次のトレンドになるか?音楽NFTとは?

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今回は、Web3.0とDAOをテーマに事業を行うFracton Ventures株式会社の守 慎哉 氏から寄稿いただいたコラムをご紹介します。

目次

  1. 音楽NFTとは
  2. 音楽NFTによるマネタイズモデル
  3. コミュニケーション手段としてのNFT

NFTの次のトレンドとして音楽NFTが注目されています。音楽NFTとは一体どのようなもので、アーティストとユーザーにどのような体験をもたらし得るのでしょうか。

音楽NFTとは

音楽NFTとは、ミュージシャンが自分の楽曲をNFTとしてリリースしたものです。アーティストは、実際の楽曲とそのソースファイルをNFTとして公開します。私たちは音楽の所有権を購入することになり、その音楽の所有者は保有したり再販したりすることができます。これは2021年春頃から流行しているNFTアートと同様に、作品の所有・収集をしてもアートコンテンツの商品化や流通させる権利は得られませんが、保有・販売はできます。

ここで、しばしば一般メディアにNFTが取り上げられる際によく議論されることとして「NFTの価値は何か?」というものがあります。この議論をする上で重要なこととしては、「NFTの価値」と「コンテンツの価値」を分けて考えることが重要です。音楽NFTは音楽ファイルであり、所有するための唯一の方法です。音楽NFTの価値は、人々がその音楽に価値があると考えるものに価値があります。

具体的なプロジェクトとしては、アーティストが1点物のデジタルレコードをプレス・販売するためのWeb3音楽プラットフォームであるCatalog、フルオンチェーンでデプロイされる音楽NFT作成ツールであるArpeggi、そして執筆時点で資金調達の発表があった、ユーザーがお気に入りのアーティストから直接楽曲の所有権を購入し一緒にロイヤリティを得ることができるプラットフォームを構築可能なRoyalなどがありあます。他にも様々なサービスが存在し、音楽NFTに関するプロジェクトが充実してきているという状況であることがわかります。

音楽NFTによるマネタイズモデル

Web2.0の問題点として、グローバルプラットフォーマーによって手数料が課せられて、プラットフォームの利用者ファーストの収益構造になっていないということがあります。実際に、人気ゲーム「Fortnite」を運営するEpic Games社は、iPhoneでアプリを配布する手段が、Apple社が運営するアプリストアのApp Store以外に用意されておらず、App Storeで3割の手数料を一律に課すのは不当であるとの訴えています。

音楽についても同様のことが起きています。現在、音楽はSpotifyのようなストリーミングサービスで聴くことが主流になっており、全体の収益の一部がプラットフォームへ渡り、残りがアーティストへ渡るという構造になっており、アーティストにはロイヤリティが支払われることになります。これは、プラットフォームがアーティストに対してより多くのリスナーに音楽を届ける機会を提供しているという見方もできますが、収益という面ではクリエイターファーストではないとも判断できます。

しかし、音楽NFTを用いることによって、新しい収益モデルが可能になります。音楽ファイルは、より上流のエンゲージメントとキュレーションの層で消費され、NFTに直接価値をもたらす新たなマネタイズモデルを生み出します。音楽NFT自体は、エンゲージメント(いいね!獲得、エモートなど)やキュレーション(曲をプレイリストに固定するなど)によってNFTに直接収益を還元するというものです。

音楽NFTは、非常に消費性の高いコンテンツを提供することで、クリエイター・エコノミーを開放し、オンチェーンで収益を上げてNFTに直接還元する、より高度なアップストリーム・アプリを提供する機会を提供します。

ただし、音楽NFTに否定的な意見もあります。音楽NFTは、音楽が消費される仕組みになっており、このような仕組みではなくお金のストリーミングと音楽のストリーミングとを組み合わせることがアーティストをサポートするのに良いモデルであるとの主張です。

コミュニケーション手段としてのNFT

ここまで、音楽NFTの概要を綴っていきましたが、ここでは音楽NFTの可能性について個人的な見解を述べたいと思います。

昔、映画やテレビでは基本的に一方的に視聴するという体験であり、YouTubeやInstagramなどでは視聴者はクリエイターとのインタラクティブなコミュニケーションが可能となり、Webの発展によって映像表現におけるコミュニケーション方法が変わったという見方ができます。

こうした中、音楽NFTは新しいコミュニケーションの在り方としての可能性を秘めていると考えています。個人的な感覚としてはアートが身近にあるような人はそんなに多くないと思われるので、アートNFTは非日常という側面が強くコミュニケーションツールとしての実感が湧きにくいです。しかし、音楽はアートよりも身近なものであり、日常的に音楽を聴いている人が多いと感じるので、コミュニケーションツールとして定着してユーザーに新しい体験をもたらし得るかもしれません。

NFTを所有するということはある種クリエイターとの「絆」のような見方ができます。クリエイターは、コレクターに感謝の気持ちを伝えるために、マーチャンダイジングやVIPチケット、コレクターズNFTなどの特典を追加することができます。今までは体験のみを提供しており、クリエイターとの繋がりを感じ取ることが難しかったところを、NFTによって所有と体験を同時に感じ取ることができるようになるのです。さらに音楽という日常に近いコンテンツがNFTとなることで、NFTを通じた新しいコミュニケーションの在り方を実感しやすくなるのではないかと思います。

ディスクレーマー:なお、NFTと呼ばれる属性の内、発行種類や発行形式によって法令上の扱いが異なる場合がございます。詳しくはブロックチェーン・暗号資産分野にお詳しい弁護士などにご確認ください。

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守 慎哉

Fracton Ventures株式会社リサーチャー。DAO分野に強みを持ち、コモンズ・公共財におけるガバナンスのあり方などのリサーチを担当。その他CoinPost×あたらしい経済で立ち上げた「CONNECTV」の共同編集長をも務める。