今回は、下落基調にある仮想通貨市場の反転に向けた注目点について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- 仮想通貨市場の動向
1-1.仮想通貨の「冬の時代」
1-2.これまでの数度にわたる価格暴落
1-3.暴落から再上昇の背景 - 投資家がチェックしている仮想通貨市場のポイント
2-1.リスクアセットに分類される仮想通貨
2-2.株価に大きく影響する政策金利
2-3.政策金利はいつから下がるのか? - まとめ
22年に入り、暗号資産(仮想通貨)市場全体が低迷する状況が続いていますが、今後一体どのように動いて行くのでしょうか。
仮想通貨市場に大きな影響を与えると言われている要因はいくつか存在しますが、実際にどのポイントを基準として価格動向を判断すれば良いのか分からないという方も多いでしょう。
ここでは現在投資家がチェックしている仮想通貨市場のポイントについて、現状を踏まえながら詳しく解説していきます。
①仮想通貨市場の動向
1-1.仮想通貨の「冬の時代」
仮想通貨市場では22年初めごろを起点として下落基調が顕著に続いており、21年11月9日に67,549ドル(約730万円)という過去最高値をつけたビットコインも、22年10月15日現在では19,207ドル(約280万円)と、2万ドルを割る状況が続いています。
また、ビットコインだけでなく、イーサリアム(ETH)やリップル(XRP)などをはじめとするあらゆる銘柄が大幅に下落する動きを見せており、各種メディアでは18年から19年ごろに訪れた「冬の時代」の再来とも言われています。
最近では、仮想通貨業界が注目していたイーサリアムの大型アップグレードである「マージ(The Merge)」が9月15日に実装を完了したことが話題となりましたが、実装後には価格が約9%も暴落するなど、投資家たちの利益確定の動きなどを受けて大幅に下落する結果となっています。
このほか、世界的なインフレや利上げ、そしてそれに伴う「リセッション(景気後退)」への懸念等を理由に、仮想通貨や株などの「リスク資産」から大規模な資金流出が発生。このことは仮想通貨と密接な関係にあるNFT市場にも大きな影響をもたらしました。
実際に、22年6月時点におけるNFTの販売額は、ピーク時と比較して約10分の1を下回る水準にまで落ち込むこととなり、総じてパフォーマンスの低下が顕著に表れていると言える状況となっています。
1-2.これまでの数度にわたる価格暴落
仮想通貨市場はこれまでにも数回にわたる価格の大暴落を経験しており、ひとつ前の暴落は18年に発生しました。
仮想通貨市場は17年末から18年初頭にかけて、バブルと言われるほどの過去最大規模の高騰を見せていましたが、その後18年1月中旬ごろからほとんどの仮想通貨銘柄が下落する格好となり、「バブルの終焉」が訪れたと言われました。
この原因としては、中国政府による仮想通貨禁止政策が挙げられます。
この当時、中国の投資家はビットコイン市場において大きな力を有していましたが、中国当局が規制を発表したことにより取引規模が縮小し、18年1月16日には、ビットコインの価格が約30%も下落する結果となりました。
また、18年11月には「ビットコインキャッシュ(BCH)」による「ハッシュ戦争(ハッシュウォー)」を原因として、ビットコインが一時40万円台まで下落するという事態が発生しました。
その後は新型コロナウイルスの蔓延に起因し、20年にも暴落が発生しました。
特に、新型コロナウイルスが騒がれ始めた2月下旬から3月にかけては、仮想通貨のみならず株などの多くの金融資産が下落し、ビットコイン価格に関しては、3月にたったの数日で約100万円から50万円台まで、約50%もの下落を経験しました。
1-3.暴落から再上昇の背景
前述の通り、仮想通貨市場はここ数年間で、大きく分けて2回の暴落していますが、この暴落から価格が再上昇した背景には何があるのでしょうか。
第1回目の暴落後に再上昇した背景としては、国際金融市場で強まる金融緩和姿勢および、中東情勢の不安や米金利低下などを原因として、ゴールドや仮想通貨の需要が大幅に高まったことが挙げられます。
また、第2回目の暴落後に再上昇した背景としては、特にアメリカにおいて多くの人々が新型コロナウイルスの給付金を利用して仮想通貨を購入したことや機関投資家の仮想通貨市場への参入がきっかけであると見られています。
当時、新型コロナウイルスの経済対策として、アメリカでは一定の年収を下回る人を対象として一人あたり1,200ドルの支給が行われました。その際、仮想通貨取引所CoinbaseのCEOであるBrian Armstrong氏はTwitterにおいて、1,200ドルぴったりの購入および預金が急激に増えていることを明かし、入金数や購入数の上昇率は400%近くに上りました。
②投資家がチェックしている仮想通貨市場のポイント
2-1.リスクアセットに分類される仮想通貨
今では仮想通貨は元本保証のない、リスクのある金融資産である「リスクアセット」に分類されます。
後に解説しますが、金融政策が引き締めの傾向にある場合は一般的に、リスクアセットから資金が流出しやすいと言われており、資金が流出しているアセットの価格は下落しやすくなります。
そのため、仮想通貨を株などのリスクアセットと同様の存在として捉え、金融政策に対する反応などに注意することが大切でしょう。
また、各通貨のプロジェクト進捗も関連する仮想通貨の価格に直接的な影響を及ぼすため、NFTなどをはじめとする関連プロジェクトの動向にも注意が必要です。
2-2.株価に大きく影響する政策金利
政策金利は株価に大きな影響を与えることで知られており、22年は特に、FRBの政策金利の上昇によって株価が下落するといったシーンが多く見られています。
そんな中、機関投資家の参入が増加したことなどを原因として、仮想通貨と株式市場の相関性がますます高まっており、政策金利が仮想通貨市場に与える影響も無視できない状況となっています。
また、株式市場は国債の金利影響を強く受けますが、22年9月28日には3回連続の0.75%の利上げを受け、「米長期金利(10年物国債利回り)」が10年以来の4.00%台という高水準まで上昇、米NY株式市場ではダウ平均株価が年初以来の安値を更新したほか、ビットコイン価格も前日と比べて7.5%安となる18,667ドルまで下落する格好となりました。
このことから、今後金融の引き締めにより政策金利がピークを迎えた後、市場が徐々に次の金融緩和を意識し始め、仮想通貨価格も株とともに上昇するはずだと見られており、そのタイミングに注目が集まっています。
2-3.政策金利はいつから下がるのか?
では、政策金利はいつから下がるのかを考えてみたいと思います。
22年10月3日、アメリカにおいて景気後退を感じさせる経済指標が次々に報告されたことを受け、長期金利がピーク値である4%から3.64%まで低下し、「米連邦準備制度理事会(FRB)」の金融引き締めが減速するのではという見方から、株価が反転上昇する事態が発生しました。しかしその一方で、米ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は同日の講演にて、金融引き締めを継続する姿勢を明らかにしています。
11月1日、2日に開催されたFOMCでは、4会合連続で0.75%の利上げが実施されましたが、その後発表された10月の消費者物価指数(CPI)が市場予想を下回る結果(前月比で0.4%、前年比で7.8%の上昇)となり、NY(ニューヨーク)株式市場はこれを好感する形で大きく買いが先行。
12月のFOMCでは0.5%の利上げを行うと想定されており、FOMC開催前には11月のCPIが発表。注目されたCPIの結果はコアCPI、そしてコアCPIともに予想を下回る結果となりました。利上げペースに注目が集まる中、FOMCを控えていることから、完全にハト派に転換するような期待はまだ市場には出てきていない格好となりました。2023年2月の利上げは0.25%の可能性がメインシナリオとなっており、総じて将来の利上げペース鈍化を期待するような動きとなっています。
なお、これまでの事例を参考にすると、最後に利上げが行われたタイミングから最初に利下げが行われたタイミングまでの期間は大体約8ヶ月半ほどとなっているため、12月に最後の利上げが実施されると仮定すると、利下げは23年の9月ごろになるのではと予想する声も聞かれているという状況です。
③まとめ
仮想通貨はリスクアセットとして、金融政策の影響を大きく受ける存在となっています。
そのため、現在実施されている金融引き締めによる利上げがいつ転換するかなどが、今後の仮想通貨市場におけるポイントであると言えます。
前述の通り、利下げは23年の9月ごろに実施されると予想されていますが、実際にはさまざまな要因が絡んでくるため、引き続きその動向に注目していきたいと思います。
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中島 翔
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