【元トレーダーが解説!】暗号資産の窓開け・窓埋めトレード戦略とは?

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証券会社を経て、暗号資産(仮想通貨)取引所でトレーディング業務に従事した後、現在は独立して仮想通貨取引プラットフォームのアドバイザリーや、コンテンツ提供事業を運営する中島翔氏のコラムを公開します。

目次

  1. チャートにおける「窓」とは?
  2. 窓埋めとは?
  3. ビットコイン市場で生じる窓とは?
  4. 窓埋めの頻度は?
  5. 窓が発生した場合の平均乖離幅は?
  6. 窓開け・窓埋めトレードの注意点とまとめ

暗号資産の市場は24時間365日相場が動いています。土日もトレードできるためトレードする人間としては魅力的な市場とも言えることから、日本のFXユーザーからも注目を集めています。

最近では、暗号資産の市場で「窓開け・窓埋め」という事象が注目される場面が増えてきました。24時間365日動いている暗号資産市場では「窓」は発生するわけがないのですが、いったいどういうことでしょうか?ここではチャート上で生じる窓について、そして窓を活かした投資戦略について解説したいと思います。

①チャートにおける「窓」とは?

最初にチャート上で発生する「窓」について解説したいと思います。

株式市場などで頻繁に発生する窓は、「前日の終値」と「当日の始値」の価格差が生じた場合に発生するスペースを指します。チャートで見ると下記のような紫色の○印の箇所を窓と呼びます。
Gap1
株の場合、東京時間15時に株式市場が閉まってから翌朝9時にオープンするまでの間に重大なニュースが出たりすると、翌朝にそのニュースを織り込んだ注文が入るため、寄り付きの株価に大きな差が生まれることがあります。

上昇方向に差が生じることを「ギャップアップ」、下落方向に差が生じることは「ギャップダウン」と呼ばれています。窓はマーケットのトレンドや需給が傾いた時に発生するため、投資家も特に注目しています。それでは次に「窓埋め」について解説します。

②窓埋めとは?

窓埋めとは、先ほど説明した窓が発生した部分を埋めに行く値動きのことを指します。実際のチャートで窓埋めの様子をご覧ください。
Gap2

上図では最初の青○印の位置でギャップダウンしています。次のローソク足は一旦下攻めをするも失敗し、そのまま陽線で引けています。ここで地合いの強さが現れてきたと言えるでしょう。その次のローソク足は前日の高値を超えて最初の青○印のギャップダウン部分を埋めに行く動きとなっています。これが窓埋めと呼ばれる動きです。

窓埋めのメカニズムははっきりと解明されていませんが、この現象はマーケットのアノマリー(経験則)とされています。

窓埋めをするためにかかる期間は様々です。上記のように2日で完了することもあれば、1ヶ月かかることもあります。窓埋めまでの期間の目安は予測不可能です。

そのため、窓が発生したからといって窓埋めを期待して大きな金額でトレードをすることは止めましょう。逆方向に価格が動いてロスカットの水準まで到達し、窓埋め前に撤退を余儀なくされるかもしれません。

トレードのリスク管理は徹底することは常に意識しておきましょう。

③ビットコイン市場で生じる窓とは?

次にビットコインでなぜ窓が生じるのかを説明します。ビットコインを含む暗号資産市場は基本的に24時間365日動いている市場ということは冒頭にお伝えしました。

しかし、機関投資家が利用するCME(シカゴマーカンタイル取引所)のビットコイン先物は週末が休場となっています。CMEの取引時間は米国中央時間(CT)の日曜日から金曜日午後6時から翌午後5時(日本時間午前8:00~翌午前7:00)となっています。

つまり金曜日のクローズから月曜日のオープンまでに、世界市場のビットコイン価格の値動きを反映して、窓が発生するということになります。それでは実際にCMEビットコイン先物のチャートをご覧ください。
Gap3
上図では、青○印のところで窓が発生しています。CMEのチャートを見ると窓が発生しているのですが、他の暗号資産取引所のチャートではこのような窓は発生しません。

下記は同じ期間におけるGMOコインのチャートです。青○印がCMEのチャートで窓が生じたタイミングに該当します。
Gap4
GMOチャートを見ると土日にビットコインが急落しています。この値動きがCMEのチャート上でギャップダウンを発生させています。

次にCMEで窓が発生した場合に、どのくらいの頻度で窓埋めが完了するのか解説します。

④窓埋めの頻度は?

CMEがビットコイン先物を上場したのは2017年12月です。当時から2020年2月までに100ドル以上の窓が発生した回数は計14回ありました。期間を考えない場合、14回すべてで窓埋めを完了しています。

つまり、窓を「埋めなかったことはない」ということです。しかし、この窓埋めまでの期間にばらつきがあります。

全体の50%以上の確率で10日以内に窓埋めが完了しています。また、35%以上の確率で3日以内で窓埋めが完了していました。その他は、窓埋めの完了までに10日以上の期間がかかっていました。

7割以上の確率で20日以内に窓埋めが完了しているというデータは、1ヶ月ほどポジションを保有する資金力があれば利益を出せる可能性を示しています。しかし、裏を返せばその期間内は逆方向に推移して評価損を被る可能性があるということです。

評価損が膨らみ続けて暗号資産FXの証拠金維持率が低下した結果、ロスカットが発動したりするとトレードは終了となります。つまり窓埋めを軸にトレードをする場合、無理のないポジション量で取引をすることが重要と言えます。

⑤窓が発生した場合の平均乖離幅は?

過去14回発生した窓における平均乖離幅は2,000ドル弱となっています。これは、窓が発生した後、窓を埋めるまでの間に逆方向へ推移した値幅が2,000ドル弱であるという意味です。タイミングによっては4,000ドル近く離れた時もありました。

4,000ドルとなると値幅としてはかなり大きいです。最終的に窓が埋まると思っていても、これだけ逆方向で評価損が発生してしまうとポジションを保有している投資家にとって、心理的に辛い期間となります。

先ほど、リスク管理が重要とお話しましたが、最大4,000ドルは逆方向に進む可能性もあるとことを頭に入れて、トレードする必要があるということです。

ちなみに100ドル以上の窓が発生する確率は1か月に1度くらいと言われています。これからは毎週月曜日にCMEのビットコイン先物市場で、窓の有無を確認して売り買いを行ってみるといいでしょう。

⑥窓開け・窓埋めトレードの注意点とまとめ

ここでご説明した内容はかなりシンプルにしてあり、詳細に分析するとよりわかってくることもあるでしょう。あくまでも、ここでお伝えしたいのは「資金管理を徹底すれば窓開け・窓埋めトレードは誰でもできる」ということです。

短期的に利益を出そうとレバレッジを大きくかけると、ご説明した反対方向への乖離の途中でロスカットが発生して資産を失うことになりかねません。そのため、価格が半値になっても問題がないくらい余裕をもったトレードをすることで、窓開け・窓埋めトレードは機能すると思います。

またこの窓開け・窓埋めトレードの手法は暗号資産トレーダーの間では広く知られています。多くの投資家が毎週、窓が発生しているか、発生したとしたら何ドル乖離しているのかチェックしています。

暗号資産FXの中でもシンプルであり、とても利用しやすい手法なので取り入れやすい手法の一つです。まずはこの記事の内容を理解して頂き、実際にチャートをチェックしながら過去の動きを見てみるといいでしょう。CMEのビットコイン先物の価格はこちらのリンクからチェックできます。

CMEビットコイン先物価格とチャート、そして現物市場の取引所のビットコイン・チャートと見比べて見ながら窓開け・窓埋めの戦略をシミュレーションしてみてください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12