【特集コラム】メタバースはどうあるべきか?

今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. Facebookがメタバース事業へ本格進出
  2. 大統領選挙とWeb2.0の課題
  3. メタバースは公共財としてあるべき

NFTの流行と共にブロックチェーン業界ではメタバースが注目されていますが、業界外の様々な企業がメタバース事業への進出されることが発表がされ、ますますメタバースへの注目が高まっている状況です。

Facebookがメタバース事業へ本格進出

様々な企業がメタバース事情へ進出するもしくは将来的に取り組むことを表明する中、私たちに最も大きなインパクトがあった企業は元Facebook社です。10月末に、元Facebook社はメタバース事業へ本格的に参入することを表明すると同時に、社名を「Meta」に変更をしました。Meta社(元Facebook社)は時価総額94兆円(2021年11月現在)を誇り、世界的に認知を得ている企業が社名を変更したということ自体インパクトが大きく、多くの一般メディアにも取り上げられました。

この社名変更の発表の同日に開かれた開発者会議でマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、事業がSNSに加えて画像共有アプリや「メタバース」と呼ぶ仮想空間の構築に広がっていると指摘した上で、「当社の事業のすべてを包含する社名が必要になっている」と述べました。新たな社名のもと、メタバースの構築に注力していき、VRや拡張現実(AR)などの技術を組み合わせて仮想空間で遊んだり交流したりできる基盤を作り、関連サービスを拡充したい考えであることが読み取れます。尚、SNSプラットフォームであるFacebookはサービスの名称として利用を継続していくとのことです。

メタバースは端的に言うと「仮想空間」と呼ばれ、VR端末などを利用して楽しむというものです。また、デジタル内でのアイテムを表現や取引の手段としてNFTや暗号資産(仮想通貨)との親和性が高いとされています。

私の中では、メタバースの直感的なイメージとしては、細田守監督の作品『サマーウォーズ』における「OZ」、冨樫義博氏作の『HUNTER×HUNTER』における「グリード・アイランド」、クリストファー・ノーラン監督の『インセプション』の世界観が近いと考えています。


既存のゲームにおいて、任天堂社の『どうぶつの森』やEpic Games社の『Fortnite』などのゲームはメタバースと相性が良いと考えられます。プレイヤーが画面を見ながらプレイするよりも、メタバース空間上でプレイをする方がゲームへの没入感が増すのでより楽しむことができるのではないかと考えます。

大統領選挙とWeb2.0の課題


ここで話が変わりますが、2016年アメリカ大統領選挙の話をしたいと思います。この時は、民主党ヒラリー・クリントン氏と共和党ドナルド・トランプ氏が候補者として大統領選挙が行われ、トランプ氏が当選して第45代大統領になりました。しかし、その選挙の背景で行われていたことが議論を呼びました。

データ分析企業であるケンブリッジ・アナリティカ社(CA社)が個人データを使用して、2016年のアメリカ大統領選挙の国民投票の結果に影響を及ぼし、トランプ氏の当選に繋がったというのです。この分析に使用されたデータを収集していたのは、Meta社(元Facebook社)です。

2014年に、Facebook上で性格タイプを診断するクイズがユーザーに勧められました。このクイズは実際にクイズに答えたユーザーのデータだけでなく、回答したユーザーの友達に関するデータも収集するよう設計されおり、収集されたデータはケンブリッジ・アナリティカ社に売却され、人々の心理学的な輪郭を描き出すとともに、彼らに親トランプ的な素材を送り届けるのに利用されたといいます。

この巨大SNSプラットフォーマーによるデータの収集と分析は、Web2.0における問題点とされています。

メタバースは公共財としてあるべき

メタバースの話に戻りますが、現時点で私たちのイメージではゲームやライブなどのエンタメとしてメタバースが活用されることを考えています。

しかし、今後数年後や数十年後にメタバースはエンタメとしての領域を超えて社会のインフラとして活用される可能性もあります。今、私たちが当たり前のようにスマートフォンを持ち歩いたり、コミュニケーション手段としてLINEやZoomを使用したりするなど私たちの生活には欠かせないようにメタバースもエンタメを超える可能性があります。

社会のインフラとなったメタバースがある特定の企業によって管理されているのであれば、私たちの普段の行動による個人データが収集・分析され、一方的に利用されてしまい、2016年アメリカ大統領選挙のときのように私たちの意思決定に影響を及ぼしたり、フィルターバブルによって分断されたりしてしまう可能性があります。

ブロックチェーンを活用してメタバースを構築したとしても、そのチェーンが企業によって管理されるプライベートなものであると結局は自社のサーバーで管理するのと変わりありません。

このような懸念があることから、メタバースは特定の企業によって構築・管理されるようなものではなくて、「公共財(コモンズ)」としてあるべきであると思います。そのためにも、メタバースはパブリックブロックチェーン上に作られ、分散的に管理されることが必要不可欠であると考えます。メタバースは誰かのものではなく、公共に開かれたものであるべきです。メタバースをエンタメとしてのみの文脈で捉えるのか、社会のインフラとして捉えるのかで待ち受けている未来は大きく変わることになるかもしれません。メタバースはアプローチの仕方次第では、Web2.0の問題を加速することにも、Web3.0の世界観を体現する場になることも考えられます。

【参照記事】ケンブリッジ・アナリティカ社めぐる疑惑 これまでの経緯

The following two tabs change content below.
Shinya Mori 守 慎哉

Shinya Mori 守 慎哉

Fracton Ventures株式会社リサーチャー。DAO分野に強みを持ち、コモンズ・公共財におけるガバナンスのあり方などのリサーチを担当。その他CoinPost×あたらしい経済で立ち上げた「CONNECTV」の共同編集長をも務める。