文化遺産の保護に活用されるNFT技術

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の中村翔太 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. Quantum Temple
  2. MONUVERSE
  3. Meta History
  4. 最後に

NFTのユースケースは、ブロックチェーン上の取引にとどまらず、SNSなどのPFPやコミュニティのゲーティングなど様々な利用方法が開拓されてきました。本記事では、NFTユースケースの中で、現実世界の文化遺産の保護に関するプロジェクトを取り扱い、仕組みやプロジェクトの詳細について記述します。

Quantum Temple


Quantum Templeは、アメリカ、フロリダ州で活動しているスタートアップにより提供される文化遺産を保存するWeb3プラットフォームです。また、「ブロックチェーン技術を通じて、世界中の文化の知識、伝統、芸術形式を永続的に保護し、共有すること」を目標に活動しており、文化や伝統をNFTという形で記録し、この活動を通しコミュニティやコレクター、旅行者へアピールしています。NFTとして記録される文化遺産は、人類学者によってキュレーションおよび検証されています。

現時点ではQuantum Templeコミュニティのメンバーとして参加するには許可が必要となっており、申請が許可されると「Cosmic Egg」と呼ばれるメンバーシップNFTを入手することが可能になり、所有者は、Quantum Temple Impact Fundと呼ばれるWeb3のインクルージョンと文化遺産の活発化を目的とした基金の用途をなどを決定するガバナンスに参加することが可能となります。また、Cosmic Eggの購入資金は100%先のImpact Fundに使用されるとされています。

Quantum Templeは、プロジェクトの一環としてインドネシア観光省とのパートナーシップを発表しており、Quantum Templeは、プラットフォームを提供し、地元の映画製作者、文化人類学者、アーティスト、キュレーターと協力して一連のNFTを制作し、世界中へ認知させるとしています。また、その一つとして、伝統的なダンス、アーティファクト、儀式を捉えたオーディオとビジュアルのログを特徴とする「Paths to Alangö NFT Collection」という作品を発表しています。

MONUVERSE


MONUVERSEは、Reasoned ArtというイタリアのCryptoArtに特化したギャラリーを運営しているスタートアップチームによって提供されるアート、ゲーム、コミュニティの力で世界の文化遺産を強化および保存することを目的としたインタラクティブなストーリーテリングプロジェクトです。MONUVERSEは、主にメタバース上で、歴史的なアバターを取得、仮想イベント、美術展、パーティー、ブランド体験、音楽祭などなどの様々な体験を提供しています。

現在進行中のNFTプロジェクト(エピソード)は2種類公開されており、Arch of Peaceでは、イタリア、ミラノのシンボルである「平和の門」を題材にし、クリエイティブなコーダーでありAIマスターのOuchhhスタジオがデザインした360°データ彫刻という画期的なデジタルアート作品として、2021年12月31日にライブストリームイベントが開催され、後に1,111個のNFTコレクションが公開されました。Arch of Peaceでは、国際的なプレスによる報道やライブストリームにより、世界中で500万人以上の人々に届いたとされています。

また、Ancient Egyptでは、古代エジプトの衣服やジュエリーにインスパイアされた3DのPFP(Profile Picture)を 1,111個のNFTとして公開しました。

Meta History


Meta Historyは、副首相兼デジタル変換大臣であるMykhailo Fedorov氏によって発表され、ウクライナで起きている出来事の歴史を記念し、真実を保存し、人道支援のための寄付を集めるために作られたNFTプラットフォームプロジェクトとなっています。同プロジェクトはウクライナデジタル変革省&文化・情報政策省が公式に支援しています。また、Meta Historyは、社会における芸術の役割について、新しい考えを持っているとし、「芸術は、関連性があり、勇気があり、活動家でなければなりません。そして、永遠でなければなりません」と示しており、それに基づきプロジェクトを運営しています。

本プラットフォームでは、「WARLINE」「THE HALL」「META ROOSTER」の3つのカテゴリのNFTを取り扱っており、「WARLINE」では、取引で発生したプラットフォームの収益は、ウクライナのデジタル変革省に寄付されています。「WARLINE」で取り扱うNFTは、ウクライナでの出来事についての真実を不滅にするため、プロのジャーナリストが選んだ検証済みの戦争に関する事実と、才能のあるアーティストによる芸術的な考察を、ブロックチェーン上にNFTという形で半永久的に記録しています。「THE HALL」では、Elon Musk氏やVitalik Buterin氏をはじめとした、ウクライナを代表する著名人に感謝して作成されたNFTアートのコレクションとなっています。「META ROOSTER」では、2022年3月キエフ近くの小さな町で、ロシアの占領を生き延びた数少ないオブジェクトの1つである陶器の作品を、有名な絵画のスタイルで再現しNFTとして、闘争の文化的シンボルに位置付けています。

最後に

文化遺産を唯一無二のデジタルデータとしてNFT化し保存する方法や、アーティストや学者、キュレーターと協力し、現実世界の文化遺産を保全するための資金の調達など、様々な方法でブロックチェーンとNFTの技術が使用されています。本記事では、文化遺産の保護に焦点を当てて記述させていただきましたが、ブロックチェーンやNFTの技術は文化遺産だけでなく、様々な現実世界の様々な物事の保護に応用可能だと考えられ、期待し注目できる分野と言えるでしょう。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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Fracton Ventures株式会社

当社では世の中をWeb3.0の世界に誘うことを目的に、Web3.0とDAOをテーマに事業を行っています。NFT×音楽の分野では、音楽分野のアーティスト、マネジメント、レーベルなどとNFTを活用した新しい体験を図るプロジェクトを行っています。