【元トレーダーが解説】暗号資産取引所のビットコインの板の読み方

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今回は、ビットコイン取引所の板の読み方について、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. 暗号資産取引所の取引板とは?
  2. 暗号資産の取引板で注文を出すときの注意点
  3. 【番外編】見せ板について
  4. 取引板を見て短期的な動向を把握する

暗号資産の投資を始めた方の中には、初めて「取引板」に触れる人も少なくないかと思います。取引板には市場参加者の注文が反映されており、証券投資家にとっては馴染みの深い仕組みです。

取引板の分析は「板読み」と呼ばれ、様々なヒントを得るための重要な技術となっています。ここでは暗号資産取引所の取引板について、基礎的な内容から読み方まで解説したいと思います。

①暗号資産取引所の取引板とは?

ここでご説明する取引板は、暗号資産取引所の「取引所サービス」を利用している顧客同士の注文が一覧表示されているツールを指します。自分が出した注文も板に反映されます。

注文数量はリアルタイムで変化するので、買い注文(需要)と売り注文(供給)をチェックする上で重要な材料となります。

注文の主体者は個人のユーザーであったり、機関投資家であったり、暗号資産取引所のマーケットメイカー(市場を形成するために注文を成立させやすくする注文)であったりと様々ですが、一般的にはユーザー同士の注文が成立する場所と覚えておくといいでしょう。

下記のコインチェックの取引板をベースに、各項目を解説します。
Coincheck board
コインチェックの場合、緑色が「買いの指値注文」の「価格」と「数量」、赤色が「売りの指値注文」の「価格」と「数量」になります。

例えば「1,202,167円なら0.01BTC買うよ」と意思表示する人がいます。一方で、「1,202,471円なら0.0308BTC売るよ」と意思表示する人がいる。そう考えるとわかりやすいでしょう。

単位はビットコイン(BTC)なので、注文量を円換算することが大切です。2020年12月28日に1BTCは約260万円ですが、筆者は大雑把に50万円単位で暗算するようにしています。

上記の場合、成り行きで0.1BTC買いたいという人が出たらレートはどうなるか考えてみましょう。

  • まず1,202,471円の指値である0.0308BTCの売り注文が成立します。
  • そして1,202,474円の売りの指値0.0131BTCも成立します。
  • さらに1,202,594円の売りの指値0.0147BTCも成立します。

といった具合に、合計0.1BTCに到達するまで板に残された売り注文が価格が近い順に成立し続けます。成り行き注文によって相場が変動することを覚えておくといいでしょう。参加者が全て指値注文だと相場は一切動かないということです。

②暗号資産の取引板で注文を出すときの注意点

暗号資産取引所で同じ商品でも価格が異なる

暗号資産取引所というのは日本に多数あり、同じビットコインやイーサリアムでも、取引所ごとに価格が異なります。これは暗号資産特有と言ってもいい性質です。

もちろんほとんど同レベルの価格帯で動くことが大半ですが、稀に一つの取引所で極端な価格乖離が起きることがあります。

株式の場合は顧客の注文が各証券会社を通じて証券取引所に集約されており、PTS(私設取引システム:夜間専用)を除くと価格は一つしかありません。暗号資産のように取引所毎に価格が乖離することはないということです。

しかし暗号資産の場合は、株でいうところのPTS市場が無数にあることになります。各市場で参加者の人数、流動性等が異なるため、需給が急激に変化すると価格乖離が発生するということです。

そのため取引所の板にどのくらいの注文量が出ているのかというのはとても重要となります。注文量が少ない(流動性が低い)板で、高額の成行注文を出すと思わぬ高値で成立することもあり得ます。

一気に注文は出さずに細かく分けて注文を成立させる

暗号資産の時価総額は市場全体でも70兆円前後であり、IT企業のアップル社の株価(時価総額1兆ドル越え)にも届いていません。

そして日本国内でも暗号資産取引所が数多くあることを考えると、利用者が分散していることは想像に難くないでしょう。

一つの取引所に注文が集まりにくいため、資産によっては数百万円程度の注文でも価格を10%近く動かしてしまうリスクがあります。そのため、100万円購入したいと思っても10万円ずつ注文を小分けにする等の工夫が必要です。

手数料を考えて成行注文と指値注文を使い分ける

取引所によっては、手数料がtaker(成行注文)とmaker(指値注文)で異なる場合があります。基本的にはtakerの手数料の方が高めに設定されているケースが多いです。

そのため成行注文で買ったり売ったりを繰り返していると、手数料で負けてしまうこともあります。手数料がどの程度かかるのかを把握し、指値注文もうまく利用しながらコストを抑えて取引するよう心がけましょう。

③【番外編】見せ板について

最後に番外編として相場操縦の手法である「見せ板」について解説します。これは実例で説明した方がわかりやすいため、先ほどのコインチェックの板を使って説明したいと思います。
Coincheck board
仮に、この板の1,202167円に「1,000 BTCの買い注文」が入っていたと、想像してください。投資家であるあなたは、どのように感じるでしょうか?

「1,202167円以下に下がりそうもない」と感じるでしょう。執筆時点に1,000BTCは日本円で約25億円なので、25億円の売り注文を消化しないと1,202167円以下にならないことを意味します。

例えば、ロングポジションを保有している投資家は、相場を持ち上げることを意図して見せ板を出す場合が考えられます。大口の注文量を見せられた他の投資家は、売り仕掛けを控えようと考えるでしょう。

この手法は株の世界では禁止されていますが、暗号資産の世界では規制が行き届いていません。やろうと思えばなんでもできる市場となっているのが現状です。

④取引板を見て短期的な動向を把握する

取引板から、相場の動向を推測することはとても大切です。超短期間(数秒間)に価格がどちらに向かいやすいか、といった見通しを立てる際に役立ちます。そして、成行注文を入れるタイミングも判断できるようになるでしょう。

「板読みで勝てる」という投資家も存在しており、それほど板を理解することは重要です。注文数量、注文の出方、スピード等、見方がわかってくると「スキャルピング」というトレーディング手法などでも重宝します。

コストを安く抑えるためにも、板取引を使いこなすことは重要になってきます。初心者の方は是非、ここでご紹介した基本的な板の動きや仕組みを理解して取引してもらうと良いでしょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12