2023年2月14日~15日に、日本で第7回目を迎える「第7回サステナブル・ブランド国際会議 東京・丸の内」が開催されました。エリア型カンファレンスの形が取られた同会議には、サステナビリティのリーダーたちが集まり、多様なテーマで情報発信がなされました。
本記事でレポートするセッションは、「本業でめざすウェルビーイングな社会 / 次世代企業人がウェルビーイングを考える」です。同セクションでは「ウェルビーイングとSDGsの関係」をテーマに、次世代企業人たちが議論しました。
※本記事は2023年2月末時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 登壇メンバー
- 個人と家族・コミュニティ・地球の分野に注力
- 正しい価値観を持つことで、企業とウェルビーイングが繋がる
- ウェルビーイングを考える際には生きがいを考える
- 日本流サステイナブルウェルビーイングを実感できた
- まとめ
1.登壇メンバー
※以下画像は全て第7回サステナブル・ブランド国際会議 東京・丸の内「本業でめざすウェルビーイングな社会 / 次世代企業人がウェルビーイングを考える」より
【ファシリテーター】
株式会社朝日エル 会長 岡山 慶子氏
【パネリスト】
ネスレ日本株式会社 執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部 コーポレートアフェアーズ統括部長 嘉納 未來氏
株式会社MTG 社長室 SDGs推進部 部長 亀岡 徹氏
東京工科大学 名誉教授 奥 正廣氏
2.個人と家族・コミュニティ・地球の分野に注力
最初にパネリストのネスレ日本株式会社 嘉納氏よりネスレグループ(以下、ネスレ)が考えるウェルビーイングについて説明がありました。
ネスレの存在意義(パーパス)は「ネスレは、食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」を掲げています。そしてこの存在意義を実現するために、以下3つを注力分野としています。
- 個人と家族のために
- コミュニティのために
- 地球のために
嘉納氏より「ネスレでは個人と家族・コミュニティ・地球という3つの分野で、ウェルビーイングを考えて事業活動を展開している」と、ネスレの考え方について解説がありました。
またSDGs・サステナビリティに関しては、「すべてのステークホルダーに長期的にプラスの影響をもたらす」という共通価値の創造(Creating Shared Value)についての言及もありました。ネスレでは例えば、包装材料とサーキュラリティについて「2025年までに、ネスレの包装材を100%リサイクル可能あるいはリユース可能にします」と目標を掲げ、SDGs達成へ貢献を目指しているようです。
3.正しい価値観を持つことで、企業とウェルビーイングが繋がる
続いて、SIXPAD(シックスパッド)を含む美容機器の企画・開発・製造などを手掛ける株式会社MTG(以下、MTG) の亀岡氏より、「正しい価値観を企業が持つことで、ウェルビーイングは企業が繋がる。また価値観とその価値観への理解と実践、そして事業への反映という3つがセットになって初めて、サステイナブルな生成発展が実現していく」と説明がありました。そして、MTG自身の価値観についても言及がありました。
MTGの企業理念は「一人ひかる 皆ひかる 何もかもひかる」。「一人というのは社員を、皆はお客様やパートナー、株主を、何もかもは社会や地球を指す」という亀岡氏。そしてこの企業理念を支える柱の一つが「光フィロソフィ」であり、光フィロソフィ手帳にはMTGが大切にしている価値観が書かれているそうです。
上記が光フィロソフィ手帳に書かれている一節です。「感謝の気持ちを忘れない」「挑戦する気持ちを大切にする」といった言葉が書かれています。こうした考え方を、MTGでは掲げるだけでなく、しっかり実践しているそうです。
亀岡氏は「正しい価値観を持つことが、ウェルビーイングと企業を繋げる」と話し、その価値観がMTGの場合は、「一人ひかる 皆ひかる 何もかもひかる」という企業理念や「光フィロソフィ」の内容であるようです。
4.ウェルビーイングを考える際には生きがいを考える
嘉納氏と亀岡氏による、ウェルビーイングやSDGsに関する紹介パートを終え、東京工科大学の名誉教授で、創造性に関する研究をしてきた奥氏が、ウェルビーイングについて説明しました。
奥氏によると「ウェルビーイングの一番広い概念は、アリストテレスが提唱したユーダイモニア」です。さらにユーダイモニアは日本では「生きがい」と解釈されることが大半のため、ウェルビーイングについて考えるときには「生きがいって何だろう」と考えることが有効だと言います。
また奥氏いわく「ウェルビーイングの核には内発的動機づけがある」とのことです。内発的動機づけとは、「活動自体の楽しさ・喜びを求め自己決定し活動する動機付け」です。簡単にいうと、「自分が楽しいから〇〇をするという動機付け」を指します。
奥氏は、この内発的動機づけとウェルビーイング・SDGsの関係について、「最近の研究によると、内発的動機づけは創造性や健康、喜びに結び付く。そのため、ウェルビーイングの核には内発的動機づけがあり、またSDGsを内発的動機づけと結び付けたときには、SDGsもある程度はウェルビーイングに結び付く」と述べました。
こうした奥氏の発言について、亀岡氏は「岡先生のおっしゃる内発的動機づけが、MTGでいう光フィロソフィになるのでは」と返答していました。
5.日本流サステイナブルウェルビーイングを実感できた
セッションの後半では、ファシリテーターの株式会社朝日エル 会長の岡山氏からさまざまな問いかけが投げられました。例えば、「SDGsが目指すゴールと個人のウェルビーイングはバラバラのこともある。両者をセットに考える上で、何か解決策はありますか?」という問いに対しては、亀岡氏は次のように答えていました。
亀岡氏「自分が一番心地の良い状態、つまりウェルビーイングな状態が環境を含む他者にとって心地が良い場合もあれば、負荷をかけていることもありえます。他者にとって心地の良いことはどんどん発展させればいいですし、他者にとって負荷がかかっていることは減らしていくことが大切です。利他の心を持って、良いものは提供し、他者の負担は軽減させる。これを繰り返すことが重要ではないでしょうか」
また岡山氏とネスレが2012年から共同で話し合った「日本流サステイナブルウェルビーイング」について、岡山氏より所感を聞かれた嘉納氏は、「先週3年ぶりに製造工場を訪ね、現場の人たちからもの作りに対する誇りを感じました。日本流サステイナブルウェルビーイングに挙げた『日本に古くから伝わる匠の技の伝承』が、すごく腹落ちしました」と回答しました。
このような質疑応答を経て、セッションの最後には岡山氏が「2030年以降の、ポストSDGs・ウェルビーイングに、私達は何をどのように見通していくのかを考えなければいけない」と総括し、本セッションは閉幕しました。
6.まとめ
本セクションでは、「ウェルビーイング」と「SDGs」という2大重要テーマを紐づけて議論されました。ネスレもMTGも確固たる意志・理念・価値観を持って、両者を捉えていることが分かりました。
また奥氏がいう「内発的動機づけ」もウェルビーイングとSDGsの繋がりを考える上で、キーワードになりそうです。ウェルビーイングな社会に関心のある方は、内発的動機づけを切り口に今一度ウェルビーイングとSDGsについて、考えてみてはいかがでしょうか。
庄子 鮎
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