気候変動をめぐる政策の考え方や地球規模で存在する脅威に立ち向かう断固とした協調行動の必要性が確かなものになる。環境負荷を減らす取り組みへの財政支援を促すと同時に、投資家エンゲージメントの主要テーマの強化にもつながるはず」と予測する。
そのうえで、投資家に対しては、スチュワードシップ活動を通じて、重要な役割を果たすべきと説く。「投資家はエンゲージメント計画を拡大し、360度評価を用いてエネルギー供給事業者や発電事業者のみならず、最終需要部門に対してもエンゲージメントを実施し、供給側のエネルギーミックスの転換と消費側の効率性向上の両方を促していくべき」と提言した。
【関連サイト】アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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