今年のビットコイン相場のポイントをプロが徹底解説!

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年初は大きく変動していないビットコイン相場でしたが、春先から急に相場が上下に激しく変動しており、これは春先から継続している状況です。これは様々に理由があるため、ここでは今年のビットコイン相場をアルトコインの動きと関連しながら説明していきます。

目次

  1. ビットコインのプレイヤーが変化
  2. エマージング諸国のビットコインニーズの変化
  3. リスク資産からの逃避先としてのビットコインが候補に
  4. レジスタンスラインの突破
  5. USDT発行後のUSDT売り、ビットコイン買いフロー
  6. 相場は様々な要因が重なり合って成り立っている

ビットコインのプレイヤーが変化

最初に、今年の値動きの説明を行う上で大事なのは、ビットコインのプレイヤーの変化についてです。ここではそのプレイヤーがなぜ変化しているのかわかる材料をご紹介したいと思います。

そのためにはドミナンスについて見ていきましょう。ドミナンスとは仮想通貨全体の市場規模に占める各通貨の割合を示しており、どの通貨に資金が流れているのかがわかりやすいチャートとなっています。ドミナンスのチャートは下記のようになっています。


図:CoinMarketCap

まずはオレンジのチャートをご覧ください。オレンジはがビットコインのドミナンスで、ビットコインドミナンスだけで見ると昨年の夏頃からビットコインのドミナンスの割合が増加しているのが見て取れます。この割合が大きく増加している理由は「機関投資家が参入し始めることが多くなったから」です。

では、仮想通貨のマーケットに参入する時になぜビットコインに資金が集中するのかを説明します。これには機関投資家の特性が関連しています。機関投資家は一般投資家よりも投資資金の金額が大きいことは想像できるでしょう。こうした投資家が仮想通貨を売る際に、市場規模が小さいマーケットで大量に売却をすることで大きく値崩れを起こしてしまいます。また、流動性(市場で取引されている取引量)が少ない市場では売りたくても売れない環境も出る可能性が出てきます。買いたいという注文がなければ売りたいものも売れないということです。株の世界でたびたび起きるストップ安も、同様のロジックで、売りたい注文が多すぎて買いたい注文が入らないことから取引が成立しないまま値幅制限の下限で止まってしまう現象のことです。

仮想通貨で流動性が一番厚く、取引が一番されているのがビットコインです。これはビットコインを売りたい時にプライスが急変しない可能性が他の通貨よりも高いという意味で、アルトコインよりもビットコインでまずはスタートするという機関投資家が自ずと増えることになります。

流動性は顧客の資産を預かる機関投資家にとって無視することができない要素です。プロの投資家は売りたい時に売れない恐怖を熟知しているため、機関投資家の参入がビットコインドミナンスを増やし、ビットコインの価格に波及していると考えるのが筋が通っているでしょう。

エマージング諸国のビットコインニーズの変化

次にご紹介する材料は、エマージング諸国の国民が断続的に自国通貨を売ってビットコインに変えているフローがビットコインの価格上昇に寄与しているという事実です。

ここで言うエマージングとはこれからの成長が期待される新興国の国々を指しています。外国為替証拠金取引(FX)ではエマージング通貨は高金利ということで認知されており、エマージング諸国とは例としてトルコ、南アフリカ、メキシコ、ブラジル、中国、インド等が代表的な国々です。

エマージング諸国は新興国ということもあり、自国通貨の信任がない国々が多いという現状があります。例えば、トルコのトルコリラは10年程前まで対円で100円程度ありましたが、その後下落の一途を辿り、現在は19円程度まで下落しています。つまり5分の1以下の価格まで下落が続いているということです。私たちでいうと、自国通貨である日本円が下落するということは実質所得が低下するということを意味しています。

例えば、海外のお菓子が1ドルと過程し、為替のレートが1ドル100円とします。そのため海外のお菓子は100円で現在購入できたとします。しかし円安となり1ドル120円となった時に100円を財布に入れていたとしても、輸入する時に海外に購入代金として払うのは1ドルであり、100円ではありません。つまり120円で買うことになり、販売価格も相応に値上がりすることになります。これが通貨安による物価上昇で、トルコもこの輸入物価の上昇による消費鈍化が進行しました。国内で稼ぐことができるトルコリラの金額は変わらないものの、海外からの輸入に頼っている国であるため、輸入時の物価の上昇により国内の消費が鈍化し景気後退が進みトルコリラの下落に拍車をかけるという連鎖が続いています。もちろん、通貨暴落の防衛策のために政策金利を上げて通貨安に歯止めをかける対策も講じられているものの、なかなか上手くいかないのが続いているということです。

ではこうした通貨に対する不信がビットコインとどのように関係するのでしょうか?トルコリラを持っていても通貨安によって実質的に所得が減少してしまうということであれば、この自国通貨をビットコインに変えて、ビットコインの上昇により資産を守ろうとする動きは当然の動きと言えるでしょう。こうしたトルコリラ売りビットコイン買いがビットコインの上昇に寄与しており、トルコのように自国通貨を信用できないと考えるエマージング諸国の人々の資金フローがビットコインが上昇の一因となっています。

リスク資産からの逃避先としてのビットコインが候補に

次にご紹介するのは、ビットコインが金と同じリスク回避資産としての動きが観測されはじめているというものです。

現在、米中貿易摩擦の問題から米国の株式市場が急落し、各国の金利は急低下、様々な国々が先んじて利下げを行い、金融緩和の方向へ舵を切りつつあります。景気が悪化する時に投資家から選好されやすいプロダクトは、金、日本円、債券の3つが伝統的なアセットとして代表的なものです。金は有限資産であるためリスクオフの時には一旦お金を逃す手段として選好されやすいという特徴があります。

最近ではこうした資産にプラスしてビットコインに注目が集まっています。というのも、ビットコインは発行上限が決まっていることから有限資産とも考えられるため、先ほど説明した機関投資家のフローの中でリスクアセットからの逃避フローとして入っていることが想定されます。

そのため、株が急落したタイミングでビットコインが上昇するというケースも増えてきており、今後は株との相関係数が高くなることを想定しておいた方が良さそうです。現在では連動するタイミングと、連動しないタイミングがバラバラであるため、一概に必ずリスクオフ時にビットコインが上がるとも言いにくいですが、常にこの相関は気にしておくべきでしょう。また今後、米中貿易摩擦から中長期的な景気後退のフェーズに入る場合はビットコインが下落しにくい環境になるとも言えるため併せてこの点は覚えておくとよいでしょう。

逆に、ビットコインが下落したから株が上昇するということはあり得ません。ビットコインが売られたその金額分株が買われることはありますが、市場規模が違い過ぎるため、あまり株式市場には波及しないのが現状です。株式市場の動向が仮想通貨市場に影響を与えているのは、株の売りフローの一部がビットコインや仮想通貨に流れてきた場合、市場規模のの違いから大きく影響を与えやすいためなのです。

レジスタンスラインの突破

次にご紹介するのはテクニカル的な観点です。初心者の方でもわかりやすいように少し噛み砕いて記載していますので、少しラフな説明になっていますがご容赦ください。

チャートでは必ず意識されるラインという2つのラインがあります。1つ目は「レジスタンスライン」です。これは価格が上昇した際にポイントとなるところがあるという考え方で、投資家はその上限を意識して購入を控えやすく、そのラインから上には行きにくいというポイントを指しています。2つ目は「サポートライン」です。これは下落した際にどこまで価格が下落し止まりやすいのかを示しているもので、そこを超えるとよりサポートラインが転換しレジスタンスラインとなります。

下記が今年のビットコイン円のチャートとなります。

まずレジスタンスラインと記載しているラインをご覧ください。これは2回ほど上昇したにも関わらず価格上昇が止まってしまったラインで、ここを超えるかどうかを投資家は注目していることを意味しています。

ではなぜそのラインを超えると価格は上昇しやすいのでしょうか。それは2回目にそのラインにタッチしている事実から、今後もこの価格帯で価格上昇が止まると判断する投資家が多いためです。こうした投資家は価格が下落すると利益が出るショートポジションを保有します。ショートポジションをもつ投資家がどこで損切りをするかと考えると、このレジスタンスラインよりも上の価格帯です。このようなポジションが増えている中で、このラインを超えてくると損切りの買い戻しが大きく発生し、価格も高騰しやすいということになります。

レジスタンスラインを突破と記載しているのはちょうどそのフローが出た時です。一気に損切りの買い戻しが入ったこともあり、大きく価格が上昇しているのが見て取れます。当然ながら、そこから現在の水準まで上昇した要因はレジスタンスラインの突破だけではありませんが、それまでの下落トレンドを転換させた要因ではあります。このような動きになると売り圧力は減退し、買い圧力が大きくなることから上昇トレンドが継続しやすくなります。

このような重要なチャートポイントを知るテクニカル分析は投資家は必須のテクニックです。仮想通貨の投資を始める前には確実に勉強するようにしましょう。マーケットは1つの要因で動いているのではなく、さまざまな要因が絡み合って成り立っているものであるため、総合的に物事を判断する力がとても重要です。

USDT発行後のUSDT売り、ビットコイン買いフロー

夏場から、テザー社が発行する米ドルを裏付けとしたステーブルコイン「USDT(USDテザー)」の発行が進んでいます。USDTは現在、仮想通貨のマーケットで最も有名なステーブルコインとして知られています。

仮想通貨は成長過程の市場ですので、まだまだ値動きが激しい商品です。そのため、法定通貨と呼ばれる米ドルや日本円、ユーロ等の価値の動き方と同じような、値動きの小さな仮想通貨のニーズも高まっていました。そこで誕生したのがステーブルコインです。ステーブルコインは値動きを法定通貨と同じように連動させるため、仮想通貨のような値動きはほとんど発生しません。

ステーブルコインの代表にはUSDT、USDC、TUSD等があります。さまざまな規制を理由として法定通貨で取引ができない仮想通貨取引所でも、このようなステーブルコインを決済通貨として利用することで、売買が行われるようになりました。しかしながら、仮想通貨市場は流動性が薄いマーケットで、今もなお相場操縦も行われているといわれるマーケットです。USDTはテザー社と呼ばれる企業が発行しており、USDTを発行した後、BTCを買っているのではないかという噂が流れています。

実際にフローを見ても、USDTを売ってBTCを買うという動きが発生しており、テザー社が今回の値上がりを作為的に作ったのではとも言われています。では実際にどのようなチャートだったのか、USDTの発行量とビットコインの価格の動きをあわせたチャートを用意したのでご覧ください。


図:CoinMarketCap

ローソク足のチャートはビットコイン円のチャート、そして下段のチャートはUSDTの発行量です。ご覧いただくとわかる通り、USDTの発行量が急増する中、同じようにビットコインの価格が上がっていることがわかると思います。現在、このUSDTの疑念を巡る裁判が行われていますが、内容に関してはここでは割愛させて頂きます。

このように仮想通貨の市場は流動性が薄いことから、ちょっとした大口の投資家やフローによってこのように価格が形成されることもあります。これは外国為替証拠金取引とはまた違った特徴のため、投資を検討している方は注意しておきましょう。

相場は様々な要因が重なり合って成り立っている

これまでの内容だけでも色々出てきましたが、相場は1つの材料で動いているわけではないことがご理解頂けたのではないかと思います。相場は人間が作り出しているものですが、その市場参加者の違い、特徴、イベント、チャートの位置等がそれぞれ重なり合いながら、ある一定のラインを越えると一気に動き始めることが多いものです。

トレンドが出る期間は一年のうち3割もないと言われており、残りはレンジ相場と呼ばれる方向感のない展開が継続します。その間にどのような材料が出たら動くのか、その時のチャートの形など、色々頭で整理しながらトレンドを待つことが重要です。そして自分の中で値動きを理解し、ルール通り淡々とトレードすることはさらに重要なポイントです。1つの考えに捉われ過ぎず、木を見て森を見ずのような状態は避けるように意識しておきましょう。常に相場全体を俯瞰するような森の位置をチェックしましょう。

※筆者はこれまで、証券会社の外国為替のトレーディングやエマージング通貨建てクレジットトレーディングを行っていた経験から、テクニカル分析、ファンダメンタルズ分析の両輪での解説であり、個人的な主観も入ります。相場の見方は正しいものがあるわけではないため、ひとつの意見としてご覧ください。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12