今回は、イーサリアムクラシックについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- ETCとは?
1-1.ETCの概要
1-2.イーサリアムとの違い
1-3.PoWを維持 - ETCトークン
2-1.トークンの概要
2-2.ユースケース - 購入するとしたらどの部分を見るべきか
3-1.本質的に価値を判断するポイントはどこか
3-2.技術面でのメリット、デメリット
3-3.将来性
暗号資産(仮想通貨)取引所Coinbase Japanにて22年9月からイーサリアムクラシック(ETC)の取扱いが開始されました。そこで今回は、イーサリアムクラシックについてまとめていきたいと思います。
①ETCとは?
1-1.ETCの概要
イーサリアムクラシックは2016年の『The DAO事件』がきっかけで誕生しました。The DAO事件とは、当時ICOといわれる資金調達方法が大流行し、そこの脆弱性を狙ったハッカーが52億円分のイーサリアムをハッキングした事件です。
従来のイーサリアムはイーサリアムクラシックとして残り、ハードフォークで分岐されたチェーンが現在のイーサリアムとされました。
ハードフォークとは、簡単に言うと仮想通貨の基盤となるブロックチェーンのアップデートのことです。ネットワークを構築する各ノードは最新版ソフトウェアへアップグレードする必要がありますが、これに従わないノードが一定数存在する場合、ネットワークデータが2つに分岐することとなります。その結果、新旧ネットワーク上に別々のトークンが存在することになります。
イーサリアムが分岐して誕生したイーサリアムクラシックは、イーサリアムの特徴を継承しています。
イーサリアム仮想マシン(EVM)を運用するブロックチェーンとしてスマートコントラクトに対応しており、分散型アプリケーションを構築できます。
1-2.イーサリアムとの違い
イーサリアムと比べたイーサリアムクラシックの違いは、PoW(プルーフオブワーク)に専念していること、固定排出曲線を持つ上限供給量の実装を決定したこと(ECIP-1017)、コミュニティが小規模であることなどが挙げられます。
固定排出曲線とは、5M20とも呼ばれる排出スケジュールに基づいて、5,000,000ブロックごと(2.5年)にブロック報酬を20%削減します。このブロック報酬還元イベントは「The Fifthening」と呼ばれ、供給量にデフレ圧力がかかります。
総供給量が決まっているということは、インフレが起こりにくいトークンということです。総供給量を決めることでトークンに希少価値がつき、需要が増すことから価格が高騰しやすくなる傾向があります。
またイーサリアムクラシックの開発を支えるETC Cooperativeの役員には、大手投資会社デジタル・カレンシー・グループ(DCG)のバリー・シルバート CEOがいます。ETC Cooperativeはイーサリアムクラシックのロードマップを公開しているので、興味のある方はチェックしてみましょう。
1-3.PoWを維持
イーサリアムは22年9月にPoWからPoS(プルーフオブステーク)への移行のアップデートを行いましたが、イーサリアムと異なり、イーサリアムクラシックは、PoSアルゴリズムに変換する予定はありません。イーサリアムクラシックは最大限の分散化と検閲耐性を確保するために、取引を検証する合意メカニズムとしてPoWのままであることを選択しました。
イーサリアムクラシックは2018年、イーサリアムに内蔵された難易度爆弾(PoSモデルへのネットワーク移行を奨励することを意図したコード)を解除し、PoWを維持する移行を正式に固めています。
②ETCトークン
2-1.トークンの概要
通貨(トークン名) | ETC |
コンセンサスアルゴリズム | PoW |
ティッカーシンボル | ETC |
時価総額 | ¥343,109,756,276 (2023年1月4日現在) |
最大供給量 | 210,700,000 ETC |
現在時価総額ランキング23位(2023年1月4日現在)、価格は約2,471円前後を推移しています。
また、イーサリアムクラシックが最高値をつけた時は、アメリカ大手投資アプリのロビンフッドが大流行していた影響もあり、当時そこに上場していたDOGEやBCHと一緒にイーサリアムクラシックの価格が上昇しました。
2-2.ユースケース
イーサリアムクラシックのユースケースは主に2つあります。
1つ目はサウンドマネー(Sound Money:健全なお金)です。
イーサリアムクラシックは新しいETCトークンが生成される排出曲線が固定されています。言い換えれば、ビットコイン(BTC)のように新しいETCの採掘量は、最大量の210,700,000ETCが採掘されるまで時間とともに減少していきます。
これはインフレ率が予測可能であることを意味し、ETC の場合、時間の経過とともに継続的に減少します。長期にわたって価値を保持する設計となっています。
2つ目は、分散型ネットワークのユーティリティトークンです。
ネットワーク上のガス料金の支払いや、個々のユーザー間の取引に使用されます。マイニングの報酬もETCで支払われます。イーサリアムクラシック上で構築された分散型アプリケーションは独自トークンを備えていますが、ETCをガス代の支払いに使用します。
イーサリアムクラシック上で構築された分散型アプリケーションの例として、ファイルなどを認証、証明するプラットフォームStamperyがあります。Stamperyは、ETCを活用することで企業文書や契約などの変更、追跡および記録が可能になり、企業調査をはるかにスムーズに実行できるようにします。
③購入するとしたらどの部分を見るべきか
3-1. 本質的に価値を判断するポイントはどこか
イーサリアムクラシックは、良くも悪くもイーサリアムの影響を受けやすいトークンになります。言い換えるとイーサリアムの価値が高くなれば、比例してイーサリアムクラシックも注目され価値も高くなる傾向があります。
しかし、イーサリアムクラシック上で独自のDappsやユースケースが増えてくるとイーサリアムクラシックが独立して評価される可能性も高くなるでしょう。
なぜイーサリアムではなく、イーサリアムクラシック上で構築するのか?その答えは、ネットワーク基盤としてのポリシー上の違いをどう評価するかによります。イーサリアムはロードマップに基づいて進化を続けていますが、イーサリアムクラシックの「コードこそが法」(code is law)という理念を掲げた、不変性を重視しています。なお、ETHが広く使用され取引されている一方で、イーサリアムクラシックはETCの普及と流動性が著しく低いことに留意する必要があります。
3-2. 技術面でのメリット、デメリット
メリットは、イーサリアムの技術を利用できる点です。イーサリアムクラシックはイーサリアムの革新的技術を活用し、分散型アプリケーションを構築することができます。また、イーサリアムクラシックは非中央集権的運営を行っています。これにより一部の人間が不正を試みようとしてもすぐに見つけることができ、何かしらの罰則が与えられるため、セキュリティ面でも強化されているというメリットがあります。
デメリットは、イーサリアムに比べ開発力が劣る点です。基本的にイーサリアムクラシックはイーサリアムで開発された技術やサービスを後を追って取り入れていく形になります。まだPoWを採用しているイーサリアムクラシックは、PoSを採用しているイーサリアムやその他のブロックチェーンに比べてエネルギー消費が大きく、速度も遅いというデメリットがあります。
3-3.将来性
イーサリアムクラシックの将来性を見通すには、イーサリアムの発展が鍵になってくるでしょう。今後イーサリアムがどのようなサービス、技術開発を行うのか、注目していきたいところです。
また、イーサリアムのように今後多くの分散型アプリケーションを構築できるかも大切になってくるでしょう。これからトレンドになると言われているメタバース、NFT、GameFiなどのトレンドに乗り、プロジェクトを開発出来れば価格上昇も見込めるのではないでしょうか。
最後に、まだイーサリアムクラシックの分散型アプリケーションといえばこれというものが誕生していないため、今後新しく革新的な分散型アプリケーションがイーサリアムクラシック上で出てくることに期待したいところです。
中島 翔
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