イーサリアムのアップデート「マージ」で注意すべきこととは

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今回は、イーサリアムマージについて、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. イーサリアムマージとは
  2. ユーザーが注意すべき事とは
  3. まとめ

イーサリアムマージが正式に9月10日〜9月20日の間で実施されることが決定されました。今回は暗号資産業界の歴史に新たなページを加えるであろう重要イベントでもあるイーサリアムマージについて解説していきます。

1.イーサリアムマージとは

1-1.イーサリアムマージの概要


イーサリアムマージとは、イーサリアムメインネットが現在のビーコンチェーンとマージされ、プルーフオブワーク(PoW)からプルーフオブステーク(PoS)へとコンセンサスアルゴリズムが移行する事を意味しています。

イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏は、マージをすることによるイーサリアムのアップグレードを複雑なプロセスや長い年月を掛けてようやく達成できる位置まで来たとしています。後程詳しく記述はしますが、マージが成功することによって環境負荷を軽減できる他、ブロックチェーンの進化にも繋がり暗号資産業界の発展に大きく貢献すると言われています。

一方、今回のマージで私たちユーザーにとってメリットも沢山あるものの、リスクもある耐め、ユーザーとして内容を理解した上で今後の投資などを行っていく必要があるでしょう。

1-2.イーサリアムとイーサリアム2.0の違い

イーサリアム2.0というと新たなイーサリアムが誕生するイメージがあるかもしれませんが、実際にはマージによってPoWのイーサリアムがPoSのイーサリアムへと移行することを「イーサリアム2.0」と呼びます。

PoWとは、世界中のマイナーが互いに競い合い、膨大な計算を実行します。計算処理が完了するごとに新しいデータがブロックチェーンに追加されるのですが、この計算処理を最初に完了したマイナーに報酬が与えられる仕組みとなっています。

この仕組みは課題も指摘されています。マイナーによる膨大な計算量には多くの高価なコンピューターが用いられる結果、大量の電力が消費されるため、あらゆる事業でサステナビリティが求められる昨今において環境への悪影響が懸念されているのです。

そこで注目されるのがPoSです。PoSでは、PoWのようにマイナーが計算を実施する必要がなく、ETHを沢山保有しているマイナーが多くのブロックを獲得することができるという仕組みになっています。計算能力に頼らずにトランザクションをチェックして承認するため、PoWと比較してエネルギー消費量は99.95%削減するとも言われています。

1-3.マージが起きると何が変わるのか

マージが起きると、イーサリアムがPoWからPoSへとコンセンサスアルゴリズムが変わりますが、一体何が変わるのか具体的に例も交えながら解説して行きます。

ポイントは大きく分けて3つあります。


1つ目はPoWからPoSへの移行は、イーサリアムの全体的なエネルギー消費を99.95%以上削減するという試算が、イーサリアム財団や開発者によって公表されています。エネルギー消費量が削減できることで、ブロックチェーンネットワークの維持に必要となる二酸化炭素排出量が大幅に削減されることから、環境負荷への懸念から暗号資産への投資を避けていた投資家たちの資金が流れ込んでくる可能性もあります。

その結果、ETHの価格が上昇すれば、イーサリアムブロックチェーン上に新たなプロジェクトが誕生するのではないかと期待されています。


2つ目のポイントはセキュリティが強化されることです。マージ後はPoSになるため、PoWで必要であったスペックの高い高価なコンピュータやコンピューターを設置する広いスペースを用意する必要がなく、トークンさえ保有していればネットワークに参加することができます。その結果、今よりも多くのネットワーク参加者によってネットワークが分散された形で構築されることになるため、これがセキュリティ強化へと繋がります。

ハッキングの可能性についても、ネットワーク上のトークンを50%以上保有しなければ実行ができません。イーサリアムのような時価総額の高いトークンの50%以上を保有するとなると相当の資金が必要となるため、こうした観点でも現時点ではイーサリアムがハッキングされる可能性は低いと考えられています。


3つ目はフォークが起きる可能性があることです。

フォークとは一つのブロックの後に複数のブロックができ、ブロックチェーンが分岐する事を指します。過去の事例として、ブロックサイズへの対応による意見の相違でビットコインからビットコインキャッシュ、ハッキング事件(The DAO事件)の対応を巡りイーサリアムとイーサリアムクラシックが分裂するという出来事があります。

今回もマージ後に、ETHPoWトークンとETHPoSトークンが誕生すると話題になっており、投資家は自身が利用する取引所やレンディング事業者などで新たなトークンがサポートされるかどうか注視している状況です。過去を振り返るとフォークによって分岐したトークンの両方に価値がつく結果となっているため、マージ前にイーサリアムを購入しておいて新たなトークンを付与してもらおうという考えが世の中に広まっているのです。

これに関しては、分岐して生まれたトークンはメインのトークンよりも価値が低くなっていることから本質的に不要であるとする識者もいたりと、さまざまな意見があるので様子を見ながら動くのが良いでしょう。

2.ユーザーが注意すべき事とは

2–1.具体的なリスク

マージにあたって、その他にもいくつかのリスクが指摘されています。

1つ目は、一部のDeFiプロトコルがPoS移行へ遅れをとっているため、ノード間のタイムススタンプのずれやテクニカル的な部分で問題が発生することが予想されています。仮にDeFiプロトコルで問題が発生してしまった場合、開発者が問題解決している間はブロック生成が行われないという可能性が考えられます。

2つ目は、取引所で保有しているイーサリアムがマージ時間前後で入出金出来なくなることが予想されます。

3つ目は、マージ後にイーサリアムがフォークすることに期待している投資家たちがイーサリアムを購入する動きが出てきており、仮にフォークされなかった場合にイーサリアムの売り圧が大きくなる事も考えられるでしょう。

2-2.ユーザーが取るべき行動

こうしたリスクに対して私たち投資家はどのような行動を取るべきでしょうか?

結論は「何もしない」ということが安全なのではないかと筆者は考えています。正直なところマージが起きてみないと分からない点が多くあるため、基本的にユーザーが取るべき行動は静観するということがベターでしょう。

フォークに期待して今のうちイーサリアムを購入するのも一つの手ですが、リスクがあることは理解しておきましょう。実際過去にフォークされたトークンに価値が付いてるのも事実であり、同じことが起きてもおかしくない為、自己責任で購入してみるのも面白いかもしれません。

3.まとめ

ここまでイーサリアムマージの概要からマージのリスク、ユーザーが取るべき行動を解説してきました。マージは暗号資産業界においても非常に重要なイベントなので仮想通貨市場では大きな注目を浴びています。今回のアップデートでどのように市場が変化し、また価格形成にどのような影響を与えるのか教材としてしっかりとチェックしておくことをおすすめします。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12