証券会社を経て、暗号資産(仮想通貨)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。
目次
暗号資産のマーケットは、株やFX、金などの伝統的な金融資産と比較して少し変わったマーケットと言えます。特に値動きが大きく、リスク管理やトレードの難しさが際立っています。期待リターンが大きい反面、その分リスクも大きいいため、リスクリターンの適切な管理がとても困難になります。
そのため、「暗号資産に投資したら何倍にもなった」という良い話を耳にする人も多いかもしれませんが、実際にはかなり難しいものと認識しておくべきでしょう。暗号資産とFXとでは市場は異なりますが、分析手法は共通するものが多く、テクニカル分析についても活用できるものが数多くあります。ここではテクニカル分析で人気の指標である「一目均衡表」について解説したいと思います。
①一目均衡表とは?
一目均衡表とは英語でも「ichimoku」と呼ばれているように、日本で生まれたテクニカル指標です。一目均衡表をチェックすることで、現在の位置やトレンド、強さ等がひと目でわかるようになっています。
初めて一目均衡表を見た方にとっては、ラインが沢山あるのでごちゃごちゃして見にくいかもしれませんが、慣れてくるととても重宝するテクニカル指標です。それでは実際の一目均衡表をチャート上でチェックしましょう。
転換線と基準線
上記はGMOコインのBTCJPYの日足チャートです。GMOコインはTradingViewを採用しており、テクニカル指標が豊富に揃っているためとてもテクニカル分析が行いやすい暗号資産取引所なのでおすすめできる取引所の一つです。
上図は一目均衡表と構成するラインの名前を色を分けて示しています。
1つ目のポイントは「基準線がどちらを向いているのか」です。基準線はその名の通り基準となる線ですが、このラインが上向きであれば上昇相場、横ばいならトレンドなし、下向きであれば下落相場となります。
この基準線が上向きとならないまま価格が上昇するケースがありますが、このような上昇は継続性がないと判断できるので覚えておきましょう。
2つ目のポイントは「転換線と基準線が交差するかどうか」です。これは一目均衡表でも大きな意味を持っており、移動平均線とゴールデンクロスとデットクロスのような意味合いを持ちます。
転換線が基準線を下から上に抜けてくる(好転)と上昇トレンドに入ったと判断できます。反対に、転換線が基準線を上から下に抜けてくる(逆転)と下落トレンドになったと判断します。
上図チャートはこの転換線と基準線のみを太いラインで示したもので、2つの相場の転換点を丸印で示しています。このようなところでトレンドを判断するようになります。
先行スパン1と先行スパン2
次に一目均衡表で見られる雲について説明します。
雲は「先行スパン1」と「先行スパン2」との間位にできる空白地帯のようなポイントを指し、トレンドが変化しそうな個所となります。雲のラインは抵抗線(レジスタンス)となったり支持線になったりもするため重要なラインとして認識しておきましょう。
上図は雲と先行スパン1、先行スパン2を表しています。2つのラインの間の空間が雲となります。
このチャートの場合、ローソク足が先行スパン1に到達すると「下落が止まりやすい」と考えるのがセオリーです。イメージとしてはローソク足が雲の上方で推移している間は上昇トレンドの期間であり、雲の上限に落ちてくると、上方を維持しようと反発する傾向があります。これが支持線と呼ばれており、チャートでいうところのサポートラインとなります。大きな時間軸で雲の上を推移しているかどうかだけでも、見る価値があります。
先行スパン1と先行スパン2の計算式が異なるため、先行スパン1の方が短期的な価格の動きに敏感に反応します。そのため移動平均線の短期と中期を組み合わせたようなイメージかもしれません。先行スパン1と先行スパン2をチェックすることでトレンドの強さを確認できるため、重要なポイントとして理解しましょう。これは強気相場なのか弱き相場なのかここからもトレンドの強さが判断できるようになります。
先行スパン2(遅行スパン)は26日前の価格に遡ってラインが形成されます。そのため、26日前の価格と当日の価格との位置の変化を見ることができます。取引量が多い状態で、26日前の位置よりも現在の価格が上で推移しているのであれば売却して利益を出すことができる水準になっていることを意味するので、相場が強い状態を示します。当日の価格が26日前よりも安いときは利食える水準にないので、相場が弱い状態を示します。
下落相場の時はこの先行スパン1と先行スパン2の位置が上下逆となります。
このように一目均衡表は一つのテクニカル指標ですが、トレンドの強さを様々な角度から確認できるため、トレーダーに重宝されています。これは海外の投資家からもとても人気の指標となっているので、是非皆さんも理解していただくといいでしょう。
また一目均衡表はできれば4時間足以上で利用することをおすすめします。中期的なトレンドでトレードしたい方にとって、利用価値の高いテクニカル指標です。
②一目均衡表のみではなく併用してトレード判断を
テクニカル指標はあくまで参考材料を示すツールであり、聖杯ではありません。特に、一つのテクニカル指標に頼ってトレードを行うことは控えましょう。
例えば、一目均衡表にオシレーター系指標(MACDやRSI等)を併用することで、トレンドの強さを確認しながらトレードする方法があります。ダイバージェンス を利用してトレードするアイデアです。
一見すると、一目均衡表の雲の上方で推移しているため上昇トレンドと思っても、実はMACDやRSIではダイバージェンスが起きているということもあります。
上図は一目均衡表とMACDを組み合わせたチャートです。5月末頃を見ると、ローソク足が緩やかに上昇しているものの、MACDは切り下がっており、強気の勢いが低下していることがわかります。このようにテクニカルを併用することによって、複合的に相場を判断することができるようになります。
このような組み合わせは投資家によって千差万別です。是非MACD以外でも色々と組み合わせて頂けると判断がしやすい組み合わせが見つかるかもしれません。色々考えながら試行錯誤しつつテクニカル分析を楽しんでみてください。
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中島 翔
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