アマゾン傘下AWS、Orbital Materialsと提携。データセンターの脱炭素化と効率化技術の開発推進

アマゾン・ドット・コム傘下でクラウドコンピューティング事業を手掛けるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は12月4日、人工知能(AI)を活用して先端素材を開発するOrbital Materialsと戦略的パートナシップを締結したと発表した(*1)。提携を通じ、データセンターの脱炭素化と効率化技術の開発を推進する。

Orbitalは2022年に設立され、独自のAIプラットフォームを活用することで、データセンターでの二酸化炭素(CO2)除去および冷却技術のための新技術と先端素材の設計、合成、テストを行っている。AWSとOrbitalは共同で、CO2除去と効率性向上のための新技術の拡張性とパフォーマンス評価を実施する。

新しい先端素材の開発は従来、研究室での試行錯誤の遅々としたプロセスであった。Orbitalは生成AIを活用した設計に置き換えることで、素材の発見と新技術の商業化のスピードと効率を劇的に改善させる。

Orbitalの最初の製品は、独自開発の活性材料を利用した炭素除去技術である。同社は2024年第1四半期にラボを設立して以来、AIプラットフォームを活用することで、素材の性能を10倍向上させている。これは従来の開発手法よりも桁違いに速く、炭素除去効率の面でも新たな境地を開拓している。Orbitalは25年末までに炭素除去技術の展開とテストを行う予定である。

Orbitalのジョナサン・ゴドウィン最高経営責任者(CEO)は「市場をリードするAWSとの協働により、冷却、水利用、炭素除去に関する当社の製品開発が加速されるだろう」と述べた(*1)。

AWSの機械学習(ML)ソリューションAmazon SageMaker JumpStartおよびAWS Marketplaceを通じ、AWSの顧客はOrbitalの先端素材シミュレーション用オープンソースAIモデルOrbを利用できる。

Orbを活用することで、半導体、電池、エレクトロニクスなど先進的な素材や技術の研究開発に取り組むAWSの顧客は、セキュアで統一されたクラウド環境内にアクセスできる。

今回の提携の一環として、OrbitalはAmazon SageMaker HyperPod上で、同社のファンデーションモデルの事前トレーニングと微調整を行う。Amazon SageMaker HyperPodは、大規模な分散トレーニング用に構築された専用インフラである。AWSの独自AIトレーニング用チップであるTrainium(トレーニウム)を使用し、ディープラーニングワークロードのコストパフォーマンスの向上も図る。

AWSのエネルギー・公益事業担当ゼネラルマネージャーを務めるハワード・ゲフェン氏「OrbとAmazon SageMaker JumpStartおよびAWS Marketplaceを統合することで、より幅広い持続可能なイノベーションを実現できるだろう」と述べた(*1)。

【参照記事】*1 アマゾン「Orbital Materials and AWS enter strategic partnership to develop technologies for data center decarbonization and efficiency.

The following two tabs change content below.

フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
業務窓口
fortuna.rep2@gmail.com