アマゾン(ティッカーシンボル:AMZN)は7月4日、ドイツで数週間以内に米新興電気自動車メーカー、リヴィアン・オートモーティブ(RIVN)製の商用バンを投入すると発表した(*1)。アマゾンが欧州で電気自動車(EV)を展開するのは初の試みとなる。欧米企業は乗用車に加えて商用車の電動化も推進している状況だ。
リヴィアン製の電動バン300台が、ドイツのミュンヘン、ベルリン、デュッセルドルフで走行を開始する。アマゾンは昨年、欧州の輸送網の電動化と炭素排出の削減に10億ユーロ(約1,600億円)以上の資金を投じる計画を発表しており、今回はその取り組みの一環となる。
アマゾンは昨夏より、米国でリヴィアン製の電動バンを投入しており、全米500以上の都市と地域で3,000台超が走行している。アマゾンは2030年までにリヴィアン製の商用バンを10万台保有することを目指す。これにより、年間数百万トンの炭素排出の削減に繋げられるとしている。
アマゾンは19年、「Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)」を公表した。その一環として、40年までのカーボンニュートラル実現にコミットする。22年には、電動バンやマイクロモビリティ(eカーゴバイクやeスクーターなど)といったゼロエミッション車を利用して、欧州で1億2,000万個の荷物を配送した。
世界的に電動車の導入が進んでいる。特に、欧州ではトラックメーカー各社が、長距離輸送用大型トラックの電動モデルを展開するなど、乗用車のみならず商用車の電動化に向けた取り組みも出始めている。
セメント世界大手スイスのホルシム(HOLN)は5月中旬、30年までにスウェーデンのボルボ製の電動トラックを最大1,000台展開すると発表した(*2)。電動トラックの分野ではボルボ最大の契約になる。
ディーゼルトラックからEVトラックへ切り替えることで、道路輸送に伴う二酸化炭素(CO2)の排出量を年間最大50%削減できるとしている。
EV普及に向けた課題となる充電インフラの整備も進捗を見せている。仏電力大手エンジー(ENGI)は6月半ば、新たなEV充電スタンドブランド「ENGIE Vianeo」を立ち上げた(*3)。25年までにフランスで乗用車および大型トラック向けにEV充電スタンド12,000ヵ所の整備を目指す。
EVの充電電力は全て、水力、風力、太陽光といった再生可能エネルギー由来とする。
欧州連合(EU)の行政執行機関に当たる欧州委員会(EC)は2月、域内で販売されるトラックやバスなどの大型車のCO2排出基準に関する規則の改正案を発表した(*4)。40年以降はCO2排出量を19年比90%減とする。
欧州自動車工業会(ACEA)によると、EUのバン市場はディーゼル車のシェアが86%と高く、EVは5.3%に留まる(*5)。ただし、21年の3%から倍近くシェアを伸ばしている。規制強化と相まってEVバンの潜在ニーズは大きいと考えられる。
商用EVの普及強化には、規制に加えて補助金などの支援策も重要になる。欧州で事業を展開する企業各社にとっては、規制や各種支援策を巡る動向をにらみつつ、関連の取り組みを加速させる展開となりそうだ。
【参照記事】*1 アマゾン「Amazon rolls out first electric vans from Rivian in Europe」
【参照記事】*2 ホルシム「HOLCIM TO DEPLOY 1,000 VOLVO ELECTRIC TRUCKS」
【参照記事】*3 エンジー「Electric mobility: ENGIE Group launches the ENGIE Vianeo brand」
【参照記事】*4 欧州委員会「Reducing CO₂ emissions from heavy-duty vehicles」
【参照記事】*5 欧州自動車工業会「Fuel types of new vans: electric 5.3%, diesel 86.0% market share full-year 2022」
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