NFTにおけるデリバティブ取引「NFT無期限先物」とは?

※ このページには広告・PRが含まれています

今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の太田航志 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. NFT無期限先物の萌芽
  2. NFT無期限先物の概要
  3. まとめ

NFTの無期限先物とは、一般的なデリバティブ取引とは異なり、譲渡日や決済日なしにユーザーがNFTプロジェクトのポジションを保有することができるデリバティブ取引の一種です。NFTの分野においてデリバティブは、未だ発展途上というべき段階ですが、柔軟な売買機会の確保、ヘッジ手段、金融市場の歴史といった点を踏まえれば、今後さらなる進展が予想されます。

本記事はNFTデリバティブの分野において、さまざまなリサーチや実際にプロジェクトが進行しているフロア価格無期限先物について解説し、その概要や具体的な仕組み等を具体的なプロジェクトを例としてその理解を深めていきたいと思います。

NFT無期限先物の萌芽

2021年は、俗に言う「NFTサマー」という状況で、数多くのNFTプロジェクトが登場し、流動性やヘッジなどという言葉は一切聞かれないほど、活発にNFTの取引が行われてきました。しかしながら2022年はマクロ経済、暗号資産市場全体の低迷を受けてNFT市場も急速な冷え込みをみせています。現在NFTの販売額はピーク時の10分の1近くにまで落ち込んでいるほか、ブルーチップNFTといわれるようなBAYC、Azuki、CryptoPunksであっても大幅な価格の下落を経験しています。

このような状況下においてNFTホルダーができることはほとんどなく、NFTを売却しようにも買い手が現れないといったケースも散見されます。またそもそも、購入も売却もある程度滞りになく執行できる、もしくはできることが予想されるNFTは、少数で、一般ユーザー目線からは高価な傾向にあります。

具体的な購入障壁の一例として、FT(Fungible Token:代替性トークン)であれば10ETHを1ヶ月に1ETHずつ購入し、10ヶ月続けるといったことも容易ですが、10ETHの価値がついたNFTの場合、基本的にその場で10ETH分をそのまま購入しなければなりません。こうした問題は、NFT無期限先物がユースケースとして台頭しうる理由を十二分に説明します。

NFT無期限先物はNFTの売買機会やヘッジ手段の確保といった問題を解決すると同時に、ユーザーの参入コストを下げることで、より多くの人がNFTへ投資をする機会をもたらします。このことは従来の金融市場、暗号資産市場において、デリバティブが圧倒的な取引高を誇ることから推察されます。

NFT無期限先物の概要

出典:nftperp

ここからは具体的にNFT無期限先物についてnftperpを例としてその仕組みや進展などを概観していきたいと思います。

nftperpとは、無期限先物を用いてBAYC、CryptoPunksといったブルーチップNFTプロジェクトをロングまたはショートすることができる分散型取引所であり、nftperpのユーザーは、ポジションを建てるNFT無期限先物について証拠金を預けます。

そして重要となるNFT無期限先物の価格に関してはオンチェーンオラクルを活用しながらNFTコレクションのフロア価格をリアルタイムで追跡します。実際にnftperpでは業界最大手の分散型オラクルであるChainlinkと、特にNFT価格の提供を中心とするUpshotを利用して、NFT無期限先物における価格の即時性と正確性を高め、ハッキング等のリスクからプロットフォームを守るよう機能します。取引が進行する中で発生する損益については、nftperpの場合にはvAMM(仮想自動マーケットメーカー)を用いてユーザーの利益と損失を計算し、清算を執行します。

NFT分野のデリバティブ、フロア価格の無期限先物は非常に新しい概念、技術でありますが、プロトコルとして行うことは従来の金融市場並びに暗号資産における無期限先物取引と相違ないため、特段難しく考える必要はありません。ユーザーは非常に少額からでも例えばブルーチップNFTのような高額なプロジェクトについてポジションを建てることができるほか、現物のNFTを保持することなしにNFTにアクセスすることができるため、特にトレーダーにとってこれまで大きな懸念点となってきた流動性のリスクに関しても大幅に軽減することができます。また上記でも言及してきた通り、下落相場においても保有を続けたいNFTに対して、そのショートポジションを構築することはヘッジ手段としての機能が期待されます。

ここで、トレードに慣れているAさんとNFT取引初心者のBさんの具体例をもとに、その理解をより確かなものにしていきます。今回の具体例においてそのレアリティや個々のNFTの特異性などは考慮に入れません。

現在、AさんはBAYCを保有していますが、マクロ経済や暗号資産市場の市況感を踏まえて、今後の価格下落リスクをヘッジしたいと考えています。しかしながら、BAYC自体は売却したくはありません。現状のBAYCのフロア価格が70ETHであると仮定し、Aさんはその下落リスクを踏まえて、NFTの無期限先物を利用して70ETHのショートポジションを建てました。そしてAさんの予想通り、BAYC のフロア価格が 60ETHに下がった場合、AさんのBAYCも、60ETHの価値になってしまいます。しかし、Aさんには、今回の下落に備えて構築したショートポジションがあり、10ETHの利益を得ることが出来ます。これにAさんは見事にリスクヘッジを成功させました。

一方、BさんはWeb3の初学者であり、NFTを購入したいと考えています。しかしながらマイナーなNFTプロジェクトに手を出すのには恐怖があるため、どうにかしてAzukiやMoonBirdsのようなブルーチップNFTにアクセスしたいと考えています。そこでBさんはNFT無期限先物を利用することでAzukiの少額ロングポジションを建てることが出来ました。

まとめ

ここまではNFTの無期限先物の仕組みなどについて概観してきました。上記の内容を踏まえるとNFTにおける重要な課題点について一定の解決策を示すことが出来ているように感じますが、問題点が存在しない訳ではありません。というのもNFT価格というはETHやBTCといったFTと比較して眉唾、不確かなものです。これはNFTの流動性がFTと比較して非常に低く、購入者の極めて主観的な評価がその価格に大きな影響を与えることに起因しています。あまりにボラティリティ高い場合や示される価格が十分な信用に足らない場合、清算プロセスが機能しないことが予想されます。このような状況下では、デリバティブのような高度な金融商品は構築されないでしょう。

最近ではSudoswapのようなAMM型マーケットプレイスの登場により、特にフロア付近のNFT価格はより洗練化されているとも言えなくありません。しかしながら流動性を踏まえるとまだまだ不十分と言わざるをえません。ただ総じてNFT無期限先物がNFTの売買機会やヘッジ手段の確保といった課題を解決すると同時に、ユーザーの参入障壁を押し下げ、より多くの人がNFTへ投資をする機会をもたらすと考えます。NFTデリバティブ、NFT無期限先物の分野は、今後非常に期待される分野といっても過言ではないでしょう。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

The following two tabs change content below.

Fracton Ventures株式会社

当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。