アルファベット(Google)のESG・サステナビリティの取り組みや将来性は?株価推移、配当情報も

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検索エンジンとして世界的に知名度のあるアルファベット(Google)は米国の超大手テクノロジー企業です。ESGやサステナビリティの機運が高まっていない2000年代から、脱炭素などに向けた取り組みにも積極的であり、2017年には同社が世界中で消費するエネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄っています。

この記事では、ESGやサステナビリティに対して先進的な取り組みを進めているアルファベットの特徴、取組内容、株価推移、配当情報、将来性について詳しくご紹介するので、米国株の取引やESG投資にご興味のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年7月31日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. アルファベット(Google)の特徴
  2. アルファベットのESG・サステナビリティの取り組み内容と将来性
    2-1 アルファベットのサステナビリティ
    2-2 環境の取り組み例
    2-3 社会の取り組み例
    2-4 ガバナンスの取り組み例
  3. アルファベットの業績・株価推移
  4. アルファベットの配当情報
  5. まとめ

1 アルファベット(Google)の特徴

アルファベットは、世界で最も使用されている検索エンジン「Google.com」を開発・運営するなどインターネット関連事業で高い知名度のある米国のテクノロジー企業です。2015年に組織再編を発表し、現在はGoogleの事業を傘下に収めた持株会社アルファベット(GOOG、GOOGL)がNASDAQ市場に上場する形となっています。

アルファベットの歴史は比較的新しく、会社の設立は1998年です。きっかけは1996年に創業者のラリー・ペイジ氏とサーゲイ・ブリン氏が、スタンフォード大学で研究の一環として検索アルゴリズムであるPageRankを考案し、その翌年1997年に最初のGoogle検索をリリースしたことから始まりました。

その後、アルファベットは約25年で世界的な大手テクノロジー企業としての地位を確立し、同じく米国を代表するアップル(Apple)やフェイスブック(Facebook 現メタ:Meta)、アマゾン(Amazon)の頭文字を組み合わせて「GAFA」と呼ばれるようになりました。

アルファベットは米国のカリフォルニア州に本社を構えており、2022年12月期の決算発表時点での従業員数は全世界で19万人を超える規模です。日本にも現地法人としてグーグル合同会社を設立していますが、合同会社のため株式の上場はありません。

アルファベットの主な事業収入は、検索エンジンやYouTubeなどから得られる広告収入です。2022年12月期の決算では広告収入が売上高の約77%を占めており、その内訳はGoogle検索などが約56%、YouTubeが約10%、Googleネットワーク関連が約11%です。決算発表で「Google other」と表記されているその他売上には、Google Pixelなどのハードウェア販売やデジタルコンテンツの配信料などが含まれ、売上構成比は約12%となっています。

近年力を入れているクラウドコンピューティングのGoogle Cloudは、2022年12月期の決算で売上高の約9%を占める成長事業となっており、2023年の第1四半期では初めて同事業単体での営業利益の黒字化も達成しています。

これらの事業のほかに、非上場の企業などへの投資やヘッジ利益による収入もありますが、売上高に占める割合は約1%に過ぎないのも特徴です。

(※参照:アルファベット「決算情報」)

2 アルファベットのESG・サステナビリティの取り組み内容と将来性

ここからはアルファベットの具体的なESG・サステナビリティに対する取り組みと、その将来性についてご紹介します。

2-1 アルファベットのサステナビリティ戦略

アルファベットは「持続可能性を地球規模で促進する」を使命とし、自社のプロダクト、他社とのパートナーシップ、また実践(プラクティス)を通して、サステナビリティを実現しようと取り組んでいます。こうした取り組みは、アルファベットの従業員や関係者、地域社会にも利益をもたらすため、投資家からは長期的な視点に立った将来性の高い取り組みとして期待されています。

2-2 環境の取り組み例

アルファベットは、Google検索やGoogleマップなど自社のプロダクトを通して、ユーザーが環境にやさしい選択を行えるよう支援しています。例えば、ルート検索を行う際、環境負荷の低い移動手段を提案するなどです。

また、自社のオペレーションでは、「Net-zero carbon(炭素排出量の実質ゼロ)」「Water stewardship(責任ある水資源管理)」「Circular economy(循環型経済)」のテーマで、以下の目標を掲げています。

具体的な目標
Net-zero carbon 1.  2030年までにScope 1、2、3の合計の炭素排出量を50%削減、
2. 2030年までに「24時間365日カーボンフリー」の実現
Water stewardship 1.  2030年までにオフィスとデータセンター全体で平均して消費する淡水量の120%を補充
Circular economy 1. グローバルデータセンター事業で廃棄物埋め立てゼロを実現、
2. 2025年までに全食品廃棄物を埋め立て処分から転換、
3. 2025年までにハードウェア製品全体で使用されるプラスチックの少なくとも50%をリサイクル素材・再生可能素材にする、
4. 2025年までにプロダクトの梱包を100%プラスチック・フリーにする、
5. 2022年までに、すべての最終組立消費者向けハードウェア製造拠点でUL 2799「廃棄物埋め立てゼロ」認証を取得する。

アルファベットは、創業から10年で事業運営上のカーボンニュートラルを実現し、さらにその次の10年でアルファベットが世界中で消費する事業用電力の100%を太陽光や風力などの再生可能エネルギーで賄うことを達成しています。

現在は、再生可能エネルギーの購入などによる暫定的な解決に留まらず、政府や国際機関などと連携し、カーボンフリーのエネルギーの生成技術や貯蓄技術を追求しながら、全世界の電力網で完全なゼロ排出を実現するための取り組みを実行中です。

またアルファベットは、全ての人が最小限の資源でテクノロジーを最大限に活用できることも持続可能な未来に向けて必要なことだと説明しており、データセンターでの設計・建設・運用面におけるエネルギーや素材、水の効率的利用や、販売するデバイスへのリサイクル素材の利用などサービスや製品を通じた取り組みにも積極的です。

このほか、アルファベットは廃棄物の削減も推進しており、2021年には膨大な資源を使用するデータセンターから埋立地に送られる廃棄物の量を78%削減することにも成功したと同社は発表しています。また、梱包などで使用しているプラスチックの削減にも取り組んでおり、将来的にはプラスチックの使用を廃止し、100%再生可能な製品パッケージにする取り組みも進行中です。

アルファベットは2020年8月に当時最大規模の57億5千万ドルのサステナビリティボンドを発行し、調達した資金はクリーンエナジーやグリーンビルディングといった地球環境や社会課題の解決に資するプロジェクトに充当しています。

(※参照:アルファベット「Google Sustainability」、「2023 Enviromental Report」)

2-3 社会の取り組み例

アルファベットのダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DE&I)の取り組みは、職場環境、プロダクト、そして社会といった文脈で行われています。職場環境では、国籍・性別・人種に関わらず全ての従業員が能力を発揮できるよう、マネージャー層、採用担当者、入社時の従業員向けにトレーニングが行われています。また、2025年までに黒人、ラテンアメリカ系、ネイティブアメリカン系のリーダー比率を30%増やす目標を掲げており、2022年の時点で達成しました。

プロダクトでの取り組み事例としては、Google検索やGoogleマップで場所検索をすると、車椅子で訪ねやすい場所やLGBTQフレンドリーな場所が表示されるなど、すべての人が安心して移動したり訪問したりすることのできる取り組みが始まっています。またスマートフォンOSであるアンドロイドには、言語の壁を取り除くためのリアルタイム翻訳機能や、AI技術を活用し多様な肌のトーンを自然に写すカメラ機能などが搭載されています。

また、社会に対する取り組みとして、アルファベットは10億ドルとも言われる助成金と膨大なボランティアのサポートによって、デジタルスキルの習得支援や教育格差の縮小などにも取り組んでいます。日本でも、全国各地で「Grow with Google」によるデジタルスキルのトレーニングを受講することが可能で、「Google for Education」の各種ツールは新型コロナの影響もありICT化を進める教育現場などで導入が加速しています。

(※参照:アルファベット「Google Belonging」、「Googleの取り組み」、「Google Diversity Annual Report 2023」)

2-4 ガバナンスの取り組み例

アルファベットはコンプライアンスの強化にも力を入れています。特に、個人データの収集、処理、保存、利用に関するルールや規制を定めるデータ保護法については世界各国でその内容が異なるため、第三者による定期的な監査などを受けながら法律を遵守し、個人データを使用するよう徹底しています。

また、掲載されている情報やコンテンツの内容によっては、世界各地の様々な法律に抵触する恐れもあるため、オンラインコンテンツの規制に関する議論の材料となるようオンラインコンテンツの削除リクエストに関するデータの開示なども行っています。

特に多いのが著作権問題によるコンテンツの削除依頼となっており、アルファベットによると70億を超えるURLが削除依頼の対象となっています(2023年7月31日現在)。アルファベットは著作権者や著作権者の代理で申し立てる団体から削除依頼を受けると慎重な審査を行った上で著作権を侵害しているコンテンツを削除します。

(※参照:アルファベット「コンプライアンス」、「著作権問題によるコンテンツの除外」)

3 アルファベットの業績・株価推移

以下はアルファベットの過去5期分の決算状況をまとめた表です。2018年12月期に136,819百万ドルだった売上高は、2022年12月期までの4年間で2倍超の増加となっています。

決算期 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
売上高 136,819 161,857 182,527 257,637 282,836
営業利益 27,524 34,231 41,224 78,714 74,842
当期純利益 30,736 34,343 40,269 76,033 59,972

(単位:百万ドル)

売上高のうち営業利益の占める営業利益率は、2018年12月期の約20%から2021年12月期に約30%と大きく上昇しており、この数年間で収益力を大きく強化しているのが特徴です。一方、2021年12月期~2022年12月期にかけては売上高約10%増、営業利益率約5%減と急成長の鈍化とも言える動きも見え始めており、今後は頭打ちとなっている広告事業の売上高推移や、その他の柱となる事業の成長などに注目しておきたい銘柄となっています。

続いて、アルファベットの株価推移です。以下は2019年以降のクラスC株式(GOOG)について四半期末時点での終値をまとめた表です。なお、2022年7月18日を権利落ち日として1株を20株にする株式分割を実施したため、比較しやすいよう分割後の株価に換算した金額を表記しています。

3月末 6月末 9月末 12月末
(期末)
2019年 58.67 54.05 60.95 66.85
2020年 58.14 70.68 73.48 87.59
2021年 103.43 125.32 133.27 144.68
2022年 139.65 109.37 96.15 88.73
2023年 104.00 120.97

(単位:ドル)

2019年3月末に58.67ドルだった株価は2021年11月18日に一時最高値となる150ドルを超える水準まで上昇し、その後、2022年12月末にかけて88.73ドルと4割近く下落しました。この株価下落はFRB(連邦準備理事会)が市場予想を上回る大幅な利上げを実施したことで相場全体に下落圧力がかかったことが大きな要因と考えられています。

2023年に入ると利上げペースが鈍化するとの予測が広がる中、市場環境が好転するとともに、6月末には120.97ドルの水準まで回復し、アルファベット株も再び上昇局面を迎えています。同社が同年4月25日に発表した第1四半期決算で売上高・利益ともに市場予想を上回ったことも好材料の一つです。

一方、市場では依然としてアルファベットの成長鈍化に対する懸念はくすぶっており、今後は広告収入の推移やGoogle Cloudの成長などに株価が左右される展開も予想されます。

(※参照:アルファベット「決算情報」)

4 アルファベットの配当情報

アルファベットは現在のところ株式配当を実施していません。米国では配当可能な利益をあげていても無配の企業があり、GAFAの中でもアマゾンやメタ(旧Facebook)は同様に配当を実施していません。これは利益を再投資することで企業価値の向上を優先させていることが目的で、これらの企業は株価の上昇や自社株買いなどの形で株主還元を行っています。

このような無配の銘柄はEPS(1株あたりの利益)が売買判断の大きな要素となりますが、アルファベットの各決算期におけるEPSの推移は以下の通り順調です。

決算期 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
EPS 2.21 2.47 2.95 5.69 4.59
希薄化EPS 2.18 2.45 2.93 5.61 4.56

(単位:ドル)
(2022年7月18日を権利落ち日として1株を20株にする株式分割を実施したため、比較しやすいよう分割後のEPSに換算し表記しています。)

(※参照:アルファベット「決算情報」)

5 まとめ

アルファベットは比較的歴史の浅い企業ではありますが、創業以来飛躍的な成長を遂げており、ここ数年間も驚異的な成長を続けている企業です。2017年に再生可能エネルギーの100%購入目標を達成しており、グリーンエネルギーへのさらなる投資や、世界中の電力網を脱炭素化するプロジェクトを着実に進めているため将来性も期待できます。

なお、株価はアルファベットの成長に合わせて大きく上昇していますが、柱である広告事業は頭打ちになるとの予測もあり懸念材料がない訳ではありません。今後は広告事業の売上推移や新たな事業として力を入れているGoogle Cloud等の成長によって株価が左右される可能性もあるため、慎重に検討してみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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