新興NFTマーケットプレイスの台頭!ロイヤリティの行く末

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の太田航志 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. NFTロイヤリティ戦争の発端
  2. OpenSea一強時代に翳り
  3. NFTロイヤリティの行く末
  4. まとめ

本記事では、これまでNFT領域において最大のテーマの一つであるNFTロイヤリティについて、業界を牽引するNFTマーケットプレイスであるOpenSeaと新興のBlurの対応を例に、その理解を深めます。

これまでNFTロイヤリティの是非については、NFTマーケットプレイス側やクリエーター側の視点を含めて、さまざまな議論がなされてきました。もちろん、NFTのクリエイターに対して、適切な還元がもたらされることはプロジェクトの持続性や盛り上げを支える重要な原動力といえるでしょう。しかし、現実問題として最近では多くのNFTマーケットプレイスで、そのロイヤリティがゼロもしくは、ユーザーの側から選択できる設定が増えています。したがってこれまで謳われてきたクリエーターへの還元ということが、必ずしも実現するとは言い難い状況です。

今回はそのNFTロイヤリティについて時系列も踏まえながら、その発端やプロセス、影響ついても解説を加えます。

NFTロイヤリティ戦争の発端

NFTロイヤリティとは、NFT取引時にその購入価格の一部が、販売したクリエイターへ二次流通の手数料として還元され続ける仕組みのことを指しています。

基本的にNFTのロイヤリティは、NFTマーケットプレイスでの売買を通じて、徴収される仕組みとなっており、必ずしもロイヤリティが設定されるわけではありません。これは業界最大手のNFTマーケットプレイスであるOpenSeaが、ある種のナラティブとして、クリエーターへの還元を標榜しており、その独占的な地位とも相まって、これまでNFTロイヤリティはデファクトスタンダートと認識されてきました。

しかしながら、ロイヤリティフリーのAMM型NFTマーケットプレイスであるSudoSwapの登場などを皮切りに、ロイヤリティの設定がない、もしくは選択式のNFTマーケットプレイスが次々と誕生していくことになります。実際に大手NFTマーケットプレイスのX2Y2やMagic Eden、Blurなどでは、ロイヤリティのスキップが可能な場合もあります。

そして本記事でも取り扱うBlurは、標準でロイヤリティを徴収しない方針をとっています。Blurは、2022年に開始したNFTマーケットプレイスで、アグリゲーター機能も併せて備えています。Blurは、OpenSeaと比較してトレーダーフレンドリーなUI/UXが特徴で、独自トークンの$BLUEやAirdropを活用したユーザー獲得により、OpenSeaキラーの筆頭に躍り出ています。実際昨年には、24時間あたりのNFT取引高でOpenSeaを上回るなど、目覚ましい成長を遂げています。

OpenSea一強時代に翳り


新興のNFTマーケットプレイスに押される形で取引量が減少したOpenSeaですが、新たな対応策を講じました。これはロイヤリティを導入しない特定のマーケットプレイスをブラックリストに登録するという措置で、Operator Filtererというコントラクトを公開しました。具体的に、今後販売するコレクションについては、このコントラクトが含まれないとOpenSeaでのロイヤリティが発生しないというものです。

この発表を境に先程のX2Y2やBlurなどは、一転してロイヤリティを徴収することを明らかにしました。確かにOpenSeaは、NFTマーケットプレイスにおいてその圧倒的なシェアを失いつつありますが、依然としてその力は健在で、多くのNFTマーケットプレイスがOpenSeaの方針に追従することとなったのです。

しかしながら追従する姿勢を見せたものの、Blurは諦めませんでした。Blurは先のブラックリスト問題を解決するため、昨年にOpenSeaが開発したSeaportと呼ばれるNFTの基盤プロトコル上で、Blurのサービスを再構築したのです。このことがどのような点で画期的であったかというと、Seaportは、OpenSeaも利用する基盤プロトコルです。したがってOpenSea側がブラックリストに追加しようにも、そのことはOpenSea自身が利用するプロトコルをブロックすることになってしまいす。BlurがSeaportを利用して、そのマーケットプレイスの一部を構築したことで、先のブロックリストに入っていたコレクションもロイヤリティを受け取ることができます。

NFTロイヤリティの行く末


その後OpenSeaは、2月18日にNFTロイヤリティに関する3つの方針を示しました。1点目は、期間限定でNFTの取引手数料をこれまでの2.5%から0%に引き下げるものです。2点目は、一部のNFTコレクションでクリエイターフィー、いわゆるロイヤリティの料率が選択式となりました。そして3点目は、これまで行われてきた他のNFTマーケットプレイスのブロックを解除するというものです。

OpenSea、Blurともユーザー側は、二次流通時に0.5%以上のロイヤリティを設定して出品することができます。しかしながらロイヤリティを高く設定することは、自らの利益を削ぐことになるため、特にBlurでは多くのコレクションが最低料率の0.5%でリストされています。また、そもそもX2Y2がロイヤリティを選択式にした際も、最終的に8割以上のユーザーはロイヤリティを支払いませんでした。

もちろん一概に取引手数料やロイヤリティが発生しないことが悪いとは言えません。というのもNFTは元来流動性が低く、種々の手数料によって必ずしも取引の機会が十分ではありませんでした。しかしながらBlurの登場を筆頭にそれが限りなくゼロに近づいたことは、いわゆるNFTのトレーダーにとっては非常に魅力的であり、NFTの流動性を高めたことは否定できません。

一方この流れが一般的になれば、これまで手に入った二次流通の手数料がクリエイターに支払われないため、彼ら彼女らにその負担が大きくのしかかることも予想されます。すると結果的に負担分がNFTミント価格に転嫁され、エンドユーザーにもマイナスの影響を及ぼす可能性があるのです。というのもNFTクリエーターも、どこかのポイントで失った収益を取り戻す必要があるからです。

加えてこれはロイヤリティに限った話ではありませんが、取引手数料もゼロに近づくと、NFTコレクションの運営側によるスキャム工作のリスクも高まります。運営側がコレクションの値段を不当に吊り上げるため、自作自演による自己売買などもより容易になるからです。したがってロイヤリティを減少させることは、クリエイターへの影響に留まらないといえます。OpenSeaがロイヤリティを維持しようとすることは、ユーザーにとっても必ずしも不合理なことではない訳です。しかしながら今回の一連の対応はOpenSeaの詰めが甘かったことも否定できません。

まとめ

本記事では、OpenSeaとBlurという具体的なプロジェクトを例にNFTロイヤリティ戦争について解説しました。

NFTロイヤリティに関する議論は計らずして、良い悪い論争に収束しがちです。ただ重要なことは、それぞれがその立場から意見を展開することで、新たな論点が生まれたり、ステークホルダーのバランスを取りながら、お互いが歩み寄るというそのプロセスにあります。

現状NFT業界において、ロイヤリティの仕組みを維持することは、なかなか難しいといえますが、一方、今後どのような方針が示されるかは引き続き注意が必要です。NFT業界全体で議論が進み、その業界全体がプラスの方向に向かうことが望まれます。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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Fracton Ventures株式会社

当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。