2022年上半期の仮想通貨市場と今後の展望【仮想通貨取引所の元トレーダーが解説】

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今回は、2022年上半期の暗号資産(仮想通貨)市場について、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。

目次

  1. 2022年上半期の仮想通貨市場
  2. 今後のビットコインの動向の参考指標
    2-1.米国利上げ動向
    2-2.年後半の中間選挙
    2-3.アノマリー
    2-4.MVRV ratio
    2-5.Fear and Greed Index
    2-6.stock to flow model
  3. まとめ

2022年も折り返し地点を過ぎ、仮想通貨市場は冬の時代の様相を呈しています。世界的なインフレが進行する中、2~3月にロシアがウクライナに侵攻したことによって地政学リスクが高まり、サプライチェーンの混乱がインフレに拍車をかけた形となっています。コロナ以降に続いていた金融緩和相場から一転、世界各国が金融引き締めに転じています。

ここでは半年間のビットコインの値動きを株式市場や債券市場と比較しながら振り返りつつ、オンチェーンデータ等を参考にしながら長期的な展望を考えていきたいと思います。

①2022年上半期の仮想通貨市場

22年上半期の仮想通貨市場は冬の時代の到来を予期させる停滞感を見せており、ビットコイン価格は最高値から4分の1程度まで下落しました。

Yield
上記は、2022年からのビットコイン(青)、S&P500指数(オレンジ)、金価格(水色)、米国債10年金利(黄色)のチャートです。

米国債10年金利は上下反転しているため、チャートが下落すれば下落するほど金利は上昇しているということになります。ご覧の通り、アメリカの利上げスピードが早まっていく過程で、米国債金利の上昇が続いています。金利上昇の影響で株式市場は大幅下落しており、景気後退に陥る可能性がある水準にまで来ています。

リスク回避資産でもあるゴールドも一緒に下落してきており、全てのリスクアセットが売られる中、ビットコインも同様に下落しています。ビットコインは21年11月に一時68,000ドル(750万円)付近まで上昇していましたが、3月以降の下落トレンドが止まらず、一時18,000ドル(255万円)水準にまで下落しており、2018年の高値となっていた22,000ドル(当時220万円)もあっさりと割り込む動きとなりました。

現在でも株式市場との相関係数が高いことから、株式市場が下落するとビットコインはさらに売られる可能性があるとも言えるでしょう。では今後のビットコインの動きを占う上で、世界景気の動向と、ビットコインのオンチェーンの両面から初心者向けにどのような点をチェックすればいいのか解説したいと思います。

②今後のビットコインの動向の参考指標

2-1.米国利上げ動向

最初に大事になってくるのは米国の利上げ見通しの変化と、株式市場の動向と言えるでしょう。

現在米国の利上げ見通しは年内にあと4回ほどFOMCが行われる中で、0.5%の利上げが2回か3回実施される可能性がある数字で推移しています。

当然現段階での数字であるため、ここから更にインフレが収まらず加速したり高止まりする場合はFRBとしても景気悪化を避ける前に、インフレ鈍化を最優先事項として取り組む姿勢を取っていることから株安は足元気にしていないと考えられるでしょう。物価の安定を優先した場合、株安は致し方ないという判断になるためです。

しかし、上記は言い換えると「ここから更に利上げ見通しが強まらない場合は金利高にはなりにくく、株安にも進みにくい」ということが言えるのではないかと思います。既にマーケットは利上げをある程度織り込んでいる状態であるということは頭に入れておくべきでしょう。

2-2.年後半の中間選挙

今年後半の大きなアメリカのイベントでは11月に中間選挙が行われる予定となっています。

中間選挙の時には票を取る必要があるため、株安が進むような政策は全面的に打ち出してこないことや、ご祝儀相場のように中間選挙後に株価は上昇する傾向があるため、この点は相関係数の高いビットコインにとってもいい影響があると言えそうです。

2-3.アノマリー

最後はアメリカの情勢というよりは毎年の規則性から見た内容です。

株価は9月あたりから12月に向かって株価は上昇することが多く、この動きは頭に入れておくべきでしょう。特に先ほどの中間選挙がある年と重なっていることから、過去の動きから見ると大きくは下落しない可能性が高いと考えられます。

2-4.MVRV ratio

次にビットコインのオンチェーンデータの一つでもあるMVRV ratioについて見ていきたいと思います。

Quant
こちらがMVRV ratioのチャートで数値は「時価総額を実現時価総額で割ったもの」になります。見方はオレンジの水準まで到達している時は買われ過ぎと判断して一旦価格は落ち着きやすく、緑の水準まで到達した場合は売られ過ぎと判断して、ゆっくりと買っていくことが推奨されます。

チャートをご覧いただくとわかる通り、過去のチャートとMVRV ratioを見ると、緑の水準にまで到達してからは価格がそこまで下落しておらず、ほぼ底値付近で推移しているということがわかるでしょう。一方で緑の水準まで到達したからすぐに反転して上昇するわけではなく一定期間の間はその水準で推移することもあります。そのため、あくまで長期的な投資を行う場合にこの指標をチェックするようにしましょう。

現在の水準は買い場と考えることができるため、ここからゆっくりとポジションを増加させていくというスタンスが戦略の一つとして考えることができます。

2-5.Fear and Greed Index

次に紹介するのはFear and Greed Indexです。

fear and greed
これは恐怖と欲望を表している指数となっており、この数値が低下するとマーケットはまだ下落するのではないかという心理になってきているということになります。

現在の数値は11付近で推移しており、過去の推移から見ると、一番低い水準あたりで推移していることがわかるでしょう。

市場というのは面白いもので、投資家が総悲観になった時に反転上昇し始めるということが往々にしてあるため、恐怖指数が高いから価格下落するというわけではなく、トレンドは下落トレンドだが、行き過ぎるとどこかで反転するということを念頭に置いてトレードを行ったほうがいいでしょう。

2-6.stock to flow model

最後に紹介するのはstock to flow modelです。

stock to flow

このモデルは通常ゴールドのようなものの価格を予測するときに用いられるモデルです。このモデルは希少性と流動性の低さから、価値の貯蔵手段として利用されるということを考えて作られているモデルであり、供給量が制限されているビットコインにも当てはまるのではないかと考えられて投資家はチェックしています。

現在ではチャートのようにモデルの理論値からは乖離し始めており、この水準に戻ってくるということを考えると現在の価格水準は割安と言えるでしょう。しかしこのモデルはあくまで需要があるということを前提に作られているため、そもそもビットコイン自体の需要が激減した場合はモデルは崩壊するという可能性はあるとも考えられます。

そのためあくまで参考程度の指標として見ておくといいでしょう。

③まとめ

今回はビットコインの年後半の動向を考えるための参考指標やイベントを解説しました。

上記の材料をまとめると年後半は株式市場は持ち直しやすいことや、ビットコインのオンチェーンのデータから見ても買い場とも言えるため、長期的に見たら今の水準でゆっくりポジションを積み上げていくという戦略は有効なのではないかと考えています。

今回紹介したのは初心者でも視覚的にわかりやすいようなデータを持ってきたり、わかりやすいイベントを紹介しており、まだまだオンチェーンのデータは見るところがたくさんあります。気になる方は是非調べて自分自身でも動向を考えてみるといいでしょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12