今回は、世界トップクラスの取引所FTXについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- FTXとは
1-1.FTXの概要
1-1.CEOであるサム・バンクマン・フリード氏 - FTXの事業と提携先
2-1.仮想通貨交換業
2-2.ゲーム事業
2-3.株式取引事業
2-4.FTXの提携先 - 将来目指すべきところ
3-1.金融サービスのワンストップショップ
3-2.世界的な決済プロバイダー - まとめ
近年、暗号資産(仮想通貨)が急速に普及していることに伴って、世界中で多くの仮想通貨取引所がサービスの提供をスタートしています。
そんな中、世界トップクラスの取引所であると言われているのが、サム・バンクマン・フリード氏率いる「FTX」です。FTXでは幅広いユーザー層に対して仮想通貨関連のサービスを提供しており、22年6月2日に「FTX Japan」のローンチが発表されたことを受けて、日本国内においても本格的な事業展開をスタートしました。
そこで今回は、FTXという仮想通貨取引所の事業や提携先、将来目指すべきところについて、解説していきます。
①FTXとは
1-1.FTXの概要
FTXとは、19年5月に香港を拠点として設立された、世界最大規模を誇る大手仮想通貨取引所で、その後の21年9月に本社をバハマへと移転しており、現在はバハマを拠点とした事業展開を行っています。FTXでは金融商品から派生した商品である「デリバティブ取引」を主に提供しており、現物取引だけでなく、先物取引や株式トークンといったほかの取引所ではあまり見かけない珍しい商品を取り扱っていることも魅力の一つとなっています。
また前述の通り、22年6月2日にはFTXグローバルの日本法人である「FTX Japan」がローンチされ、日本国内に向けた本格的なサービス展開が開始されました。FTXの日本市場への参入によって、日本国内での「スポット取引」や「パーペチュアル取引」などの新しいプロダクト提供が可能になるとしており、FTX Japanではこれらのサービスを介して、日本の「デジタルアセットエコシステム」に対して新たな革命を起こすと説明しています。
1-2.CEOであるサム・バンクマン・フリード氏
FTXを率いているのは、理系の世界最高峰大学として名高い「MIT(マサチューセッツ工科大学)」出身のCEOサム・バンクマン・フリード氏です。
FTXの創設者であり、仮想通貨業界において圧倒的な知名度を誇るサム氏は、アメリカの著名な長者番付として知られる「フォーブス400」に名を連ね、若干30歳という若さながら、その総資産は210億ドル(約2兆7000億円)を超えていることが明らかになっています。
サム氏は世界大手のプロップファーム「ジェーンストリート」においてETF(上場投資信託)トレーダーとして経験を積んだ後、17年9月にトレーディング会社である「アラメダ・リサーチ」を設立、その後の19年5月にFTXを設立した、業界において最も著名な人物の一人となっています。
②FTXの事業と提携先
2-1.仮想通貨交換業
FTXは主な事業として仮想通貨取引所を展開しています。FTXではデリバティブ取引で有名となっており、現物取引以外にも多岐にわたる取引を行うことが可能です。FTXの22年における日間平均取引量は、120億ドル(約1.6兆円)相当に達することが報告されており、仮想通貨デリバティブ取引所として世界トップクラスとなっています。
また、取引所の独自トークンとして「FTTトークン」を発行しており、ホルダーはトークンの保有量に応じて最大で60%もの売買手数料の割引や、「ソラナ(SOL)」ブロックチェーン上において展開されている「分散型取引所(DEX)」のトークン「セラム(SRM)」を毎週500枚につき2枚ゲットできるなど、さまざまな優遇を受けることが可能です。
2-2.ゲーム事業
22年2月21日、FTXのアメリカ法人である「FTX US」がゲーム事業をスタートすることを明らかにしました。「FTX Gaming」と名付けられたこの事業部はエイミー・ウー氏がトップを務めており、既存のゲーム関連会社がブロックチェーンやNFTテクノロジーを駆使したゲーム開発を行うためのサポートを行っていくとしています。
2-3.株式取引事業
22年7月29日、FTX USが「FTX Stocks」という株式取引プラットフォームをアメリカの全州において提供スタートしたことを明らかにしました。
このニュースはFTX USのCEOであるブレット・ハリソン氏のツイートによって発表され、現段階ではアメリカのみにおけるサービス提供となっているということです。
ユーザーは今後、数百にのぼる株式およびETF(上場投資信託)をオンラインまたはFTX.US Proのモバイルアプリで取引可能になるということで、業界からは大きな期待が寄せられています。
2-4.FTXの提携先
22年7月時点での、FTXの主な提携先には下記のような企業があります。
①Circle(サークル)
Circle(サークル)はブロックチェーンの決済会社で、米ドルとペッグするステーブルコイン「USDC」の発行を行っています。
②TrustToken(トラストトークン)
TrustToken(トラストトークン)はセキュリティトークンの発行が可能なプラットフォームを提供しているほか、各国の法定通貨とペッグするステーブルコインを発行しており、中でも米ドルと連動する「TrueUSD(TUSD)」が有名です。
③Paxos(パクソス)
Paxos(パクソス)は仮想通貨のインフラ企業で、米ドルのステーブルコインである「Pax Dollar(USDP)」の発行を行っています。
④Fenwick&West(フェンウィック&ウェスト)
Fenwick&West(フェンウィック&ウェスト)はシリコンバレーやサンフランシスコ、ニューヨークなどにオフィスを構える大規模な法律事務所で、新興企業から大規模な公共企業まで、数々のクライアントを抱えています。
⑤Race Capital(レースキャピタル)
Race Capital(レースキャピタル)は、FTXをはじめとする数々の企業に投資を行っている投資会社です。
⑥Galois Capital(ガロアキャピタル)
Galois Capital(ガロアキャピタル)は仮想通貨のヘッジファンドで、市場を通さず行う「OTC取引」やマーケットメイクを専門としています。
③将来目指すべきところ
3-1.金融サービスのワンストップショップ
FTXのアメリカ法人である「FTX.US」のCEOブレット・ハリソン氏はFTXの目標について、単一のアプリケーションで包括的な金融サービスを提供することができる「ワンストップショップ」になることを挙げています。
FTXではほかの取引所では扱いが少ない、多岐にわたる金融商品の提供を行っていますが、これもワンストップショップを目指すという目標からきているものだと語っています。
実際、今回新たに株式取引事業も開始されたということで、今後はFTXのアプリケーションだけであらゆる金融サービスにアクセスできる未来が来ることが予想されています。
3-2.世界的な決済プロバイダー
FTXは自らを単なる取引所ではなく「世界的な決済プロバイダー」としており、米ドル(USD)や日本円(JPY)以外に、今後は東南アジアやアフリカ、欧州などといったあらゆる地域の地元通貨にも対応していくとしています。
なお、22年の弱気相場を揶揄して「仮想通貨の冬の時代」とも言われていますが、これに関してFTXは価格変動のサイクルであると認識しており、長期的な価値を理解して、投資および発展を続けていくとしています。
実際に様々な企業を救済したり、資本出資を行う等で事業を拡大する動きが足元で続いている状況です。
④まとめ
FTXは世界で最も著名な取引所の一つで、ワンストップショップを目指すという目標のもと、証拠金取引やデリバティブのほか、NFTや株式の取引といった幅広い商品に対応している利便性の高いサービス提供を行っています。
22年6月にはFTX Japanをローンチし、国内でも本格的な事業展開を開始したため、今後どのようなサービスが日本で展開されるのか注目していきましょう。
中島 翔
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