今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の宮林悠成 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。
目次
- Akiya DAOの概要
- 日本の空き家の現状
- Akiya DAOの特徴
3-1. 創業者
3-2. ゴールと理念
3-3. パーマカルチャー
3-4. 分散型コミューン - Akiya DAOの事業モデル
- Akiya DAOのロードマップ
- まとめ
Akiya DAOの概要
「Akiya DAO」は日本で古民家を購入・改装し、建築家、クリエイターの拠点にすることを目的としたエコビレッジのプロジェクトです。
現在、日本は急速な高齢化と若者の都市部への集中により、全国的な空き家問題が深刻化しています。国土交通省によると、2030年には全住宅の3分の1が空き家になると推定されており、このような問題を解決するために、空き家を購入し、リノベーションする新たな取り組みがスタートしました。言い換えると空き家を活用した地方創生プロジェクトとも言えるでしょう。
なお、エコビレッジとは住民がお互いに支え合い、持続可能性を目標としたまちづくりや社会づくりのコンセプト、またそのコミュニティのことです。
日本の空き家の現状
最もよく見られる空き家の発生原因は、自宅所有者の高齢者が老人ホームや子供の家に移住することです。将来的には、団塊の世代を含む高齢者人口が急増することが見込まれており、これに伴って空き家の数も急速に増加することが予想されます。また、駅から離れた場所など利便性が低い住宅地では特に、空き家が大量に出現すると思われます。
住宅・土地統計調査(総務省)によると、空き家の総数は、この20年で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加しており国土交通省によると、2030年には全住宅の3分の1が空き家になると推定されています。
Akiya DAOの特徴
創業者
AkiyaDAOの共同創設者はMichelle Huang氏とWilliam Skinner氏で両者とも多様な経験とスキルを持ち合わせています。Michelle Huang氏は高校、大学で医療と財政学を学び、卒業後ゴールドマンサックスの投資部門に勤務しました。退職後、サンフランシスコでヘルスケア分野で起業後に、デジタルアーティストとして活動開始。William Skinner氏は大学1年生の時にカーオーディオ部品製造会社を起業し、2019年に売却。また、暗号通貨に8年間関わっておりプライベート・エクイティ・ファンドで暗号通貨の投資部門や調査部門に関わってきた経歴を持っています。
ゴールと理念
AkiyaDAOの目指すコミュニティは、空き家を購入しリノベーションしてシェアハウスにし、再生可能エネルギーや有機農業を活用することです。
まず最初の一軒目では、開発者やクリエーターが住む予定となっています。空き家は白紙のキャンバスであり、何もない空間を、いかにしてクリエイターのための活気と繁栄の場とするか、コミュニティが実験し、集団で定義し、形成する「タブラ・ラサ」とするとMichelle Huang氏は述べています。タブラ・ラサはラテン語で何も刻まれていない石板もしくは白紙のことで、人々の経験と交流によって形成される新しい活動によってキャンバスを表現していくことが期待されています。
そしてAkiya DAOのゴールは、新しい実験やイニシアチブのためのスペースを作ることであり、そのスペースは住民によって共同管理されます。Web3.0の非中央集権でボーダレスな性質からAkiya DAOには世界中から人々が集まることが可能で、参加者は多様で世界の様々な人々と交流することができます。こうした多様性により、多くの異なる視点とバックグラウンド、スキルセットがAkiya DAOに持ち込まれAkiya DAO全体を豊かにし、その結果としてセレンディピティが期待されています。
パーマカルチャー
Akiya DAOのコミュニティは、人間の創造性を育み、アートインスタレーションを開催し、パーマカルチャーの実験を促進するように設計されています。
パーマカルチャーとは永続可能な循環型の農業をもとに、人と自然がともに豊かになるような関係性を築いていくためのデザイン手法のことです。つまり空き家だけでなく、空き家の周辺環境である自然との調和やコラボレーションとの新しい繋がりが生まれます。
分散型コミューン
Akiya DAOの面白い点は、より多くの空き家が参加したときにそれぞれの空き家の実践方法を共有することができるところです。Michelle Huang氏はこれを分散型コミューンと表現しています。
また、AkiyaDAOでは様々なタイミングで人々が参加し、グループが形成されるごとに新しい事例が生まれるように設計がされています。一方、このように人々が定期的に入れ替わるとグループを維持するために必要な結びつきを形成するのは難しくなると考えられます。この問題の解決策として3ヶ月ごとなどのサイクルで回し、個々のコミュニティがより強固になり、比較的短い期間に区切ることにより、自分だけでなくコミュニティにも貢献すべきだという気持ちを生み出すように仕組み化しています。
Akiya DAOの事業モデル
事業モデルとして、家を購入し住むための会員証をNFTにするモデルが考えられています。会員証NFTは、その家が人気を博すにつれて価値が上昇し、取引されることで二次販売の権利やロイヤリティの一部を獲得することが可能です。
家の改装資金や新たな住宅購入資金の調達方法として、まずAkiya DAOが一軒目の購入に投資を行い、NFTの会員証を発行します。その価値が上昇するにつれて取引が活発化し、ロイヤリティ収入も増えることが期待できます。そして、需要が増えるにつれてNFTの価格も上昇します。供給面では、家の規模を拡大したり新たな家を購入したりすることが可能で、これにより供給と需要のバランスが保たれます。
このビジネスモデルの魅力は、投機目的でNFTを購入し売却する人々が増えても、供給が増えることで価格が下がり、NFTが供給を調整する役割を果たすため、価格の乱高下が抑制される点にあります。この仕組みを通じて、金銭的なインセンティブだけでなく、共同運営をスムーズに進めることが期待されています。
Akiya DAOのロードマップ
Akiya DAOはすでに自治体関係者と会い、住宅を見学し、最初の家を決定しています。住居の準備が整った後は、世界中からコミュニティメンバーを集め、月1回の集会を開催し、建設、創造、再生に取り組んでいくとしています。さらに、次の3年間で、日本全国の5つの物件を購入しリノベーションし、各物件は、それぞれ異なるテーマや活動に焦点を当てる予定です。
まとめ
Akiya DAOの事例はユニークであり、日本の空き家問題に独自の目線での解決方法を提示しています。特にコミュニティ形成に置いてWeb3.0のカルチャーを取り入れており、一般的な地域活性化とは一線を画すアプローチであると言えるでしょう。
しかし、高齢者のようなデジタルネイディブではない世代がこの新しいコミュニティ形成に参加できないのではないかという懸念も残ります。この問題の解決策としては、地域に貢献する取り組みや、地域に寄り添った活動を行い高齢者や地域の人々とコミュニケーションをとることが重要で、こうした取り組みにより地域に寄り添ったコミュニティとなっていくことが求められるのではないでしょうか。Akiya DAOの今後の動きに注目していきたいと思います。
【公式サイト】Akiya DAO
【参照URL】空き家問題をDAOで解決!?AkiyaDAO | Joi Ito’s Podcast
【参照URL】空き家政策の現状と課題及び検討の方向性
【参照記事】AKIYA マニフェスト
【参照記事】パーマカルチャーとは? 暮らしを見つめ、森をつくっていく持続可能な社会システム
Fracton Ventures株式会社
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