米クレジットカード最大手VISAが、法定通貨に紐づけされたデジタル通貨の発行システムの特許を申請していたことが分かった。米国のビジネスニュースメディアDecryptが5月15日、伝えている。
5月14日、米国特許商標庁(USPTO)で「DIGITAL FIAT CURRENCY」と題された申請内容が公開された。Visa Internationalが2019年11月に出願した特許は、現金をスキャンしてブロックチェーン上のデジタル通貨に置換することで、物理的な流通から取り除くシステムを概説している。この発明は従来の金融システムを完全にデジタル化する際に利用される目的で設計されており、「現金は摩擦のない方法で市場から取り除かれる」とVISAは説明している。
VISAの特許出願で想定されているデジタル通貨は、連邦準備銀行や各国政府などの中央管理者に制御され、許可(パーミッション)を受けた参加者が管理するブロックチェーンに基づいて発行・管理される。流れは以下のようなものとなっている。
ATMや銀行などの償還エンティティが現金を受け入れ、デジタルフィアットを発行する。この時、中央管理コンピュータが現金のシリアルナンバーに紐づいたデジタル通貨を生成し、ブロックチェーンに記録する。これにより、従来の仮想通貨のようなボラティリティを回避でき、中央管理者は金融政策の実施や通貨発行を通じて通貨システムを制御し続けることができる。
消費者は、プロフィール、銀行口座情報、アカウントや識別子情報などが保存されたウォレットを介して、デジタル通貨を様々な取引に活用できる。この時、チャネルを活用した部分的な秘匿化も想定されており、銀行口座の名義だけを隠したり、1,000ドル未満の支払いを匿名化するなどのユースケースが盛り込まれている。
今年1月、商品先物取引委員会(CFTC)の元委員長であるJ. クリストファー・ジャンカルロ氏はアクセンチュアと協力して、「米中央銀行デジタル通貨」を検討する「デジタルドルプロジェクト」を立ち上げた。民間部門がデジタル通貨に対する関心を高めており、今後の進展に注視したい。
【参照記事】Visa seeks patent for a digital dollar

HEDGE GUIDE 編集部 Web3・ブロックチェーンチーム

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