物流業界の主なESG課題とサステナビリティの取り組みは?日本の主要企業の動向も

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物流・運輸業界は、社会にとって重要な役割を担っています。私たちの生活に欠かせない商品やサービスを、全国各地に運搬してくれるのは物流・運輸業界のおかげです。

しかし、物流・運輸業界は同時に多くの課題に直面しています。その中でも、ESGに関する課題は特に重要です。

この記事では、物流業界のESG過大とサステナビリティの取り組みについて解説します。

※本記事は2023年8月8日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 物流業界のESG課題
  2. 運輸部門の二酸化炭素排出量
  3. 物流業界が取り組むべき対策
    3-1.モーダルシフト
    3-2.労働力減少に対するオートメーション化
  4. まとめ

1.物流業界のESG課題

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字をとったもので、企業が持続的に成長するために必要な要素を包括したものです。

物流・運輸業界では、トラック輸送によるCO2排出量の削減やドライバー不足が深刻な課題となっています。トラック輸送によるCO2排出量の削減については、燃費の良い車両への切り替えや、輸送効率の向上など、さまざまな対策が必要です。ドライバー不足については、労働条件の改善や若手ドライバーの採用促進などの対策が必要です。

そして、ESG経営とは、持続的(サステナブル)な成長を目指す経営手法です。ESG経営は利益を追求する経営手法ではないため、企業はなかなか取り組みに踏み切れないかもしれません。しかし、ESG経営には、先に述べた課題の解決に貢献するなど、多くのメリットがあります。企業価値の向上、経営リスクの低減、ひいては企業の長期的な成長につながるからです。

また、物流・運輸業界では2024年に時間外労働の上限規制が導入されるため、長時間労働の是正を含めた働き方改革への取り組みが不可欠です。今後、環境負荷の低減や社員全員が働きやすい職場環境づくりに取り組むことで、物流・運送業がステークホルダーや優秀な人材、社会から選ばれる企業になっていくでしょう。

参照:厚生労働省「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務

物流・運輸業界は社会にとって重要な役割を担っており、ESG経営に取り組むことで、社会に貢献しながら持続的な企業成長を実現できるのです。

2.運輸部門の二酸化炭素排出量

2021年度の日本の二酸化炭素排出量(10億64,00万トン)のうち、運輸部門の排出量(1億8500万トン)は17.4%。運輸部門全体に占める自家用乗用車の割合は86.8%(日本全体の15.1%)、そのうち旅客自動車は47.0%(同日本全体の8.2%)、貨物車は39.8%(日本全体の6.9%)となっています。


参照:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量

運輸部門はCO2排出量の多い部門の一つです。物流企業は、環境に配慮した事業成長を実現するために、CO2排出量を削減する必要があります。その一つが、CO2排出量の少ない輸送手段への転換です。トラック輸送から船舶や鉄道輸送へのシフトは、CO2排出量の削減に大きく貢献します。

また、物流企業は、輸送効率の向上にも取り組む必要があります。輸送効率の向上は、CO2排出量の削減につながるだけでなく、コスト削減にもつながります。物流企業は、環境に配慮した事業成長を実現するために、CO2排出量の削減と輸送効率の向上に取り組む必要があるのです。

3.物流業界が取り組むべき対策

3-1.モーダルシフト

モーダルシフトとは、トラック輸送から鉄道や船舶による輸送に切り替えることです。トラック輸送は環境負荷が大きく、CO2排出量も多いため、モーダルシフトは環境に配慮した輸送手段への転換として注目されています。

同量の荷物を同距離輸送した場合、船舶に切り替えるとCO2排出量はトラック輸送の約5分の1に、鉄道に切り替えると約10分の1になるのです。また、運賃の面でも鉄道や海上輸送の方が安くなるケースもあります。


参照:国土交通省「運輸部門における二酸化炭素排出量

ただし、トラックに比べて輸送サイズが大きいため、輸送ロットを大きくする必要があります。また、トラックは基本的に全て陸路で輸送しますが、鉄道は「鉄道+陸路」、船舶の場合は「海上+陸路」で輸送するため、輸送ルートの切り替えが発生します。また、あらかじめ決められた時刻表に従って運行されるため、陸路のみで輸送されるトラックよりも納期が長くなるというデメリットがあるのです。

モーダルシフトは、環境に配慮した輸送手段への転換として注目されていますが、トラック輸送に比べていくつかの課題があります。これらの課題を克服するためには、発地・着地と連絡を取り合い、貨物の量や納期を調整する必要があります。

また、モーダルシフトを実現するためには、インフラ整備や運送会社の協力も必要です。インフラ整備では、鉄道や船舶の輸送能力を向上させる必要があります。運送会社では、トラック輸送から鉄道や船舶輸送への転換を促進する必要があります。

モーダルシフトは、環境に配慮した輸送手段への転換として重要です。物流業界全体で取り組むことで、環境負荷の削減と持続的な成長に貢献できます。

例えば、日本通運グループは、持続的成長と企業価値向上のためにESG経営に取り組んでおり、モーダルシフト・共同配送の推進を進めています。同時に、環境配慮車両への切り替えや施設照明のLED化を推進し、物流企業としてCO2排出削減に取り組んでいます。

参照:日本通運株式会社「日通グループのESG経営の取組み

3-2.労働力減少に対するオートメーション化

配送・倉庫業務のオートメーション(自動化)は、物流業界の課題を解決し、効率化と生産性の向上につながります。配送・倉庫業務は、物流業界の根幹を支える重要な役割を担っています。しかし、近年では、労働力不足や高齢化が深刻化し、業務の効率化が課題となっているのです。

オートメーション(自動化)は、これらの課題を解決する有効な手段です。オートメーションによって、人による手作業を機械やロボットによって代替することで、作業の効率化や精度向上が図られます。また、オートメーションによって、作業員の負担を軽減し、健康を守ることにもつながります。

さらに、オートメーションによって、データの収集・分析が可能になり、業務改善や新サービスの創出につなげることができます。このように、オートメーション(自動化)は、配送・倉庫業務の効率化と生産性の向上につながるだけでなく、物流業界の持続的な成長に貢献するのです。

4.まとめ

トラック輸送によるCO2排出量の削減とドライバー不足は、物流業界における深刻なESG課題です。物流事業者は、CO2排出量の少ない輸送手段へのシフトや輸送効率の向上が必要です。

そこで、モーダルシフトや配送・倉庫業務の自動化は有効な手段となります。物流業界は社会にとって重要な役割を担っていますが、ESG経営に取り組むことで、社会に貢献しながら持続的な企業成長を実現できるのです。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011