【決起会参加レポート】参議院議員の藤巻氏による「仮想通貨税制を変える会」が発足。第1回講演の内容まとめ

日本維新の会所属の参議院議員である藤巻健史氏が発足した「仮想通貨税制を変える会」の第一回講演会が1月30日、参議院議員会館講堂で行われました。「仮想通貨税制を変える会」の目的は、毎月1回開催される講演会を通じて国会質問において行う理論的な主張の参考にすることや、会の参加者を増やすことで議員の方に仮想通貨税制に対する危機感を持ってもらうことにあります。最終的には、日本の仮想通貨税制を整え、仮想通貨の社会への浸透とブロックチェーン技術の発展を図ることを目指しています。

藤巻議員の仮想通貨に対する考え方

「仮想通貨税制を変える会」の発足人である藤巻議員は、かつてジョージ・ソロス氏のアドバイザーや大手米国銀行JPモルガンの支店長を勤めた経験を持つ債券・為替・株式トレーダーです。藤巻議員は、「日銀破綻 持つべきはドルと仮想通貨」という本の著書でもあり、仮想通貨を日本円の避難通貨の一つとして考えている人物です。

藤巻議員は、「日本円の資産避難先として物理的に国外の銀行口座を開設し、米ドルを買っておく必要がある」とする一方、現実には一般の投資家が海外口座を開設して預金するのは敷居が高く、キプロス危機を例に挙げて仮想通貨を持つべきだという持論を展開しました。過去、全預金口座への課税導入を引き金として発生したキプロス危機により預金出金制限や海外送金制限が行われたキプロスでは、資産を防衛するための手段としてビットコインが利用されました。

藤巻議員は国の政策に左右されない仮想通貨の特徴に着目し、「ブロックチェーンはインターネット以来の次の革命と言われており、仮想通貨と仮想通貨の基盤技術であるブロックチェーンの両者の発展に期待している」としました。また、仮想通貨は、世界で銀行口座を持てない20億人の人々が金融サービスを利用できる状況でない現状を打破できる力があるとして、経済発展の観点からも既存のルールを見直すべきだと説明しました。

これにあたり、藤巻議員は日本が先進的な仮想通貨領域で世界から遅れを取らないためにも、①仮想通貨の税制を現在の総合課税(税率最大55%)から株式やFXに適用される分離課税(税率最大20%)にすること、②仮想通貨間の取引を非課税にすること、③仮想通貨で行う少額取引を非課税にすること、④損失を繰り延べるようにすること、の4つを主張しています。

柳澤税理士の仮想通貨に対する考え方

今回講演に登壇した柳澤賢仁税理士は、国際税務を専門としており、2017年や2018年にICOを行うスタートアップの税務の仕事を通して仮想通貨に関わってきた人物です。富裕層向け資産防衛メディアの「幻冬舎ゴールドオンライン」で、仮想通貨と税務に関しての連載記事を執筆しています。

柳澤税理士は、税制が十分に整っていない仮想通貨を面白いと思っており、伝統的資産と比較したときの仮想通貨税制をロジカルかつフラットな目線で捉えている人物であるという印象を受けました。本公演では仮想通貨税制の不可解さを、①株式と同等のキャピタルゲインがあること、②仮想通貨の消費税が非課税であるということ、の2点から説明しました。

キャピタルゲインという面では同じ仮想通貨と株式

仮想通貨税制の不可解な点の一つ目は、仮想通貨の税務が未熟なために納税を回避することができてしまうという点です。現状の仮想通貨税制では、移住によって租税回避を逃れることができてしまいます。例えば、国外に移住したとき、株式は国外転出時課税制度の対象となり納税義務を必要とするのに対し、仮想通貨は対象とならないため、含み益を持った状態で海外移住をして利確すれば含み益が日本で課税されません。講演では、マレーシアなどの一部の国ではキャピタルゲインが課税対象にならず、移住先でも納税から免れることが可能だという具体例を紹介しました。柳澤税理士は、こうした税制の不可解な点をなくすために、仮想通貨税制が変更されるだろうと説明しました。

また、柳澤税理士は株式に関する所得が一律して分離課税での納税となった経緯を説明しました。日本の租税法では、株式は10種類ある所得区分の譲渡所得や事業所得などに分類されます。昭和62年の税制改正では、「利子所得及び金融類似商品の収益については、15%の比例税率による一律源泉分離課税が採用されたが、税制の投資中立性の観点からは、株式等の譲渡益についても類似の税制を設ける必要がある。」として、株式の税率が20%となったことを説明しました。このとき、株式の譲渡所得も金融所得であり、同じく金融所得である利子所得や金融類似商品による収益が15%の分離課税であることから、株式も同等の扱いにするべきであるという考えが適用されたといいます。

柳澤税理士は、税制変更の鍵は「投資中立性の観点」にあると主張しました。「仮想通貨のトレードは投資以外の何者でもない。投資中立性の観点から見れば、仮想通貨も最大20%の分離課税を主張できる。(現状は)税制の投資中立性に反している。」として、今後仮想通貨税制は変わるだろうという見解を示しました。

消費税は非課税と優遇され、所得税が不遇である理由

柳澤税理士は、日本の仮想通貨税制で注目すべきは消費税にあると主張しました。日本は2017年4月に改正された資金決済法によって仮想通貨の取引に消費税がかからない扱いになりましたが、仮想通貨に消費税がかからないのは世界的に見ても日本だけであるとのことです。

柳澤税理士は、仮想通貨取引に消費税がかからない理由として、仮想通貨取引所がロビー活動を行なったためであるとしました。柳澤税理士は、販売所形式で仮想通貨を取り扱う仮想通貨取引所では売買の度に仮想通貨の税金がかかってしまうと納税をするのに複雑となるとのことから、仮想通貨取引所の意見を反映した税法が制定されたと説明しました。

仮想通貨の税制の今後

柳澤税理士は租税法の専門家の方との対談で、日本が決済に仮想通貨を利用できるとした資金決済法で仮想通貨を定義したのは勇み足であったのではないかとの話をしたそうです。というのも、2017年9月1日に国税庁が出したタックスアンサーの中では、ビットコインの扱いについてしか記載がなかったため、資金決済法に該当する仮想通貨をビットコインのみであると思っていたのではないかという話をしたことを明かしました。仮想通貨は2,000種類以上あり、その中でも、決済通貨としての特徴を持つ仮想通貨や証券としての特徴をもつ仮想通貨に大きく二分されると言われています。こうした背景もあり、柳澤税理士は「仮想通貨は今後、資金決済法として取り扱われる仮想通貨と金融商品取引法で取り扱われる仮想通貨の二つに分類されるべきだろう」と発言していました。

仮想通貨が雑所得である理由とは?

柳澤税理士は、「今後の国会でカジノ税は一時所得になりそうだ。カジノ税が一時所得であるのに、仮想通貨が雑所得に分類されるのは感覚的におかしい。どういう論理で説明すれば良いか。」という藤巻議員の質問に対して、以下のように回答しました。

柳澤税理士は、先述の専門家との話の中で、株式と同等のキャピタルゲインという性質を持つ仮想通貨の税制について、仮想通貨の取り扱いについて所得区分が原則として雑所得になるのはやっぱりおかしいという話をしたそうです。なぜなら、雑所得というのは、事業所得や譲渡所得にならなければ雑所得として考えられるべきであるのに対し、事業所得や譲渡所得として考えられる仮想通貨が雑所得であるというのは不可解であるためだとの見解を示しました。また、カジノは昔からIR法案などの法整備を整えられてきたとし、仮想通貨については変化の早さから法整備が追いついていないのが現状であり、仮想通貨が利用されていき、議員の仮想通貨に対する意識レベルが上がってくることが大事であると説明しました。

講演会の参加者と柳澤税理士と藤巻議員で行われたQ&A

講演会の終盤では、参加者が挙手によって柳澤税理士と藤巻議員に対して発言する質疑応答がなされました。以下でご紹介していきます。

地方経済の活性化を目的とする際の優遇税制について

仮想通貨の中でも地方経済に利用される仮想通貨の税制については、税制優遇を設ける制度を作れないかという質問が挙がりました。税制優遇という議論であれば、ふるさと納税のような資金フローが発生するため税制改正にもつながりやすいのではないかという意図で質問されたそうです。

柳澤税理士はこの質問に対し、地方の活性化を目的とする仮想通貨を税制改正の提案項目に含めていくのはありだという見解を示しました。その理由として、地方創生とスタートアップ支援のエンジェル投資は政府が推進する政策であることを理由に挙げ、地方創生に一役を担う地域向けの仮想通貨についてもエンジェル税制と同様な扱いとして主張することは良いという趣旨の発言をしました。

法人税の時価評価を変更することについて

そのほかに、法人における現在の仮想通貨の評価方法を時価評価から変更することはできないのだろうかという質問がなされました。税制や法規制は企業が国内で事業を続けるかどうかにも繋がる問題で、アメリカでも法整備が追いつかないことから有望なブロックチェーンプロジェクトが海外に移転していることが報じられています。

これに対して、柳澤税理士は現状の法人の仮想通貨税制についても変更していく必要があるという考えを示しました。この質疑では、柳澤税理士は税制変更の基準となる税制大綱について触れ、税制大綱の中で「活発な相場が存在する仮想通貨については時価評価」と記されているうち、「活発な相場が存在する」という点にポイントがあると強調していました。もし活発な相場があると国から判断されてしまえば、価格が上がったリザーブ分にまで仮想通貨の税制がかかり仮想通貨を発行する事業者に税金の負担がかかり過ぎてしまうため、このままでは日本国内で仮想通貨を新規に発行した事業者が出ていってしまうとに危機感を抱いているとのことでした。これには藤巻議員も十分に検討したいと発言していました。

仮想通貨税制の変更に向けた現在の進歩状況

また、最も多かった質問は仮想通貨税制の変更に向けた現在の進捗状況についてでした。

これに対し、藤巻議員は現状仮想通貨に関する理解がある議員は少ないため、藤巻議員自身が継続してプレッシャーをかけていき、議員の意識レベルを上げていくように行動をとり続けると発言しました。柳澤税理士は、2017年に改正された資金決済法で消費税が非課税となったのだから所得税についても税制改正できるといった内容の発言をして、仮想通貨の税制変更についての可能性を示唆しました。

まとめ

第1回目の「仮想通貨税制を変える会」では、キャピタルゲインという部分で同じ性質を持つ株式と仮想通貨の税制を比較、説明をすることに焦点があたりました。今回の「仮想通貨税制を変える会」を通して、仮想通貨の業界はまだまだ未成熟であると再確認したと同時に、仮想通貨・ブロックチェーンのもたらす将来の可能性に期待している方が大勢いて、そのために各々精力的に活動していることが伺えました。HEDGE GUIDE編集部は、今後も「仮想通貨税制を変える会」の動向をウォッチしていきます。

【関連URL】仮想通貨税制を変える会

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藤田 正義

藤田 正義

「難解な用語を誰でもわかるように」をモットーに「HEDGE GUIDE」では、ニュース記事・コラム記事・プレスリリースなどの執筆を担当。チャートを1日中見続ける、海外の情報収集により投資判断を行うなどの経験から、独自のマーケット分析を行う。原動力は、好奇心。