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4大監査法人の1社として知られるEY(Ernst & Young)は、5月10日にイーサリアムベースのCO2排出量追跡プラットフォーム「EY OpsChain ESG」のベータ版提供開始を発表しました。このプラットフォームは、イーサリアムブロックチェーンを基盤としており、取引履歴の透明性が確保されています。この記事では「EY OpsChain ESG」の特徴や、ブロックチェーンを導入したカーボン・クレジットに関する制度についても触れていきます。
①カーボンクレジットのブロックチェーンプラットフォーム
EYは「EY OpsChain ESG」を通じて、正確なカーボンフットプリントの測定・追跡をサポートします。このプラットフォームは、CO2排出量の一貫したビューを提供し、企業のニーズに応えるだけでなく、消費者やビジネスパートナー、規制当局からの透明性要求にも応えることができます。具体的には、エコシステム内の排出量やカーボンクレジットのトレーサビリティを「トークン化」の手法を通して実現しています。
また、「EY OpsChain ESG」は、「InterWork Alliance for Carbon Emissions Tokens」の基準に沿った形で構築されています。
②カーボン・クレジットの可視化
EY社のグローバルブロックチェーン部門のリーダーを務めるポール・ブロディ氏は、ブロックチェーンのトレーサビリティを活用して炭素排出量を特定の製品とリンクさせ、脱炭素化の取り組みを可視化する利点について強調しています。ブロックチェーンの特性上、炭素排出量の追跡が容易となり、企業の脱炭素化戦略を策定する際のサポートとなります。
カーボン・クレジットは、温室効果ガスの排出削減量を示す証明書で、企業の環境保全活動によって発生する削減効果をクレジットとして取引することができる制度です。しかしながら、カーボン・クレジット市場には透明性の不足が指摘されています。ブロックチェーンの導入は、この問題を解消し、全ての取引段階での情報アクセスを可能とし、高い透明性と信頼性を実現します。
③EYのトレーサビリティソリューションとは
2022年5月、EYはイーサリアムブロックチェーンを基盤としたサプライチェーンのトレーサビリティ管理ツール「EY OpsChain Supply Chain Manager」のベータ版をリリースしました。一般的に、ブロックチェーンを活用したトレーサビリティサービスはプライベート/コンソーシアムブロックチェーンで開発されることが多い中、このツールはパブリックブロックチェーンを採用。商品のトレーサビリティや在庫管理・分析が可能です。
ブロックチェーンには、取引情報を公にアクセス可能にする「パブリックブロックチェーン」と、限定的なノードのみがアクセス可能な「プライベートブロックチェーン」が存在します。パブリックブロックチェーンは高い透明性を持ちますが、全ての情報が公開されるためのリスクも伴います。
「EY OpsChain Supply Chain Manager」は、パブリックブロックチェーンを採用することで、高い透明性を持つ一方、不正行為の防止や取引の信頼性向上も目指しています。
3-1. カーボンクレジット市場とブロックチェーン
カーボンクレジット市場におけるブロックチェーンの導入事例が増えています。カーボンクレジット市場は、企業が炭素排出量を削減するために、環境保護プロジェクトに投資することで得られるクレジットを取引する市場です。
ブロックチェーン技術は、カーボンクレジット市場において、取引の透明性や効率性を高めるために活用されています。 Forbes JAPANによると、非効率的なカーボンクレジット市場をブロックチェーンの力で変革しようとする企業やプロジェクトが数々出現しており、特にサステナビリティ分野とブロックチェーンの相性は良く、実用事例が台頭し始めています。
⑤まとめ
世界的な4大監査法人の1社EYが新しいイーサリアムベースのCO2排出量追跡プラットフォーム「EY OpsChain ESG」の提供を開始しました。このプラットフォームはブロックチェーン技術の透明性を活かし、企業のカーボンフットプリントの正確な測定と追跡をサポートします。さらに、トレーサビリティの要件を満たすため、炭素排出量と製品をリンクさせることが可能となります。
カーボン・クレジット市場の透明性の問題も、このブロックチェーン技術の導入により解消を期待されています。また、EYはサプライチェーンのトレーサビリティ管理ツール「EY OpsChain Supply Chain Manager」もリリースし、ブロックチェーン技術を活用した取引の透明性と信頼性を追求しています。これらの取り組みは、環境問題に対する企業の説明責任を高め、持続可能なビジネスの推進をサポートするものと期待されます。
立花 佑
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