電力需給予測システムを提供するスタートアップの米Amperonホールディングスは10月4日、シリーズB(資金調達ラウンド)で2,000万ドル(約30億円)の資金を調達したと発表した(*1)。調達資金を元に、電力需給予測ソリューションを推進し、グリッド(電力網)の脱炭素化を後押しする。
Amperonは2018年に創業し、人工知能(AI)を活用した高精度の電力需要予測プラットフォームを提供する新興企業だ。最新のAIとクラウドコンピューティングを実装し、スマートメーターから収集されるデータや複雑な気象データなどを総合的に分析することで、独立系統運用機関(ISO、#1)の予測平均を3倍上回る精度を有する(*2)。
同社のソリューションを活用する電力会社や小売業者などの顧客にとっては、毎時の電力使用に伴う二酸化炭素(CO2)排出量の測定や電力需要の負荷平準化、低炭素電力供給源の最適化などを図れ、エネルギー利用の最適化や電力網の持続可能性の向上などを実現できる。
Amperonは今回の調達資金を元手に最先端のAIモデルを活用することで、オンサイトの太陽光発電から、バックアップ発電やマイクログリッド(小規模電力網)の導入による商用電力の負荷管理まで、再生可能エネルギーの供給を不安定化させることなく系統電力供給に組み込むのに必要なデータを系統運用者(#2)に提供することができるようになるという。
また、気候変動の影響による需要の予測不可能性に対処できる包括的なデータ分析ソリューションへと機能拡大を図れるようになる。より強力なエネルギーデータ分析を行えることになることで、送電網の脱炭素化にも貢献できる。
今回の投資ラウンドは、気候テック投資を手がけるエナジャイズ・キャピタルが主導した。HSBCアセットマネジメントやD.E.ショーグループなどの既存投資家に加え、Amperonの長年の顧客であるオーステッドなども参加した。これでAmperonの資金調達総額は3,000万ドルとなった。
電力部門は世界の温室効果ガス(GHG)の一大排出源であり、ネットゼロ社会の実現を図る上で送電網の脱炭素化が欠かせない。これは、送電システムの信頼性向上に資するデータ、分析、予測ソリューションを提供するAmperonにとって大きなビジネスチャンスと言える。
Amperonの売上高は2021年以降5倍に拡大し、従業員は4倍に増加した。同社は、より信頼性が高く持続可能な電力網の構築に貢献すべく、エンジニア、データサイエンティスト、顧客サポート、営業職を増員し、新市場への参入を図る方針だ。
(#1)独立系統運用機関…送電網の所有権は電力会社に残したまま、送電網の運用・管理を電力会社から独立した組織(どの電力会社にも属さない非営利会社)が担う。この独立組織がISOである。
【参照記事】*1 Amperon「Amperon Raises $20 Million Series B Led by Energize Capital」
【参照記事】*2 Amperon「FORECASTING FOR
THE ENERGY TRANSITION」
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