今回は、グレースケールプレミアムのトレードへの活かし方について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- グレースケール社の概要
- グレースケールの投資信託とは
- グレースケール投資信託の利点
- グレイスケールのGBTCプレミアムとは
- GBTCプレミアムをトレードに活かす
5-1. GBTCプレミアムが上昇した場合
5-2. GBTCプレミアムが下落した場合 - まとめ
ビットコインの価格乖離(プレミアム)指標の代表的なものとして、Coinbaseプレミアムやキムチプレミアム(コリアプレミアム)を解説しましたが、これらは主に地域間での価格差に注目してトレードを行うものでした。
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その他の代表的なプレミアム指標と言えば、アメリカの大手投資機関であるグレースケールが発行するビットコイン投資信託「GBTC」があります。近年、大手メディアでも注目されることが多くなっており、多くのトレーダーの間で分析されています。そこで今回は、グレースケールのGBTCプレミアムとトレードへの活かし方について解説します。
①グレースケール社の概要
2013年9月にアメリカニューヨークで設立されたグレースケール社(Grayscale innvestment LLC)は、早くからビットコインへの投資を始めてきた会社です。過去にアメリカでグレースケール社がビットコインのCMを流し、ビットコインの認知と普及に努めたため、ビットコイン人気の火付け役と言われたりもしています。
グレースケール社のBTC保有量は2021年6月現在で約65.1万BTCで、ビットコインの全発行量の3.6%を保有しています。そのためグレースケール社はビットコインの世界で巨大なクジラの一つであり、仮に彼らがビットコインを動かすと相場は大きく変動する事になります。
②グレースケールの投資信託とは
グレースケール社が取り扱っている投資信託は、集めた資金を仮想通貨で運用し、運用益を投資家に還元する仕組みです。同社のビットコイン投資信託「GBTC」への投資資金の94%が機関投資家からであり、金融の世界のプロからも注目されている会社だといえます。
グレースケールが取り扱っている商品はGBTC以外に、Grayscale Bitcoin Cash Trust(BCH)、Grayscale Ethereum Trust(ETH)、Grayscale Ethereum Classic Trust(ETC)、Grayscale Litecoin Trust(LTC)、Zcash Trust(ZEC)など複数があります。
③グレースケール投資信託の利点
投資家サイドから見たグレースケールの投資信託のメリットは、仮想通貨を保有する知識が不要で、従来の証券口座からアクセスできることです。パスワード忘れ等の保有のリスクもないため、従来の投資家はグレースケールの仮想通貨投信のような金融商品を選びます。
仮にGBTCの価格がコインベース取引所の現物ビットコインよりも高くても、GBTCの価格がそこからさらに上昇する限り、利益が発生します。特にグレースケールのビットコイン投信は、2020年以降の強気相場にグローバルなビットコイン価格よりも高い値が付く「プレミアム」が発生していたため、そこから利益を得ようとしたヘッジファンドなどの大口の機関投資家が参入しました。
機関投資家の手法は、仮想通貨融資企業から借りたビットコインをグレイスケールに受渡し、GBTCの証券を受取り、半年間のロックアップ期間の終了後にGBTCを売却する形で、アービトラージ(最低取引)を行うものです。2021年4月にGBTCの運用資産は約414億ドル規模に上り、1年前の15億ドルから急成長しました。
しかし、2021年4月14日をピークにビットコイン価格は下落し始めると、6月末には約223億ドル規模に減少しています。
④グレイスケールのGBTCプレミアムとは
続いてグレイスケールのGBTCプレミアムについて解説します。GBTCプレミアムとは、ビットコイン投信と現物価格との価格乖離(プラスの場合はプレミアム、マイナスの場合はディスカウント)です。計算式は以下の通りです。
プレミアム=(1GBTCあたりのビットコイン数×ビットコイン価格)÷(GBTC価格−1GBTCが含むビットコイン数×ビットコインの価格)
GBTCプレミアムのチャート
上図はGBTCプレミアムのチャートです。ビットコイン価格は黒の線グラフで表示されています。GBTCプレミアムは赤線で表示され、左の縦軸がそのパーセンテージです。表示は割合で表示されており、0のラインが0%、つまりプレミアムが消滅した状態を示します。2021年3月以降はプレミアムがマイナス(ディスカウント)となっていることがわかるでしょう。
GBTCプレミアムが高い時期は米国の強気市場を示し、一方でプレミアムがマイナスの時期は弱気であることを示しています。
⑤GBTCプレミアムをトレードに活かす
最後にGBTCプレミアムをトレードに活かす方法について解説します。
GBTCプレミアムは特にアメリカの大口投資家の動向をいち早く察知する指標としてトレーダーに活用されています。なぜならグレースケールのGBTCに投資している投資家の94%が機関投資家であり、アメリカの機関が多いからです。GBTCの価格が上がるということは、アメリカの機関投資家がビットコインの先行きを強気に見て、GBTCを購入しているとみなすことができます。こうした見方に基づいてトレードを行います。
5-1. GBTCプレミアムが上昇した場合
GBTCのビットコインの買い圧力が高まると、GBTCプレミアムはプラス方向に拡がります。これはアメリカの大口顧客の買い注文が増えていると推測でき、「短期的にサポートが機能する」と予想されます。
しかし、プレミアムが大きくなりすぎている時は市場の過熱感を示すため、「近いうちに急落が発生する確率が高くなっている」と見ることもできます。
つまり、以前よりもGBTCプレミアムが上昇し始めた時点で、相場の天井を意識しつつ「買い」でエントリーし、程々のところで利確をします。そして、下がり始めた時にトレンドフォローでついていくというトレードスタイルが考えられます。
5-2. GBTCプレミアムが下落した場合
GBTCプレミアムが下がった場合は反対のトレードをします。GBTCプレミアムが減少する方向に動いている場合、アメリカの大口顧客の売り注文が増えていることになり、大きな売り圧力として働きます。
為替と違い、ビットコインのような商品の場合は、価格の下落の方が勢いよく進行する特性があります。下落をトレンドフォローし、プレミアムの上昇の確認や他の上昇材料が揃ってから「買い」に途転するトレードが良いでしょう。
⑥まとめ
グレースケールがビットコインの価格に影響を及ぼす力は大きく、動向には常に注意をしておきたいものです。グレースケール関連のオンチェーン分析データはいくつかありますが、GBTCプレミアムは非常にトレードの参考になるデータだと思います。
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中島 翔
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