【サステナ不動産銘柄】建設DXのパイオニア、米建材大手ビルダーズ・ファーストソースの業績や今後は?

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米ビルダーズ・ファーストソース(ティッカーシンボル:BLDR、以下BFS)は、米国の住宅建設資材分野の業界大手です。設備の自動化やデジタルツールの導入などデジタルトランスフォーメーション(DX)のパイオニアとしても知られています。

過去5年間では、代表的な株価指数を大きく上回る株価パフォーマンスを上げました。

そこで今回は、BFSの会社概要や製品の特徴をおさらいした上で、同社のサステナブルな取り組みや業績・株価動向を紹介します。

目次

  1. 米国の建材大手
  2. BFSのサステナブルな取り組みや製品
    2-1 BFSの価値観「S.P.I.C.E」
    2-2 DXの取り組み
  3. BFSの業績・株価動向
    3-1 BFSの業績
    3-2 BFSの業績株価動向
  4. まとめ

1 米国の建材大手

BFSは1998年に創業し、住宅メーカーや工務店などに住宅建設資材を提供する企業です。全米42州で580ヵ所の製造・物流拠点を有し、米国大都市トップ50都市のうち47都市でサービスを展開する業界大手になります。

本店所在地 米国テキサス州ダラス
創業年 1988年
売上高 227億ドル
従業員数 2.9万人超
製造・物流拠点数 570所
展開州 42州
炭素ゼロの肥料 フロンガスを含まない冷媒

※参照:BFS「CORPORATE SOCIAL RESPONSIBILITY REPORT

取扱製品は寸法材、合板、壁パネル、窓枠、ドア、断熱材、サイディング、コンクリートなど多岐にわたります。DRホートンやレナー、パルトグループといったホームビルダーが、会社全体の売上高の約2割を占める上位10社の顧客です。

参考:BFS「2022 Annual Report

住宅建材市場は地域の特性によって細分化されており、BFSはM&A(企業の合併・買収)で業容を拡大させています。また、工場で製造した製品(マニュファクチャード製品)など付加価値品の割合が、売上高全体の半分以上を占めるまでに拡大しており、利益率の向上につながっています。

BFSは、M&Aや顧客ニーズにマッチした付加価値品の提供などにより事業を拡大に成功し、フォーチュン誌の「100 Fastest-Growing Companies(急成長企業100社)」ランキングの2023年版でNo.1に選出されました(*)。

参考:yahoo finance「These 3 companies topped Fortune’s Fastest-Growing Companies list

最先端の製造オペレーションや3次元設計ソリューションなど、DXを推進していることも特徴として挙げられます。住宅建設業界のデジタル変革において先駆的な役割を果たし続け、デジタル・プラットフォームの成長に多大な投資を行ってきました。

例えば、BSFのプレカット製品「READY-RRAME」は、フレーミング(建物の構造部分)工事をより良く、より早く、より安全に、より環境に優しいものにします。

コンピューター設計によりミスを1/16に減らすと共に、予め木材をカットしているため、同じスタッフで20%早く建設でき、必要な労働力が少なくて済みます。また、現場での切断作業が減るため、怪我のリスクを低減するほか、裁断回数が少ないため、ダンプカー内の廃棄物が少なくなり、廃棄料金も削減されます。

2023年12月には、S&P500の組入銘柄として採用されました。同指数は世界中の機関投資家がベンチマーク(運用の指標とする基準)としており、急成長を遂げるBFSへの更なる資金流入が期待できるでしょう。

参考:PR Newswire「Uber Technologies, Jabil and Builders FirstSource Set to Join S&P 500; Others to Join S&P MidCap 400 and S&P SmallCap 600

2 BFSのサステナブルな取り組みや製品

ここからはBFSのサステナブルな取り組みや製品を見ていきましょう。

2-1 BFSの価値観「S.P.I.C.E」

まず、BFSは「S.P.I.C.E」と呼ぶ価値観を提唱しています。これは、「SAFETY」、「PEOPLE」、「INTEGRITY」、「CUSTOMERS」、「EXCELLENCE」の頭文字をとったものです。安全を最優先し、ピープルファースト(人が最も大事)の理念を掲げ、信頼を得るために誠実であり、卓越したサービスを提供し、現状に甘んじず挑戦することを目指しています。

同社は業界をリードする存在として、財務的業績のみならず、優れた企業文化を形成して魅力ある会社作りを行っていると言えるでしょう。

そのような価値観の下、2022年には以下のようなESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みを実践しました。

  • 130万本の樹木を保存
  • 90%の木材を森林認証取得のベンダーから調達
  • 従業員の99%がDEI(多様性、公平性、包括性)の研修を受講
  • TRIR(*)は前年比22%減
  • 拠点の50%超で無事故

(*)TRIR(記録災害度数率)…米国労働安全衛生局(OSHA)の労働災害の発生状況を測る指標で、20万時間当たりの記録災害の頻度を表します。

参考:BFS「2023 CORPORATE SOCIAL RESPONSIBILITY REPORT

2-2 DXの取り組み

またBFSはDXの取り組みを推進しています。建設業界はDX化が遅れている分野と見られていますが、同社はS.P.I.C.Eの価値観の下、業界のリーダーとして現状を打ち破る数多くのデジタルツールを活用して業務効率化や顧客体験の向上を図っています。

例えば、2021年に買収したWTSパラダイムの「パラダイム・エスティメイト」は、建築画面をアップロードすると自動で必要な材料費を計算するソフトウェアです。「パラダイム・オムニ」は、建物で使用する素材やデザインを変更した際の画像を瞬時に表示するソフトウェアになります。

「myBLDR」プラットフォームは、プロジェクトドキュメントの保存、3D住宅プレビュー、オンライン資材見積もりと注文、納品状況、ジョブスケジューリングなど、建材関連の手続きのオールインワン・プラットフォームです。

その他にも、BFSのBIM(*)の専門家が高度な3Dモデリングを導入した「ビルド・オプティマイズ」を活用することで、より正確な見積の作成、材料費の管理、変更注文の削減、費用のかかる遅延の回避に繋げています。購入者の好みに合わせて、家電製品、フローリング、その他の仕上げなどを視覚化し、主要都市では最大28モデルのビルド・オプティマイズサービスを提供しています。

(*)BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)… コンピューター上に現実と同じ建物の立体モデル(BIMモデル)を再現し、よりよい建物づくりに活用していく仕組みです。

フロントエンドの販売、建築計画、資材調達といった建設プロセス全体をデジタル化することで、建築スピードや効率性を高め、現場の負荷を軽減し、大幅なコスト削減を期待できるでしょう。

BFSは、住宅建設業界のデジタル変革が2026年までに同社へ10億ドルのビジネスチャンスをもたらすと見込んでいます。

参考:BFS「Digital Tools」「Q3 2023 Earnings Presentation

3 BFSの業績、株価動向

ここからはBFSの業績や株価動向を見ていきましょう。

3-1 BFSの業績

18年から22年までの5年間の業績は、売上高が3倍、希薄化後一株当たり利益(EPS)が9.5倍と大幅に拡大しました。

  • 売上高は3倍(77億ドルから227億ドルへ)
  • 希薄化後EPSは9.5倍(1.76ドルから16.82ドルへ)

収益性(5年平均)は一定の水準を確保しています。木材などコモディティ価格の変動の影響を軽減した付加価値品や断熱材などの特殊製品の販売強化が、収益の安定性を高めていると言えるでしょう。

  • 営業利益率は10%
  • 株主資本利益率(ROE)は38%
  • 投下資本利益率(ROIC)は20%

参考:Morningstar「BLDR

株主還元策として配当を出していませんが、継続的に自社株買いを実施しています。

また、2022年から2025年までに、70億から100億ドルの資金をオーガニックグロース(為替やM&Aの影響を除いた成長)、M&A、自社株買いに充てる方針を示しています。2021年末以来、既に約57億ドル(うち42億ドル)を投じており、引き続き自社株買いを通じた株主還元を期待できそうです。

参考:BFS「Q3 2023 Earnings Presentation

3-2 BFSの株価動向

株価に目を転じると、2017年末から2022年末までの5年間の累積トータルリターンは、ラッセル2000およびS&P600建築製品指数を大幅に上回りました。

参考:BFS「2022 Annual Report

今後の株価推移についてはアナリストの目標株価を確認しましょう。16名のアナリストによるコンセンサス・レーティングは「Strong Buy(強い買い推奨)」です(2023年12月18日から遡って過去3ヵ月間の評価)。

目標株価の平均値(12ヵ月後)は168.8ドルと、12月15日終値と比較して約4%の上値余地を残します。アナリスト予想の最高値は200ドル、最安値は137ドルです。

株価

価格
目標株価の平均値(12ヶ月後) 168.8ドル
2023年12月15日終値 162.51ドル

アナリスト予想

価格
最高値 200ドル
最安値 137ドル

参照:Nasdaq 「BLDR Analyst Research」、Yahoo Finace 「BLDR

4 まとめ

BFSは、過去5年間において代表的な株価指数を大幅に上回る株価パフォーマンスをあげました。業界をリードする形でDXの取り組みも推進しています。

米国の建材分野のリーディングカンパニーである同社が経済的、環境的に大きなポジティブインパクトをもたらすことに今後も期待したいです。

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フォルトゥナ

日系・外資系証券会社に15年ほど勤務。リサーチ部門で国内外の投資家様向けに株式レポートを執筆。株式の専門家としてテレビ出演歴あり。現在はフリーランスとして独立し、金融経済やESG・サステナビリティ分野などの記事執筆、翻訳、および資産運用コンサルに従事。企業型DC導入およびiDeco加入者向けプレゼンテーション経験もあり。
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