証券会社を経て、仮想通貨取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。
目次
国内の仮想通貨マーケットが盛り上がりに欠ける中、取引量は減少してきており、過疎化の様相も呈しています。しかし、仮想通貨の技術自体は日進月歩で進展しています。各国の法整備が進み、仮想通貨銀行やファンドが立ち上げられており、世界的に取引市場環境は整ってきています。
資産運用において、ポートフォリオに仮想通貨を取り入れたいと検討する人も多く、運用戦略として積立投資への関心が高まっています。しかし、仮想通貨は値動きの幅が大きく、なかなか取り組みにくいと感じている方も多いでしょう。
今日は積立投資ができる取引所をご紹介すると共に、仮想通貨で積立投資を行う上で一歩踏み込んだ戦略をご紹介したいと思います。
コツコツ積立投資ができる仮想通貨取引所
現在、仮想通貨の積立投資を行うことができる取引所はCoincheckのみとなっています。以前はZaifも行っていましたが、現在は行っていません。
対象通貨はビットコインを含む12種類となっており、月々1万円~100万円の範囲で1,000円単位で設定が可能となっています。Coincheckつみたては、2020年3月に「毎日つみたてプラン」を開始しました。毎日つみたてプランは入金額を日割して毎日自動で買付けます。月に1回の買付けに比べて毎日つみたてプランの方が相場変動を受けにくく、より買付単価を平準化できます。
シミュレーションも提示されており、2018年10月からスタートしていると下記のような収益率になっています(月イチつみたてプラン)。
資産運用として利用する場合、このような積立を資産のポートフォリオの一つに加えることも一つの手だと言えます。
Coincheckの積立で一つ注意すべきは、自動積立手数料が無料ではありますが、購入価格に「スプレッド」が含まれているため、実質的に2%以上の手数料が取られている点です。
また、積立投資自体は自分自身でも行うことができます。この点をどのように捉えるかはユーザー次第と言えます。
それでは、次に仮想通貨の積立投資について、課題や問題点について解説したいと思います。
仮想通貨積立の注意点や課題点は?
そもそも積立投資は「ドルコスト平均法」という、毎月一定額を購入することで平均取得単価を平準化させ、資産運用に利用する考え方に基づいています。
ドルコスト平均法のイメージは下図の通りです。
ドルコスト平均法は、外国通貨(為替)のFXでよく取り入れられるケースが多い手法です。仮想通貨でも利用できますが、通貨としての本質を考慮すると留意すべき重要な違いがあります。
外国為替の世界では、各通貨は貿易に利用されていたり、各国の政策金利に基づいて両者の力関係が為替レートを形成します。そのため為替には、政策金利等の変化や各国中央銀行の政策の意図が反映されます。
つまり、破綻するような国々の法定通貨ではない限り、過去のチャートを見ると、ある程度のレンジ内に収まっている傾向があります。それだけドルコスト平均法が機能しやすいと言えるでしょう。
また、外国為替の場合は金利の高い国の通貨をロングし、金利の低い国の通貨をショートすることによって「スワップポイント」を毎日得ることができます。通貨金利を享受できるため、為替市場におけるドルコスト平均法は有用な手法と言えます。
ここで、仮想通貨と違う点が見えてくると思います。
まず「過去の価格の歴史が浅い」こと、そして「値動きの値幅が大きい点であり、本源的価値としては0になってもおかしくない」ことです。
ドルコスト平均法は、「その原資産の価格が長期的に上昇する」ことをベースに考えられていると言えます。永遠に下落し続けるならば、平均取得単価を下げたとしても全く意味がありません。
例としてビットコイン円の価格推移をご覧ください。
2017年以前はビットコインは3万円以下で取引されていました。ここから一時200万以上まで高騰しています。その後40万円割れの水準まで下落した後、再度100万円超まで回復していますが、もしも200万付近からドルコスト平均法を利用したとしても、歴史の浅いチャートなのでどこまで下値が続くか全くわかりません。
まだ誕生して10年程度の市場であるため、「デジタル通貨は0円になってもおかしくない」ということは頭の中にいれておいたほうがいいでしょう。
各国の政府の意図を反映するものでもなく、歴史が浅いことから、どのラインでサポートされるのか読みにくい点がビットコインの重要なポイントです。
さらに、為替と違って「通貨金利」がないため、ビットコインをロングで持っていたとしても全く金利は発生しません。為替差益で稼ぐしかない商品であるため、純粋に積立投資を仮想通貨で行うのであれば、FXで行うほうが断然有利に資産運用を行うことができると言えます。
これらの特性を踏まえ、仮想通貨で資産運用するにはどのような方法が良いか、私が行っている方法を簡潔にご説明したいと思います。
仮想通貨で少額から資産運用を行う方法
ドルコスト平均法は毎月決まった金額を定額で購入するため、価格の上下に関係なく機械的に購入するものでした。そのため、価格が上昇した際は購入量が減少し、平均取得単価が上昇するリスクもあります。
筆者が行っている仮想通貨を利用した資産運用方法は「一定金額で、下落した時にのみ購入する」というものです。仮想通貨の場合、「どこまで下落するかは全くわからないけれど、ひとたび反発すると大幅に戻す場合がある」ので、こうした特性を利用する考え方に基づいています。
下図はこの手法を表しています。
前回購入ポイントから下落した場合にのみ購入することで、平均取得単価はどんどん下がることになります。
そして、たまに発生する一度の急騰により利益を出すことが可能になるということです。
この手法のデメリットは、最初に購入した金額から全く下落しなかった場合は全く買えない点です。しかし、仮想通貨の値動きの幅や上方向へ急騰する頻度を考慮すると、無理に購入して勝負する必要はないと考えてこの手法を取り入れています。
負けないことが投資では一番重要です。そのため、筆者は通貨毎に戦略を分けて積立投資を行っています。
積立投資という単純なものでもいいですし、通貨を増やしたり、購入ルールを設けるなど、自分なりに工夫をしてみると投資の幅が広がると思います。より良い資産運用方法を編み出せるよう、是非挑戦してみてください。
HEDGE GUIDE編集部後記
Coincheckであれば5分でアカウントを開き、最短即日~2、3営業日で本人確認を完了できます。半減期を経てビットコイン価格が100万円を超えたことで「もう投資機会を逸してしまった」と思う方もいるかもしれませんが、記事内で中島氏が語るように、どのように推移していくかはわからないというのが実際のところです。またビットコイン価格が下落し、購入するに適したタイミングが来ることもあるでしょう。そうした時に備え、今からでも無料でできる口座開設を済ませておくのも手です。「積立改良版運用手法」は仮想通貨以外でも実践できる手法ですのでぜひ参考にしてみてください。
中島 翔
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