フードロス削減ビジネスで社会性と経済性の両立を目指す「クラダシ」のビジネスモデルや将来性は?

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Kuradashi(クラダシ)は、普段の買い物を通じて社会貢献を目指すプラットフォームです。運営会社である株式会社クラダシは、社会的企業「B Corp」認証を受けており、同認証を受けた企業として2023年6月30日に日本初の上場を果たしました。味や品質に問題はないものの、廃棄予定となっている食品を低価格で提供することにより、廃棄コストやフードロス削減を目指す、生産者と利用者の双方にメリットのあるビジネスモデルを実現しています。

この記事では、クラダシのビジネスモデルや将来性を詳しくご紹介します。クラダシの概要や運営会社の業績も併せて解説するので、フードロスの削減や社会貢献に関心のある方、ESG投資にご興味のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2023年8月11日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. Kuradashi(クラダシ)とは
    1-1 サービスの特徴
    1-2 クラダシがフードロス削減につながる理由
  2. クラダシのビジネスモデル
    2-1 パートナー企業側のメリット
    2-2 生活者側のメリット
    2-3 持続可能な「食」への取り組み
  3. クラダシの業績
  4. クラダシの将来性
  5. まとめ

1 Kuradashi(クラダシ)とは

Kuradashi(クラダシ)は日頃の買い物でフードロス削減などの社会貢献を目指すプラットフォームです。クラダシを運営しているのは東証グロース市場に上場している株式会社クラダシ(5884)であり、2023年6月末までに取引実績のあるパートナー企業は1,428社、累計会員登録者数は約47.7万人に上り、年々パートナー企業や利用者数は増え続けています。
(※参照:株式会社クラダシ「決算発表」)

1-1 サービスの特徴

クラダシのサービスでは、味や品質に問題はないものの、販売時期が過ぎた季節商品やパッケージの汚れなどがある規格外品などの廃棄予定食品を、パートナー企業から仕入れることで生活者に通常よりも低価格で販売しています。

クラダシで販売している品目は食品、菓子、飲料、お酒、日用品、美容・健康用品と幅広く、無料の会員登録をするだけで誰でも気軽に買い物が可能です。プレミアム会員は月額550円(税込)の会費が必要になりますが、何回買い物しても配送料無料で、クーポンやキャンペーン情報をメールマガジンで受け取れます。

また、クラダシでは購入代金の一部が社会貢献活動の支援にあてられる仕組みとなっており、買い物の際に支援したい活動団体を自由に選択可能です。支援団体は環境保護や災害支援、海外の緊急支援、社会支援、動物保護と幅広く、国連世界食糧計画(国連WFP)の日本窓口である国連WFP協会を通じたウクライナ支援なども選択することもできます。

1-2 クラダシがフードロス削減につながる理由

日本では、食品の販売に関して厳格な品質基準や消費期限が定められているため、わずかな不良品や期限切れ食品が廃棄され、フードロスを生み出します。例えば、食品の流通過程において製造日から賞味期限までの期間を3等分して納品や販売期限などを設ける、「3分の1ルール」という商習慣が挙げられます。

このルールは、製造者(メーカー)と販売者(小売り)、生活者の3者が3等分された期間を均等に分け合うものです。製造日から3分の1以上の期間を経過した製品は、販売者が販売に要する時間を十分確保できないことから納品を断られることが多く、行き場がなくなり廃棄されることがあります。

また、食品の外観が重視されているため、わずかな傷により流通過程で廃棄されることもあります。パッケージの汚れや少しの傷、サイズ違いなど、味や品質に問題がなくても廃棄される規格外品です。このほか、クリスマスケーキや節分の恵方巻など、イベントの時期が終わると販売できなくなる季節商品などもフードロスを生み出す原因となっています。

クラダシでは、これらの「3分の1ルール」や規格外、季節外れなどの理由で廃棄される食品をメーカーなどから仕入れ、販売することで、フードロスの削減を目指しています。

2 クラダシのビジネスモデル

クラダシを運営している株式会社クラダシは「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」をミッションとしています。「もったいないを価値へ」をスローガンに、フードロスという社会課題の解決に日本で最も取り組む会社であることを目標にしています。

日本は、国内で消費される食糧の約6割を輸入に頼っています。しかし、売れ残りや食べ残しが多い結果、廃棄される食品(フードロス)の量は年間523万トンと、世界の食糧援助量420万トンの約1.2倍の規模となっています(2023年6月時点)。

そこで株式会社クラダシでは、日本独特の「3分の1ルール」や規格外品、季節外れの商品などが多くのフードロスの原因と分析しました。問題なく消費できるのに廃棄されてしまう商品をメーカーや卸・小売店から格安で仕入れ、ECを通して24時間365日どこでも生活者に届けられる1.5次流通という新たな市場を開拓しました。

パートナー企業は本来廃棄となるはずの商品販売ができる一方、生活者も通常より安く商品を買いながら社会貢献できるなど、双方にメリットのある形でフードロスの削減を目指すビジネスモデルを構築しています。

また、株式会社クラダシは実店舗での販売も開始しています。オフラインでの顧客ニーズのデータを蓄積し、オンラインとオフラインを融合させた顧客体験の向上によるブランディング強化を進めています。このほか、オンライン販売で得られたデータをメーカーに開放し、ブランディング支援やECコンサルティング支援などのサービスも行っています。

2-1 パートナー企業側のメリット

クラダシに出品しているパートナー企業にとって最も大きなメリットは、本来廃棄される予定だったものが、収益を生み出す製品・商品に生まれ変わることです。従来廃棄に掛かっていた費用も不要になるため、利益改善に寄与することが期待されます。また、クラダシで購入された製品や商品は、売上の一部が社会貢献に使用される点も、パートナー企業のブランドイメージ向上やESG経営につながると期待されています。

農産物の生産者にとってもメリットがあります。農業では、形が悪い作物や着色不足などの規格外品は出荷が難しいため、味や新鮮さに問題のない規格外品を価値のある商品として出荷できるクラダシの仕組みは、農業従事者にとっても収益改善につながると期待されています。

なお、株式会社クラダシのパートナー企業にはコカ・コーラ(2579)や吉野家(9861)、ヱスビー食品(2805)、江崎グリコ(2206)など知名度の高い上場企業も多く、クラダシの成長と共にパートナー企業も増加傾向にあります。

2-2 生活者側のメリット

クラダシでは、本来の小売価格よりも安く購入できます。例えば、ギフトやお中元としても使える「ザ・スウィーツ キャラメルサンドクッキー」(21個入り×3箱)は参考小売価格9,720円ですが、クラダシでは賞味期限間近のため80%オフの税込1,980円で販売されています(2023年8月11日時点)。

また、小腹が空いた時や保存食としても使えるカップのまま電子レンジで温めるだけの「三ツ星カップ食堂 すき焼き」(230g×24本)は、参考小売価格11,275円ですが、クラダシでは賞味期限間近のため71%オフの税込3,240円で販売されています(2023年8月11日時点)。

さらに、クラダシで買い物すると手軽に社会貢献できるのもメリットとして挙げられます。上記の通り、購入金額の一部は、社会貢献活動の支援になる仕組みで、購入時に応援したい社会貢献団体を自由に選べます。

例えば、応援先の団体は、生物多様性の保護に取り組む「日本自然保護協会」、飢餓や栄養不足に苦しむ人々への支援を行う「国連WFP協会」、障がい者アーティストと共に社会貢献型事業を行う「障がい者自立推進機構」、災害復興支援や無料で通える学校を開校している特定非営利活動法人「オンザロード」などがあり、商品を購入するだけで手軽に社会貢献活動を応援できます。

なお、クラダシ会員専用のマイページでは、商品の購入などによる社会貢献度やフードロス削減量を数値として確認することが可能です。これにより、自身の行った社会貢献活動が視覚的にもわかりやすく、社会貢献活動を続けるモチベーションにもつながります。

2-3 持続可能な「食」への取り組み

フードロス削減に取り組む株式会社クラダシは、米国の非営利団体B Labが運営する、環境性や社会性、透明性の高い企業に与えられる「B Corp認証」を、日本で13番目に取得しました。

同社はサステナビリティの重点取り組み(マテリアリティ)として、以下の5つを掲げています。

  • ソーシャルグッドな世界の実現
  • フードロス削減と環境への貢献
  • おいしい食へのアクセスの向上
  • 企業と人が共に成長できる場所
  • コーポレートガバナンスの強化

また、クラダシによるサステナビリティ・インパクトとして、以下のように発表しています(2023年6月末時点累計)。

  • フードロス削減量 17,615トン
  • CO2削減量 46,697トン
  • 経済効果 85億7,044円
  • 累計寄付金額 1.1億円

(※参照:株式会社クラダシ「決算発表」、「サステナビリティレポート」)

同社が運営するクラダシ基金では、地方創生事業、フードバンク支援事業、食のサステナビリティ研究会、教育事業への支援を行っています。例えば、社会課題解決に関心のある学生が、全国の農家へインターンとして訪れ、作物の収穫支援や一次産業・地域経済の活性化について考える社会貢献型インターンシップを行っています。2023年6月期は、北海道、愛媛、沖縄など12の地域で開催されました。

この他、2022年10月には「食のサステナビリティ共創・協働フォーラム」を開催し、一橋大学、スープストックトーキョー社やブルーボトルコーヒー社、農林水産省など、官民学の各分野の登壇者たちを招き、「食」のサステナビリティ実現への取り組み事例などの発表を行いました。

3 クラダシの業績

以下は、株式会社クラダシの直近5期分の決算状況をまとめた表です。売上高は右肩上がりに増えているものの、2022年6月期から2期連続で最終赤字を計上するなど、やや苦戦している状況です。

決算期 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
売上高 531 566 1,263 2,073 2,910
経常利益 12 18 60 ▲74 ▲171
当期利益 5 5 34 ▲80 ▲167

(単位:百万円、決算期:6月)
(※参照:株式会社クラダシ「経営成績」)

本業の稼ぐ力を表す営業利益も2021年6月期の54百万円から2022年6月期▲74百万円、2023年6月期▲164百万円と売上高の増加に伴っておらず、上表の通り経常利益も2期連続の赤字となっています。

一方、この決算状況は、2014年7月に設立された株式会社クラダシの認知力を上げるためのマス向けプロモーション費用など、先行投資的な広告宣伝費を多く支出していることも理由となっています。決算説明資料の通り、売上高の増加と共に売上総利益は増加しており、今後はこの先行投資の回収による利益の増加が期待されます。

株式会社クラダシが2023年8月10日に発表した2024年6月期予想は、売上高3,500百万円、営業利益45百万円、経常利益45百万円、当期純利益80百万円となっており、2期連続の赤字から一転して大幅な増収増益を目指しています。

4 クラダシの将来性

フードロス問題は、SDGsの中で「12. つくる責任、つかう責任」にかかわる課題の一つとして挙げられ、「12-3. 2030年までにフードロスを半分に減らす」ことが目標として掲げられています。

日本では、2019年10月1日に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行されるなど、2030年までのフードロス削減に向けて国を挙げた取り組みが進行中です。

そのような中、クラダシの取り組みはフードロス削減に取り組むサステナブルな事業活動として外部機関から高く評価されています。以下は、数々の環境や社会貢献に関する受賞歴の一部です。

受賞歴
2022年 「令和4年度食品ロス削減推進表彰」環境大臣賞受賞、
第31回「食品安全安心・環境貢献賞」受賞、
「脱炭素チャレンジカップ2022」優秀賞、他
2021年 「令和3年度消費者志向経営優良事例表彰」消費者庁長官表彰(特別枠)、
crQlr Awards「Systems to Save Waste Prize」「Circular Platform Prize」「Pivoting Prize」受賞、
「第4回エコプロアワード」 優秀賞、他
2020年 「食品ロス削減推進大賞」消費者庁長官賞、
第21回「グリーン購入大賞」農林水産大臣賞、
令和2年度「気候変動アクション環境大臣表彰」、
第7回「食品産業もったいない大賞」審査委員会委員長賞、他

(※参照:株式会社クラダシ「Awards」)

クラダシのビジネスモデルは社会課題の解決に資する事業として高く評価されているほか、2023年6月30日の東証グロース市場に新規上場した際は、公募価格520円に対して初値が53.84%上回る800円となるなど、株式市場からも期待の高さが表れています。

また、株市会社クラダシは社内の体制強化も進めており、2022年7月1日に実施した最高人事責任者(CHRO)や最高技術責任者(CTO)の設置によって更なる事業成長を加速させる体制となったことも将来性を期待させる要素です。

5 まとめ

クラダシのビジネスモデルは、フードロスを削減するだけでなく生産者と利用者の双方にメリットをもたらす社会性と経済性の両立を目指しています。パートナー企業と会員登録者数は増加を続けており、今後もサービス参加者の拡大と共にフードロス削減量が増えることも期待されています。

一方、2023年6月30日の新規上場後、初めての決算発表となった2023年6月期は2期連続の最終赤字となる冴えない内容ですが、翌期以降は先行投資として支出してきた広告宣伝費などの抑制によって増収増益の予想となっています。

クラダシのESG取り組み内容や投資に関心のある方は、この記事を参考にご自身でもお調べになった上で検討してみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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